「よぉ……ずいぶん暗いな?その感じだととりあえず足のことは聞いてるっぽいな」
いつも通りの口調でヘラヘラとしている。
……左足に鈍重そうなギプスをつけて。
「……勝ち逃げですか」
「は?」
「私まだ一回しか勝ってません」
「私はもっとね~」
こいつら……怪我人にもっと優しくしてもいいんじゃねぇのか。
「それでどうするの……これから」
「そのことなんだが、俺は走るのをやめようかと思ってる」
「じゃあ私もやめます」
……え?
いやいやいや、は?
「お前は走れよ!怪我もないし!なんなら今が一番強い時期だろ!」
「嫌です!ブラックアウトさんが走らないなら走りません!」
「なかなか根性あるわね、じゃあ私も走らないわ」
なんなんだこいつら!?
クソ!これじゃあ俺の目的だっておじゃんじゃねぇか!
「……私はブラックアウトさんのせいで中央に来ました、今ここで走っている理由それです、だからブラックアウトさんが理由です……ブラックアウトさんが走る理由がないなら、私が理由になります、私を走らせる為に走ってください」
……呪いだ。
俺の足は一度失敗して、砕けた足だ。
次はない。
なのにこんなにも……こんなにも走りたくなってくる。
「きっと体のためにここで終わる方がいいと思います……でも私はあなたに借りを返しきれてないのでこんなところで終わらないでください」
「あんたはこんなところでくたばるようなタイプじゃないでしょ……意地でも直してまた戦いなさい」
「……はは、無茶苦茶言いやがる」
本当に……どうしてだろうな。
終わりたい、終わろうなんて思ってたのに。
まだ終われなくなっちまった。
「……それだけです」
「じゃあ私たちは帰るから、頑張んなさいよ」
二人が病室からでて、トレーナーと俺だけになる。
「トレーナー、頼みがある」
「……聞くよ」
「どうしても戻らなきゃいけなくなった……手伝ってくれ」
「任せてくれ」
本当に頼もしい……仲間だ。
……
「会長……」
「あぁ、わかっているよ……ブラックアウト関連のマスコミのことだろう?」
「はい、好き勝手に言っているようで、その……過激な文面もいくつか見られました」
予想はしていたことだが……こんなやり方か。
「できる限りの対策はしよう、理事長に協力を仰ぐ、頼めるかい?」
「お任せください、私ははっきり言ってブラックアウトのことが嫌いですが、実力は確かです……このようなやり方で選手生命を絶つなどありえません」
「あぁ、少しだけ頭にきているよ、思ったよりも彼女達に肩入れしてしまっているのかもしれない、それが嫌だとは一切思わないがね……さぁ私たちにできることをやっていこう」
ひとまず訂正をさせる必要がある。
……おそらくブラックアウトは走ることをやめたりなどしないだろう、選手生命にかかわるような怪我をしていたとしても。
ましてや逃がしてくれないライバルもいるだろうしね……。
「……ですがこれ以上は踏み込むべきではないとも考えます、引退をしているとはいえ、ここまで攻撃的なことを考えると会長にも被害が及ぶかもしれません」
「私たち引退した者ができることは復帰してきた時に気持ちよく走れるような環境を作っておくことだからね、そのためにひと肌脱ぐのは大したことでもないさ」
またその走りを見せてくれよ?ブラックアウト。
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