「中距離で被るかも、ねぇ……まぁいいんじゃねぇのか?はっきり言っちまえばお前とルインローズは飛びぬけてる側だ、中距離じゃ分が悪いが一着二着を競い合うのお前ら二人だろうな」
珍しく朝からトレーナー室に来たからなんだと思ったら……そんなに気にすることでもないだろうに。
お、ブラックアウトについての記事か。
あの怪我は遠目で見ても洒落になってなかったが、戻ってこれるかどうか。
仮に戻ってきたとして今までのように走れるかどうか……。
「ほらくよくよすんな、見てみろ」
「やっぱり戻ってきてくれるんだ……」
「……期待してるところに悪いが、あいつが今までのように走れると思うなよ」
怪我は何人も見てきたが、怪我をして復帰したやつはそもそも少ないし、そこから活躍できるやつなんて片手で数えられるレベルだろう。
「よくてただ走れるだけ、悪かったらそもそも走らない……というか走れないだな、そういう想定をしておけ、怪我ってのはそういうもんだ、信じてるならお前はまず目の前のレースだけ見ておけ」
「……はい」
酷だが、この界隈において怪我は本来一発アウト物だ。
……まぁそれで諦めるようなやつじゃないだろうとは思うがな。
……
「……ずいぶん上の空ね?もうレースも迫ってるのにそんなことでいいのかしら、一着私がもらうけど」
「ここにブラックアウトさんがいないの、なんだが不思議で……どうにも集中しきれないんですよね、でも一着は譲りませんから」
「ブラックアウトもそうだけどあなたも大概レース馬鹿よね……レースになると途端に集中してくるんだから、いい勝負にしましょ、あいつに走りたいって思わせるぐらいのね」
「はい!」
スイッチでもついてるのかしら、一着って文字だしたとたんにこの集中力だものね。
まぁ、ブラックアウトのニュース見て少し集中が切れてたのが私だけじゃなくてよかったわ。
いつもの口論っぽいこともないからそのままゲートに入るのがなんだか違和感があるわね。
……開いた!
スタートは完璧、このまま全員突き放してやる。
「先頭はルインローズ、スタートからかなり突き放しているぞ、あのペースを終盤まで続けられるか」
ついてこれてるやつはいない……これならこのまま置き去りにできる。
四馬身は離れてる、これなら警戒するべきなのはマインショックだけでいいわね。
「先頭との差は縮まらない、このままルインローズが逃げ切るのでしょうか!」
「追いつけるなんて思わせないぐらいにしてあげるわ……!」
「ルインローズさらに加速、まだ余力があったのか!?」
最終コーナーに入るけど……ピリついた感覚が来たわね。
このまま逃げ切らせてもらうわよ……!
「最終コーナーに入るところでマインショックが順位を上げてきている、このまま先頭のルインローズに追いつけるか!?」
「逃がさない……!」
「最終直線!ルインローズにマインショックが迫る!迫るが~並ばない!ルインローズ逃げ切った!」
「中距離なら……私が上よ」
今度は逃げ切れた、次も捕まらないから。
「お疲れ様、いい逃げだったよ」
「あっけなかったわね、マインショックさんがあそこまで差をつけたのに追いついてくるのは脅威だけど」
「……やっぱり足りないかい?」
「熱がね、マインショックさんも切れ味のあるっていうか鋭いっていうか……そんな感じがするけど、やっぱりあの噛み殺してきそうな雰囲気の方が走りがいはあるわ」
「そうか、多分ブラックアウトならそれ聞いて喜ぶと思うよ」
戻ってこなかったらこのまま中距離全部取っちまうけどな。