「す、すごいですね……!中央ってこんなに人が多いんだ」
「まだ競バ場に入ってすらねぇからな、中はもっとすごいだろうよ」
「人が多くて迷いそうです……」
「すでに駅で迷子になってるからな、説得力がありそうだ」
中央のウマ娘ってこんなところで走るのが普通なんでしょうか……。
この人数に見られながら走る……緊張でどうにかなっちゃうかも。
「大橋さん、マインショックさん、時間ぴったりですね……お久しぶりです」
「今日はよろしく頼む、えぇ……決断ありがとうございます」
決断ってより、私が背中押されちゃったようなものなんだよね……。
「お礼をいうのはこっちですよ、でもレースになったら負けませんから!」
「それ、ブラックアウトの前で言えよ」
「む、無理ですよ!怖いです!」
「まぁここで話すのもなんです、控え室に行きましょうか、まだブラックアウトもいますし」
……
「……品位が問われるのよ!」
控え室の近くからの怒号、またやったな?
「品位品位って、同じことしかいえねぇのか?トレーニングで体鍛えるよりお勉強で頭鍛えた方がいいんじゃねぇの?」
「そういうところが気に食わないのよ!」
「よく言えたじゃねぇか、はじめっからストレートに言っとけ『私はお前が気に食わない』ってな」
「……あれ、止めなくてもいいのか?」
「いつものことです、止めると不機嫌になっちゃうので」
「でっでも結構やばそうですよ!」
マインショックさんはやさしいねぇ、でもどっちかっていうと君もブラックアウトよりの扱いになると思うんだけど。
「君が中央に来たら多分同じ目に合うかもね、頑張りなよ?」
「うーんまぁ見てる感じ品位しか刺すところが無くってそういうしかないみたいだしなぁ」
今日はいつにも増して荒れてるな、あの子。
一応顔出して止めるか?
流石に手が出たりするのはまずいし。
「クソ!あんたマジでむかつく!」
「どうした?付け加えておくか?『でも勝てないので出走しないでください』ってなぁ!」
流石に煽りすぎだな、ここまでにさせておこう。
「はいはいブラックアウトそこまでだよ」
「こいつの手綱ぐらい握っておきなさいよ!」
「吹っ掛けたのは君だろう、それにブラックアウトが嫌なら勝てばいい、ブラックアウトのスタンスは勝者がすべてだからね」
「今に見てなさい!」
さっさと行ってしまった。
いつもわざわざ絡んできては煽り返されて負けてないか?あの子。
「お見苦しいところをお見せしてすいません」
「お見苦しいはねぇだろ」
「意外と面白かったぞ、多少はヒヤッとしたがな」
マインショックさんは……絶句してるなぁ。
「マインショックさん大丈夫かい?」
「はっはい!すごいですね、中央って」
「いやぁブラックアウトの周りは例外だと思うよ?」
おや?もう時間か……。
「ブラックアウト、勝っておいで」
「……あぁ」
……
ブラックアウトさんの走り、ちゃんと見るの初めてか……も?
……なに、あの目。
「マインショック」
「はい!」
「目を離すな、みれるうちに全部見とけ……あいつとは絶対に戦うことになるからな」
「はいっ!」
怖い、ただ怖いんじゃない。
雰囲気だけで飲まれそうな……恐怖を感じる。
「ほう……流石に中央なだけはある、全員がいいスタートだな」
「立ち位置もいい感じですね」
先行としては最高の位置……だよね?
いや、位置が動いてきてる?
「これは……ブラックアウトのやつ、マインショックさんが見に来てるからってぶっちぎるつもりかな?」
「はい?そんなことができるんですか?」
「今の中央のレベルは君が思ってるよりも低いよ」
だとしたら追い込みで仕掛けるならここかな……。
逃がしたら追いつくのが大変そうだし。
「……笑ってやがるなぁ」
「上機嫌ですねぇ、やっぱりあの時にマインショックさんを見せにいってよかった、映像だけ見せた時にどうにも焦ってたみたいで、練習に身が入ってなかったんですよねぇ」
「そんなこと言っていいのか?」
「おや?僕はマインショックさんにブラックアウトが負けるとは思ってませんからね」
「いい担当愛だな」
ラストスパートに入る時点で先行なのに逃げ追い抜いちゃってる……。
あぁ、そのままゴールしちゃった……。
「ふむ……やっぱりこれが日本ダービーだとは思いたくねぇなぁ」
「まぁそうなるでしょうね」
「あぁそうだマインショック」
「なんですか?」
「一つ言っておくが、お前とブラックアウトならお前の方が強い、自信を持て」
え。
そんなこと担当の前で言っちゃまずいんじゃ!?
「やっぱりそう思いますか?」
「え?」
「いやぁ、菊花賞に出るんだろうなっていう想定すると、長距離だと間違いなくこっちが不利なんですよね」
「だが中央って意味じゃこっちがアウェーだ、不慣れだしな……そこの差がどうなるかだ」
「まぁ先に勝者を迎えに行きますか」