骨折が治ったとしてまともに動けるようになるまでのリハビリ、そこから満足に走れるかもわからない……。
これでまた走ろうだって?
大馬鹿野郎だな、だがその方が面白い。
とにかく骨折を直さなきゃスタートラインにすら立てない……ってのはわかるが。
「暇だ」
「……今は体の回復に専念してね?これ以上悪化したら目も当てられないどころの騒ぎじゃないから」
「トレーニング終わりか?」
「ルインローズが一人でもできるってさ……成長速度が驚きって感じだよ」
そうか……怪我を直して復帰したとして、俺が追いつける保証はあんのかな。
元からあってないような保証か。
超える壁は高い方がいい、その方が超えれた時に楽しいってことにしておこう。
「……もし、もし俺がこのまま走るのをやめたい、って言ったらトレーナーはどうする?」
「君がどっちの答えを求めてるかわからないけど、俺自身はまだ走っててほしい、だが悩んで決めたことならどんな考えも尊重する……ありきたりな答えで申し訳ない」
「いや、少し楽になった、逃げ道を作るのは情けないとは思うけどな……ないと少し、押しつぶされそうだ」
「……飲み物を買ってくるよ、欲しいものがあったら連絡入れてね」
らしくない、な。
こうなるかもしれない可能性なんていくらでもあったし、こうなっても諦めることなんてしないと思っていたけど。
実際に起きて、こういう立場になると全く変わるな。
「動けないだけなのに思ったより辛いものだな」
……
「あいつ今頃なにしてるのかしらね」
「さぁ……ところでルインローズさんはなんでここに?」
「トレーニングしようと思ったのだけれど……ちょうどいい併走相手がいたものだから」
「……トレーナーに確認取ってきますね」
ルインローズさん……やっぱりブラックアウトさんのことが気になるんだ、人のこと言えないんだけどね。
「トレーナー、ルインローズさんが来てるんですが」
「構わねぇよ、併走だろ?……お互い話したいこともありそうだしな」
「ありがとうございます」
「……俺は少し席を外す、怪我はするなよ」
広いコース、二人だけになった。
「併走やりましょうか」
「お願いします」
併走にしては少しだけだけど速い。
……ちょうどいいペースに感じる。
「あの……ブラックアウトさんにああいうこといいましたけど、あれでもよかったんでしょうか」
「気にするだけ無駄だと思うわ、あいつが走るなら走る、走らないなら走らない、それだけよ」
「でも、やっぱり重荷になってたり……」
「してるでしょうね、なんならあなたが言ったのはある意味呪いよ?」
え?
そ、そんなに重いこと……?
「そこまでずっと思うようなこと言いましたっけ……」
「無自覚ならなかなか天然の煽りね、あいつ、あなたや私に対して少なからず嫉妬してたと思うわよ」
「それってどういう……」
「かたや地方からでまだ成長の余地すらあるとんでもないやつ、かたや今まで放置してたのに急激に力を伸ばしたやつ、強いやつを呼び寄せることが根本の目的だって言ってはいたけど、自分が今までいた場所が急激になくなっても何も感じないほどあいつは強くないと思うわ」
……そんな相手がやめないでって言ってたら、それは確かに呪いになる。
少しずつ走る速度が落ちていく。
後悔が背中から這い上がってくる感じがする。
「私謝った方が」
「絶対やめなさい、それはあいつのプライドに傷をつけるだけよ」
「……じゃあどうしたらいいんでしょうか」
「わかり切ってるじゃない、そんなこと……私とあなたで一着、二着を取って勝ち続けることよ」
勝ち続ける……?
それがどうしてブラックアウトさんの為になるのかな。
「自分が必死にリハビリ終わらせて改めて走ってみて、私たちが今のままなら失望するってことよ、私たちがあいつにとって壁になるぐらいじゃないと」
「……きっとブラックアウトさんなら追いついて来そうですね」
「えぇ、私が……私たちが知ってるあいつは弱音を吐いても逃げないからね、さぁ止まってないで走りましょうか」
「はい!」