「……あんたと私の二人で入ったレースなんていつぶりかしらね」
「さぁな、少なくとも俺が入院してる間はなかったし、一年手前になるんじゃないか?」
「また昔みたいに煽っておく?その方が楽になるかしら」
「大丈夫だな、リラックスできてるし……煽られると燃えちまう、俺が勝つのが当たり前と思っちまうからな」
いつも……というかレースの時はマインショックもいたし、二人ってのは久しぶりね。
こういう煽り合いもチームになってからしなくなってたし。
「へぇ、なら大歓迎ね、それに勝ってこそだもの、ね?」
「実に楽しみだな、今までは手加減してたのかってぐらい驚かせてやるよ」
「手加減したまま負けるなんてしないでね?言い訳は聞きたくないから」
お互い少しにやついてからゲートに入る。
さっきまではリラックス……ここからは集中だ。
最速でスタートして最速で突き放す。
実際私は駆け引きなんてできないし、する気もない。
少しゆったりとした時間が流れて、扉が開く。
「ルインローズがスタートから飛ばしている!大きく前に出たぞ!」
私の背中は見せてあげる、横顔も見せる気ないけど。
「先頭ルインローズ!そこから五馬身離れてシャインクルー、少し後ろにアントルゴー、並ぶようにブラックアウト……」
完璧、ここからはペースを落とさない、大丈夫、あれだけ体力馬鹿に付き合って走り続けたんだからこのペースならまだ保てる……ゴール手前でもう一段上がればいい。
「ルインローズペースを崩さない!後続を引き離して……ブラックアウトが少しずつ追いついてきている!」
逃げ切ると踏んで早めにスピードを上げた?
逃がすつもりはないってことね。
……まだ余裕はある!
「追いつけるものなら追いついてみなさい……!」
「ルインローズ速度をあげたがブラックアウトを引き離せない!ブラックアウトが追いついてきている、ルインローズが最終直線に入りブラックアウトも後に続く、後続は完全に置いて行かれている!」
なんで追いついてこれるのよ……本当に昔以上ってわけね。
「気にくわない!」
「俺も、だよ……!」
気が付けば横にいる……ここまでやってまだ。
まだ終わりじゃない!
「勝つのは私!」
足にもう一度力が入る。
まだいける。
……踏み込む直前にブラックアウトの驚いた顔が見えた。
「あんたのその顔、見れただけで収穫ね」
「……悔しい限りだな」
「ルインローズ一着!ブラックアウトは惜しくも追いつけませんでした!」
……
「惜しかったね、ルインローズはおめでとう」
「ありがとう、私があいつに真っ向勝負で勝てたもの、すがすがしい気分だわ……あっちもあっちですがすがしそうだけど」
「新聞が楽しみだ、復帰したてで調子に乗っていたぐらいはかかれそうだな」
変な方向に楽しみにしてるなぁ。
「ブラックアウト、次はジャパンカップだ……」
「わかってる、相手はマインショックだろ」
「足、見せてくれ」
椅子から無造作に足を放り出してくる。
……うん、大丈夫そうだな。
「違和感もないね?」
「あぁ、問題ねぇ」
「意外とマメよね、あなた達って」
「マメなのはトレーナーであって俺じゃねぇよ」
「……怪我は心配だからね」
本当に、されてほしくなんかないし。
「……休んでる暇はないからね、できるようになったらすぐにトレーニングにかかろう」
「あぁ、そうしてくれ」
ジャパンカップに合わせてどれだけ仕上げられるか、だな。