北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。
だが、転生者は死滅していなかった!
* * * * *
ケンシロウへの憎しみが燃え続けているジャギの暴虐は続く!
だが、どれほど悪事を重ねてもジャギの頭を離れないのは、哀しそうな少女の顔だった。
そのことに妙ないら立ちを感じながら、ジャギはそれを振り払おうと暴虐を行う。
その一方、ナノルたちはその暴虐にあった転生者の助けを聞く。なんとかその転生者の少女を助けた彼らは、ジャギへの怒りを改めて感じるのであった!
ナノル一行の、ジャギ打倒の旅はまだ続く!
オレたちは、砂漠を走り回り、なんとかジャギによって砂漠に捨てられたガキ転生者、アキを助け出すことができた。
今、ココとフラニーが懸命に手当てをしてくれているところだ。転生前は看護学生だったココのおかげもあり、なんとか何事もなく峠を越えることができたらしい。
「あ……」
「あ、よかった! ナノル兄、アキちゃんが目を覚ましたよ!」
そのココの声を聴き、オレは周囲を警戒するために上っていた岩を降り、彼女たちのもとへ走っていった。
「兄ちゃんたち……ボクは……」
まさかのボクっ子か。掲示板では一人称「俺」だったのにな。
やっぱり、街の人たちに変に思われないために、当たり障りのないようにしてたのかな。それか、自我とのすり合わせで、考えなどは自分、言動は転生先の身体というようにしているのか。
まぁ、それはともかく。
「無理はしなくていいぞ。オレも転生者だからな。何が起こったかはわかる」
「そっか……ありがとう……」
そう礼を言うアキの頭を優しくなでながら、ココがあやすように声をかける。
「もう大丈夫だからね。今はゆっくり休んで」
「うん……」
そう言うと、アキは静かに目を閉じて、寝息を立て始めた。その頭を、ココが優しくなで続けている。
* * * * *
そしてアキが目を覚ますと、彼女はフラニーが差し出した保存食をすごい勢いで食べ始めた。やはり、元は男だったのと、今まで空腹だったからだろうか。
「そうか、それは大変だったな」
「うん。でも、あのじーちゃんも、ボクのことを心配して言ってくれたことだし、あの一言がなければ右脚斬り落とされていただろうから、恨む気にはなれないんだけどさ。もぐもぐ……」
「それにしても、子供の割には大人びてるね、お前さん。とてもガキには見えないよ」
「ぎくぅ!!」
まぁ、見てくれはガキだけど、中は転生者だからな。気にしないでやってくれ、とオレは心の中でカレンに言った。
「だけど、ちょっと気になったんだよな……」
「何がです?」
「ボクが脚を斬り落とされそうになった時、ジャギがその手下を抑えるようなことを言ったんだよ。『そんなガキにいつまでもかまってるんじゃねぇ』って」
「そうなの?」
そう聞き返すココに、アキはうなずいた。そしてカレンも腕を組み、口を開いた。
「そういえば、砂漠に放置するというのも彼にしては甘い気がするねぇ」
「そうでしょうか?」
「あぁ。ジャギだったら、部下に脚を斬り落とさせてるんじゃないかい? そっちのほうがよっぽと非道だと思うけどねぇ」
「あ、脚を……がくがくぶるぶる」
カレンの話を聞いて、ぶるぶると震えてるココの頭をなでながら言う。
「一体、どんな心境の変化なんだろうな? でも、ジャギに実際に会ってみなければわからんか」
* * * * *
そしてその場で一泊したオレたちは、アキを町に送り届けるため、そしてジャギに会って、必要なら討伐するため、彼が拠点としているオオサカの町に再びバギーを走らせていた。
ケンはジャギを倒すのは自分の役目だと言っていたが、こちらにもジャギには、泊めてくれたおじいさんを惨殺されたり、カレンを洗脳されたり、アキにひどいことをされたりといった借りがある。倒すことはケンに譲るにしても、一発ボコボコにしなければ気が済まない。
それに何より、彼にどのような心境の変化があったのかを確かめたい気持ちもあった。彼が真人間になるきっかけがあるのかどうか。なぜか知らないが、それを確かめる必要があると感じたのだ。
そんなわけでオオサカに向かっている道中、かつて神戸の町があったあたりを走っていると……。
ヒュッ!!
後ろからパイプで作られた粗末な槍が飛んできた! それに真っ先に気づいたカレンが立ち上がり……。
「ヒュッ! シャウッ!!」
奇声とともにその槍を真っ二つに叩き折った。
そういえば、カレンはレイとは旧知の仲なんだよな。やはりあの奇声はレイから移ったのか?
