「意外と早かったね」
「小言を言われただけだしな、少しは慎めだとよ」
「でもする気ないんでしょ?」
トレーナーがそれをいっちゃおしまいだと思うが……まぁいいか。
「……おいトレーナー、地方で有力なウマ娘がいるって話は知ってるか?」
「地方か、中央への移籍の話が上がってるのは知ってるね、マインショックって子だよ」
名前はいい、聞きたいのはただ一つだ。
「……強いのか?」
「間違いなく強いね、地方とはいえ君と同じように無敗だ、それも圧勝で」
「中央移籍の話は進んでるのか?」
「話が出たのは結構前だけど、来るとしたらもう少し後だ、それに次のG1……日本ダービーには出られない、だけど菊花賞には出てくるだろうね」
トレーナーの目は信頼している、そのトレーナーが強いと断言するほどか。
俄然楽しみになってきたな。
もしかしたらレースに熱をもたらしてくれるかもしれない。
「……映像ってあるか?」
「手元にはないけど、必要なら探してくるよ」
「頼んだ」
「さ、今はトレーニングに集中しよう、柔軟は念入りにね」
……
「少し休憩しようか、映像も用意してある」
ブラックアウトが携帯を奪い取って映像を流す。
「……速いな、終盤の追い込みが鋭い、大外からごぼう抜きか」
「脚力がいいのか踏み込みが強い、強いっていうか重いような感じだ、小さいのによくやっている」
地方ながら観客がかなり多い、これもマインショックの効果かもしれないな。
これは……思ったよりも強敵になるかもしれない。
ブラックアウトの良きライバルになってくれればいいんだけど。
「トレーナーは誰が付くんだ?」
「こっちのトレーナーは人手不足で実力不足だ、話じゃ地方のトレーナーだった人がそのまま専属のような形で来るらしい」
ともに戦ったウマ娘とトレーナーがそのままゴールインなんてのがよくあるせいで年がら年中人手不足だ。
実力のある人でそのままトレーナーとして働いている人はゼロといっても差し支えないだろう。
「地方のトレーナーとひとくくりに行っても無敗の実績を出したいい指導者だ、実力は言わずもがなだろうね」
食い入るように映像を眺めているブラックアウトの尻尾は大きく揺れている、相手が実力者だとわかったからかかなり上機嫌だ。
「……あんまり先を見過ぎて足元をすくわれないようにね」
「足元にいる奴は小動物ぐらいだろうよ」
……
こいつを今まで知らなかった俺を恥じるべきとすら思えるな。
オグリキャップの再来、あながち間違いじゃねぇのかもしれねぇ。
あの黄金のような強者達の争いを俺ができる、そう思わせてくる。
居ても立っても居られないねぇな。
「トレーナー、トレーニング追加頼む」
「了解、無茶だけはしないでね」
「……一ついいか?トレーナーからみて俺とマインショック、どっちが上だ?」
俺は分析は専門外だ、こればっかりは頼るしかない。
餅は餅屋だ。
ただ俺の予想が当たっていれば……。
「正直な感想としては総合力はおそらくマインショックの方だ、持久力、判断力も悪くない、とくに持久力には目を見張るものがあるね、力強さもある……だけど」
「ほかに何かあるか?」
「だけど速度が足りない、長距離なら十やって二回しか勝てないだろうけど、中距離なら逆になるだろうね」
「重点を置くべきなのは?」
「持久力かな、あっちは追い込み、こっちは先行、序盤のリードからスピードを落とさないようにすれば逃げ切れるとは思う、それにおそらくぶつかるのは菊花賞、菊花賞は長距離だからスタミナが無ければつぶれるのは必至だ……スタミナの消耗が怖いから競り合いも極力避けたいしね」
菊花賞、長距離なら相手が有利だろうが……勝つのは俺だ、絶対に。
「さぁ!そこまで先を見るよりも今は日本ダービーだ、そこで勝てなきゃ話の土俵にすら立てないからね、さぁ休憩は終わりトレーニングに集中!」