「……結局あなた復帰したのねぇ?」
「いくらG1経験者からしたってG3だからって舐めすぎでしょ」
あぁ、懐かしいな、このガヤがある感じ。
ルインローズがいる時はピリピリしすぎてたし、まともに実力で並んでいたのはあいつだけだったからなぁ。
結果的に一人を除いて誰もこんな絡み方してくれなかったんだよな。
「いいレースを……しような?」
「どーかしらね!怪我復帰したてで昔みたいに走れるとでも思ってんの?随分考えが甘いんじゃないかしら」
「ふー……なんでそんなにギャーギャー騒ぐんだ?走ればわかることだろ?」
あーあゲートに行っちまった、つまんねぇなぁ。
……集中するか。
ゲートの感覚も随分ひさしぶりだ、ここなら深呼吸ひとつすれば落ち着ける……よし、冴えたな。
開いた!
……
あいつは怪我したばっかり……やっぱりね!スタートも失敗してる。
本調子ならきっといつも通り先行なんでしょうけど、前に出れないのね、ブロックもあるんでしょうけど。
「ブラックアウト出遅れたか!後続から三番手についているぞ!」
ただ……何もしてこないのが不気味だ。
これなら勝てる、慢心してるから足を掬われるのよ。
「レースに動きが無いまま終盤に入ります!最終コーナーを曲がって最後の直線!後ろからブラックアウトが一気に上がってきている!」
後ろから三番目にいたのよ?ここから追いつけるわけ……。
何?今の感覚……寒気?
いや……なんで。
「なんでもうここにいるのよ!」
さっきまで後ろにいたじゃない!
最後のコーナーから一瞬でここまで来たっていうの!?
「ブラックアウトごぼう抜き!一切並ばず先頭を追い抜いた!ブラックアウト差し切ってゴール!」
「あんたっ……なんなのよ!」
「さぁな?いつも通りぬるい戦いだったのは明白だが」
……
「簡単だったな」
「復活戦としては上々、というか想像以上だね」
「なんだか足が軽くてな、錘をつけてたのを外したみたいな感じだ」
それに……あの有馬記念の時の感覚、あれもわかった。
やっと、同じ土俵っていうべきかもな。
「どこかで自分の限界を作ってたのかもしれないね……とりあえず足見せて、異常がないかだけ確認するから」
「了解、次はすぐにG1か?」
「あぁ、あの二人とやることになるだろうね」
楽しみだ、楽しみだが……。
「勝てると思うか?」
「無理だろうね、この短期間で元に戻したのはとんでもないと思うけど、あの二人はもっと先にいると思った方がいい」
「そうか、だが得られるものはありそうだな」
「よし、足は問題なさそうだね、とりあえずは大丈夫、違和感があったら教えてくれ」
心配性だとは思うが、実際どうなっているか自分じゃわかりゃしないから助かるな。
「ブラックアウトさん、すっかり元通りですね?」
「やっぱり見てたのか、あぁ、何も問題ねぇよ」
「次は私たちですよ、見てなかった間の成長を見せますから」
「なら追いつけるように努力しておくよ」
テレビ越しじゃないだけでわかるな……恐ろしいというべきか。
有馬記念からこの成長速度。
「それならうかうかしてられませんね、どんどん置いて行きますから」
……まったく、うかうかしてられないのはこっちだよ。
「……楽しみ?」
「どうしてそう思ったんだ?」
「すっごくニコニコしてるから」
本当に……楽しみだ。