奇策失敗だな?
というより復帰後でルインローズやマインショック相手にここまで食いつける方が異常なんだがな。
「マインショック、よく勝った、いい判断だった」
「ありがとうございます……でもまだ終わってません」
「あぁ、有馬記念だな……有馬記念にはブラックアウトもルインローズも来るだろう、そこが最終決戦かもな」
……おそらく、おそらくだがブラックアウトは有馬記念を最後にするだろう。
怪我というのはそれほど重い。
「まぁそれよりも今のジャパンカップでどうするかだな」
ここまでできた、はある種の免罪符だ。
自分の中で目標があったとしてもそこで折れる原因になる。
負けず嫌いならそんなの関係ないだろうが。
……
「……お疲れ様、ブラックアウト」
「また負けちまったかぁ……望み薄だったとはいえ作戦は成功してるんだがなぁ」
さすがに応える。
あれほど完璧に作戦ができたのに負けた。
それはすでに基本の能力で負けているのが判明しているようなものだ。
引退、その二文字がかなり近くに感じる。
「このまま、なんて気にはなれねぇな」
「何はともあれ、先に足確認するから」
忘れてた。
椅子に座るとすぐさまトレーナーがチェックを始めた。
「……違和感は?」
「ない、痛みもない」
「そうか……よし、大丈夫そうだな」
さて、少なくとも後一レースはあるんだ、そこまでは耐えてもらうぞ。
「終わったかしら」
「ルインローズ……悪かったな、あんだけ手伝ってもらったのに」
「むしろあの短期間であそこまで仕上げれたことに驚きよ」
「誉め言葉として受け取っておく」
しっかりそのつもりだという顔をされてしまったな。
さぁてと……うかうかはしてられないな。
「……有馬記念じゃ多分今日のをやる気ないんでしょうけど、もしやらないなら情けない走りだけはしないでちょうだいね」
「当たり前だ、お前らの度肝を抜いてやるよ」
「期待してるわよ」
……
「あいつの足、本当に大丈夫なの?」
「……急にどうした?」
「私が逃げの走り方を教えてる時に足みせてもらったけど、間違いなく良くなってないわよね」
言うべきか、言わざるべきか。
いや、もう気が付かれているんだろうな。
「ブラックアウトの足は良くなったわけじゃない、確かに退院の時は治っていたがこの短期間であのハードなトレーニングをやっているんだ、もし悪くならなかったとしても治るわけがない」
「……ならなんで走らせてるのよ」
「それを望まれたからね、彼女自身が足が治らないことは自覚しているだろうし」
「……ちぐはぐね、トレーナーとしてどうしたいのかあなた個人としてどうしたいのか」
ちぐはぐといわれたらそうなんだろうな。
どうするべきかなんて全くわからない、わかっていても選べない。
「僕は……わからない、わからないから支えるんだ、決定権だけ渡してね」
「ずいぶん甘いのね」
「耳が痛いね、本当に」
「……私のトレーニングは甘え無しでお願いするわ」
それだけ言ってルインローズは行ってしまった。
……もう後戻りするには遅いんだ、最後まで手伝わなきゃな。
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