「二人共わかりやすいぐらい足りないってさ」
「そうか、リハビリは始まってるが元に戻るまでどれぐらいかかるか……まだまだ先になることだけはわかっているのが辛いな」
「……医者が言うには治る速度はかなり早い方らしいから、きっと歩くまでなら簡単に行けるさ、頑張れよ」
治っても元に戻るかなんて分からない、頭で浮かんだ言葉を誤魔化すのに苦労はしなかった。
我ながら酷い発想だと思うが、ブラックアウトじゃなかったらどれだけよかったんだろうな。
「頼むから暗い顔はするな……ただでさえ気分悪いのにさらに滅入っちまう」
「すまない、僕もできる限りの協力をしよう」
……無責任に同じことばかりしか言えないのが気分が悪いな、本当に。
「気負うなよ、怪我は俺の責任だ……どこかで迷っていたのは事実だしな」
「その迷いに気が付けなくて解消もしてやれなかったのは僕のせいだ」
「やめろ、俺がここまでこれたのはあんたのおかげなんだ、それすらも否定しないでくれ」
……自信もなくなって、唯一の武器も取られて、先も見えない。
今のブラックアウトには光がない、僕のせいじゃないといわれても、回避できたすべがあったかもしれないのに。
「とりあえず大丈夫だ……リハビリもあるから今日は帰ってくれ」
……
追い詰められているのは俺だけじゃない。
俺が元に戻らない限り、トレーナーはあのままだろう。
それを見るのがどれだけ辛いか。
「お前さえ動けばなぁ……いって」
少しずつ、軽く動かしては痛みを感じてやめる。
これだけで効果があるのかなんて知らない、知らないが少しでもマシになるならなんどでもやろう。
……少しでも離されないように。
まぁ足が動いたとしても腕のひびもあるからすぐに退院なんてできなかったろうがな。
「右手が動かせるのはまだマシなんだろうな」
あれだけの速度で転倒して左足骨折、左手のひび、重度の打撲、エトセトラ……まだマシ、そう言い聞かせるのが精一杯なんだよな。
時間だけが流れていって、変に焦りそうになるな。
……早くあの場所に戻りたいもんだ。
……
「怪我したウマ娘に対して俺たちトレーナーができることなんてねぇよ」
「やっぱり、そうですか」
「やっぱりってわかってるのにわざわざ俺を呼んだのか?まぁ奢ってくれるっていうのにほいほいとついてきたんだがな」
「……先輩はそういうことありましたか?」
すっかり昔の先輩呼びに戻ってるなぁ。
こいつがここまでしおれてるのも張り合いがねぇや。
「俺だってなんども見てきたさ、怪我をするやつなんてな……俺はチームも作ってたからその時に担当も一人やってる」
「しんどく……なかったですか?」
「しんどい、当たり前だがな……だが一番苦しいのは本人だ、少し前までその足で歩いて走ってたってのに、動くことすらままならねぇ」
だからこそトレーナーにはやらなきゃならねぇこともある。
ただ待つだけしかできないからこそ。
「だからトレーナー側は、堂々としてろ」
「堂々と……」
「そいつ以上にそいつの怪我が治ることを信じて、堂々としろ、そいつが戻ってこられるように居場所を作ってやれ」
「はい……今日はありがとうございます」
「気にすんな、悩む後輩を掬うのも先輩の役目だろ」
ブラックアウトにゃ周りにいい味方がいる、きっと帰ってこれるだろうな。