「マインショックが大外から抜けた!スピードが上がる、先頭をとらえて……」
やはり脅威的、早さというよりも動きが。
必要があれば横に並び、避け、後ろに張り付き……。
よく相手を見ているというべきか。
……ブラックアウトの現状の課題はスタミナだ。
一人で走るだけの能力があっても他人と走るのはわけが違う、それも相手が駆け引きを得意とするなら尚更だ。
削り合いになれば負けるだろうな。
「それをさせないためにトレーニングを考えるのが僕たちの仕事なんだけどね」
さて、そろそろブラックアウトが来る頃だろう。
トレーニングの準備をしておこうか。
……
ここでスパートだ。
後はゴールまで!
「フゥッ……トレーナー、タイムはどうだ」
「前から落ちてるね、集中しきれてないんじゃないか?」
焦りがタイムに出ちまってる……このままじゃ結果がふるわねぇ。
「ブラックアウト、今日はここまでにしよう」
「……もう一本だけやらせろ」
「ダメだ」
クソッ……。
走りてぇのにどうにも調子が上がらねぇ。
「焦るのだけはやめるんだ」
「あぁ?」
「戦うのはあっても菊花賞だ、今焦って空回りするなんてごめんだろう?」
「……どうにもトレーニングが身に入らねぇ」
トレーナーが少し考え込むような動作をする。
いったい何を……。
「よし、ブラックアウト、明日の休みに少し出かけようか」
「は?いや、トレーニングを……」
「今のままかい?少し気持ちを落ち着けた方がいいと思うけど」
ぐうの音でねぇ。
……間違いなく今のままやっていればどこかで怪我をするだろうな。
「わかったよ……必要なものは?」
「ないよ、こっちで準備しておく……先に戻ってるから、汗はしっかり拭いてから来なよ」
……
中から話し声が聞こえる……。
電話してるのか?
「戸崎です、はい……えぇ、一人ウマ娘を連れて行っても大丈夫でしょうか?……はい、ありがとうございます、失礼します」
「どこに電話かけてたんだ?」
「明日用にちょっとね、今日は体を休ませるのに早く寝ること、夜更かしはやめておきなよ」
「過保護か……わかったよ、結局どこに行くんだ?」
「うーん……まぁついてからの秘密で、車で行くから」
秘密って……まぁいいか。
さっさと寮に戻って休むか。
……
ここ……どこだ?
いや、競バ場なのはわかるが……。
「大橋さん、今日はすいません、急にお願いしてしまって」
「構わねぇよ、敵情視察はよくある話だ、それを直接言ってくるのは珍しいがな」
この男見たことある気が……大橋っていってたか?
「おいトレーナー、こいつって」
「こいつはやめてくれよ、ご明察の通り、マインショックさんのトレーナーだよ」
「じゃあ、ここで走るのって」
「俺の担当バだ」
敵情視察ってそういうことか……だからといって本人に声かけするか?普通。
行動的なのかぶっ飛んでるのか。
「場所は用意してある、トレーナー席だ、ついてきてくれ」
競バ場に入るとかなり大きな声が聞こえきた。
これが地方の規模か……?
明らかに人が多いぞ。
「やっぱり多いですね」
「あぁ、十中八九うちを見に来たんだろな、うれしい限りだがマインショックが委縮しねぇか心配だ」
すでに出走準備前のようだ。
……鋭いな、集中のレベルが他と段違いだ。
「マインショック!気後れするなよ!落ち着いていけ!」
ゲートにウマ娘達が入って……開く。
出遅れたか?
少し出るのが遅いが……いや追い込みだからか。
「いい位置ですね」
「教え込んだからな、追い込みなら同世代に負けねぇだろうよ、あのスタートは後で叱るが」
ここからスパートか?
これは……前の連中がみんなブロックしてやがる。
ブロックのレベルとしては杜撰だが、これは効きそうだな。
「嫌なことしてきますね」
「仕方ねぇ、デビューしてから無敗なんだ、自分の勝ちを捨ててまで土をつけてやりたいんだろうよ」
「……驚かないんですね」
「あの程度で負けると思っちゃいねぇからな、それにブロックは織り込み済みだ」
大外……かなり広いな。
あの踏み込みだ。
「マインショック!外から上がってきている外から上がってきている!先頭から距離を詰めて……抜いた!そのままゴールイン!」
……かなり余裕がありそうだな。
スタミナどうなってるんだよこいつ。
「先に控え室に戻るが、お前たちも来るか?」
「あぁ、直接会ってみたくなった」
「ぜひ、お願いします」