「ん、どうしたんだい?」
「いや、レイと同じ奇声あげて戦うんだな、と思ってさ」
「そうかい……って、レイ様と会ったことがあるの?」
「あぁ。牙一族を倒す時に行動を共にしていたことがある。今は、マイヅルの村に住んでるはずだぜ」
「そう。元気でいてくれたならよかったわ……。っと、また来たね!」
その声に後ろを向くと、確かにバイクやバギーに乗った若者たちが追いかけてきていた。とても強盗をするような奴らには見えないのだが……。
だけど、襲われている以上、どうにかしないわけにはいかない。オレは、バギーを止め、カレンとともに飛び降りた。
「カレン、できるだけ彼らを殺さない方向で頼む」
「まぁ、努力してみるよ」
「頼む。ココ、フラニーとアキと一緒にバギーの中にいてくれ」
「わかったよ。気を付けてね!」
向こうも、こちらが迎え撃つつもりだというのがわかったのだろう。若者たちも、オレたちの前にバイクや車を止めると、降りてこちらにやってきた。
そして、オレがダガーを構え、カレンも構えをとったのが戦いの合図だ。
「うりゃー!」
「ふっ、とりゃっ!」
「うわっ!」
男がこちらに突進し、パイプを振り下ろしてくる。オレはそれをかわし、ダガーで峰うちを食らわせた。
カレンも負けてはいない。
「えーい!」
「甘いね。そりゃっ!」
「ぐあっ!!」
別の男が突いてきたさびたナイフをバック転でかわし、そのついでにサマーソルトキックを食らわせる。闘気はこもってないので真っ二つにはならない。ただ吹き飛ばされただけだ。
戦ってきてわかったが、こいつら、ガチの戦いの素人だ。ガチで素人って意味がわからんが、オレたちどころか、そこらへんのモヒカンども……果てはココと戦っても負けるんじゃないかってぐらいだ。ただ、こいつらの戦いには何か必死さを感じた。何か切実な理由があるような……。
まぁ、まずはこいつらを戦闘不能にしてからだ。聞き出すのはそれからでいい。
それからもオレたちは、若者たちと戦いを繰り広げていた。
* * * * *
三十分ぐらいの戦いの末、若者たちはオレたちに叩き伏せられていた。オレもカレンも峰うちにするように心がけたため、死人は一人も出ていない。
そして、オレが最後に倒した男が言った。
「くそ……焼くなり煮るなり、好きにしやがれ……」
「いや、殺したり、奪いたりしたいわけじゃないから」
そう言うオレの横で、ココが聞いた。
「ねぇ、どうして私たちを襲ってきたの? 事情があるなら相談にのるよ? ナノル兄なら助けてくれると思うし。ね?」
「まぁなぁ……。あまり原作には関わりたくないんだが」
「そういえば、ゲンサクってなんなんだ?」
「いや、気にしないでくれ」
ココの言葉を聞き、男はなぜか、ココを懐かしいような目で見た。
「お前……その男の妹か?」
「うん、そうだよ」
「そうか……俺にも、お前ぐらいの妹がいたよ。俺たちがあんなことしてたのはな。ジャギに、その妹のことでのオトシマエをつけさせるためなのさ」
「落とし前? どういうことなんだい?」
* * * * *
この男には、アンナという妹がいたんだそうだ。そしてその妹はジャギととても仲が良かった。
最終戦争直後、追い詰められたジャギは、アンナが止めるのも聞かず、犯罪に手を染めた。
ある対立していた暴走族のメンバーをぶちのめし、その物資を奪ったのだ。だが当然、それは悲惨な結果を招いた。アンナが、その報復として、奪った族から暴行を受けて命を落としたのだ。
それに逆上したジャギは、そいつらを皆殺しにした。
そしてそれが、彼の中のタガを外してしまったらしい。
* * * * *
「そんなことが……」
ココが声を詰まらせたようにつぶやく。
「それだけで終わったんだったら、俺たちもどうこうしようって気はなかったよ。こんな世の中だしな。
だがあいつはそれからも、凶悪な悪行を重ね、アンナの想いや願い、犠牲を無にしやがった。俺たちはそれが許せねぇ。
せめて、あいつを一発殴らねぇと気が済まないのさ」
男の話では、ここにいる者はみんな、その暴走族の元メンバーで、ジャギに制裁するのに賛同した者たちだという。
「そんなわけで、小さな村をアジトにして、ジャギの手下とやりあっていたんだが、先日、その手下たちが俺たちの彼女や妻をさらっていきやがったんだ」
「なるほど。それで、彼女たちを取り戻すために、武器を欲しがってたわけだね」
「あぁ」
なるほど、合点がいった。そういうことなら。
「わかった。オレたちはこの通り武器はないが、手を貸してやるぜ」
「本当か!?」
「あぁ。オレたちも、ジャギには色々言いたいこと、聞きたいこと、やってやりたいことがあってな」
「ありがてぇ……よろしく頼むぜ」
そしてオレたちは、ぶちのめした暴走族の連中に手当を施すと、一緒に女たちが連れ去られたコーベの町へと向かった。
* * * * *
かくして、コーベの町にやってきたオレたち。だがそれは、ジャギの手下の罠だった!
