……何分寝てたっけ?
考え込むことが多くなると満足に眠ることすらできねぇ。
「起きたか、寝てる間に生徒会長から呼び出しが入ってる、流石に行きなよ」
「……わかった」
億劫だが行くしかない、授業をさぼったのとは別件……十中八九皐月賞だろう。
「戻ったらトレーニングをするから頼んだ」
「わかったよ、頼むから大事にし過ぎないようにね、もう遅いけど」
……
正面に生徒会長、横にクラスのやつ。
こいつがなんか進言したかな?
「呼び出された理由ぐらいはわかっているね?」
「いーやサッパリですよ生徒会長どの、俺になにか問題でもございましたか?」
「その取って付けたような敬語はやめてもらおう……皐月賞の件だ、マスコミだけじゃない、トレセン学園の名にも関わる、今後は慎んでもらいたい、さらにいえば出走者からの文句も来ている、君個人に向けてわざわざ生徒会から言うようにとな」
……生徒会長は世代でいえば三世代前のウマ娘達をしっている。
引退してはいるが目をみればわかる……未だ勝利を欲する目。
だからそこを刺激する。
「生徒会長は……今のレースをどう思ってます?」
「……どう、とは?」
「実につまらないと思うのですよ」
生徒会長がギラリとこちらを睨む……ずいぶんと攻撃的で素晴らしい目だ。
どうしてあなたが現役じゃないのか。
「またあんたはそうやってレースを「続けてみろ」生徒会長!?」
「会長は三世代前をしっていますね?とはいっても直接の機会は少ないでしょうが……はっきり言いましょう、あの頃のような熱が今のレースに感じられますか?」
「……あの頃のレースは、凄まじかったの一言に尽きるよ、今でも鮮明に思いだせるレースは、いくつもある」
「そしてあなたはその世代と手合わせすらしたことがあったでしょう、それを思い出してください」
沈黙が流れる。
この独特な空気は嫌いじゃない、やはり本物を知っていると違う、このピリついた空気。
「ふむ、この席についていたシンボリルドルフ会長もそうだったな……問に答えよう、ぬるい、この一言に尽きると思うのは事実だ」
「では俺がやりたいこともわかるでしょう」
「……馬鹿のやることはわからん、これで場を煽ることで周りを焚きつけるつもりならやり方はいくらでもあったろう」
「マスコミを巻き込んで広く示さねば何も変わらないでしょうに」
随分とおしゃべりをしてくれる。
意外と俺の頭も見透かされてそうだ。
「だがあれは許容できん、今後あのようなことはするな」
ごもっともだ、ごもっともだが……。
「お断りします」
「……レース資格を剥奪されてもか」
「できませんよ、いくら正義を振りかざしても生き物はより強いものに憧れる、俺を追い出して、客が満足できるようなレースがはたしてできるのでしょうかね」
「だがあのようなやり方で生むのは敵だけだ、トレセン学園だけでは守り切れん、それどころか敵にすらなる」
「引退した方々でも引っ張ってくるおつもりですか?世の中は民意です、いくら理由をつけてもレースから熱い勝負がなくなるなど、考えられない人間も多く存在する」
「だが「だからこそオグリキャップのような例外が生まれるのですよ」」
「どれだけ頭で否定しても、みたいのでしょう?熱い、熱い戦いが」
再び沈黙が流れる。
ふぅ、というため息が聞こえた。
「……わかった」
「生徒会長!こいつをそのままにするんですか!」
「意志の固さなら恐らく彼女は曲がらないだろう、G1だから話題になったのであって、皐月賞以前のレースでもやっているんだからな……ブラックアウト、自重はしたまえ、欲求に駆られて理性を失えばそれこそ熱いレースなどできやしない」
「ええ、気をつけますよ生徒会長どの」
出ようとしたところであぁそうだと付け加えるように呼び止められる。
「一つ伝えておこう」
「……まだなにか?」
「君が熱いレースをしたいなら朗報がある、地方からかなり強い子が編入してくるかもしれないそうだ、それこそ君が名をだしたオグリキャップの再来かもしれないな」
「へぇ……楽しみにしておきますよ」
……
「生徒会長、ブラックアウトをあのままにしておくのは学園の品位を問われてしまうのでは」
「……そうだろうな、だが私もみたくなってしまった、こちらの出方を伺うように焚きつける言葉ばかりだったが、あの目は確かに勝負を欲する目だ、何度も見てきたな」
引退した身ではあるが……少し戻りたくなってしまったじゃないか。
君がこれからどうしてくれるのか気になってきたよ。