コーベの町の周囲に作られた城壁。その上に彼の片腕らしき男が直立していて、その後ろには女たちがモヒカンにつかまっていた。
「ふふふ、待っていたぞ。こんなに早く、お前たちを殲滅できる機会が現れるとはな。さぁ、女たちの命が惜しければ武器を捨てろ!」
「くっ……」
うかつだったな……。奴らが女たちを人質にする可能性を考えて、ココかカレンあたりを別動隊として出せばよかったか……。
どうするか……。
そう思って横を見ると、暴走族のメンバーは誰も武器を捨てようとしなかった。そればかりか、目に、堅く悲壮な決意の光を宿している。
正面を見る。女たちも同じ光を宿していた。
それを見て、オレも覚悟を決めた。
「どうした、早く武器を捨てろ!」
そう言って、降伏を要求してくるが、オレたちはそれに臆することなく歩を進める。
「武器を捨てろ! 女たちが殺されてもいいのか!?」
「やってみな」
「な、なんだと!?」
そして暴走族のリーダーだった男が口を開く。
「俺たちも、女たちもな。覚悟を決めてるんだよ。ジャギにオトシマエをつけさせるためだったら、命は惜しくないってな」
「な……!」
そしてカレンが構えを取り、手刀を一閃させて言い放った。
「そういうことさ。殺したいんだったら勝手に殺しな。ただしその瞬間に、あんたたちは真っ二つにされてるだろうけどね。あんたが殺した人たちの無念や覚悟を秘めた蹴り、ごちそうしてやるよ」
その眼光の危険すぎる鋭さに恐怖を感じたらしい。
「冗談じゃねぇ、俺はフケさせてもらうぜええぇぇぇ!!」
「お、おい、ルブラ!」
一人の手下がその恐怖に耐えかねたか、一目散に逃げだした。
そしてそれをきっかけに、堰を切ったように。
「ひ、ひぃぃぃーーー!!」
「ま、まだ死にたくねえぇぇぇーーー!!」
「お、おい!!」
手下たちは、ボスらしき男が止めるのも聞かず、恐れをなして逃げていった。
「さぁ、後はお前だけだぜ」
「ち、ちくしょう! やってやる! このインパルス様をなめるなああぁぁぁぁ!!」
「それはよかったね。それでどうしたんだい?」
飛び降りて襲ってきたインパルスに向かって、カレンが跳躍する。そして、空中で一回転し一閃! オーバーヘッドキックを放った!
「い……そ……べぇ~!!」
そのカレンの蹴りで、インパルスは真っ二つになり、絶命したのだった。
* * * * *
ジャギから解放された町で、暴走族の人たちが、恋人や妻たちと抱き合って喜んでいる。一時は死を覚悟していただけに、その喜びも格別だろう。
そんな中、オレたちは暴走族のリーダーの見送りを受けていた。
「本当にいいのか? あんたたちにジャギにオトシマエをつけさせるのを任せちまって」
「あぁ。オレもジャギには用があるしな。それに、あいつは伝承者にはなれなかったが、それでも北斗神拳の使い手だ。勝てそうなのはオレたちぐらいだけだからな」
「そうか……任せた」
「任された。殺すまでにはいかなかったとしても、なんらかのオトシマエはつけさせるよ。それでいいよな?」
オレが聞くと、リーダーはこくりとうなずき、オレを真摯に見つめてくる。何かを託すかのように。
「あぁ、それでいいよ。オトシマエがつけば、生死は問わんさ。よろしく頼むぜ」
「あぁ」
そしてがっちりと握手をかわし、オレたちはジャギが根城にしているオオサカの町に向かっていったのだった。
感想、ファンアート、募集中です!
* 次回予告 *<テレッテー!!
ついにナノルたちは、ジャギ一党のアジトにたどり着いた!
だがその彼らを、黒掌十字拳の使い手が襲う!
果たしてカレンは、この強敵にどう立ち向かうのか!?
そして、ジャギを歪ませた哀しき過去とは!?
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第拾壱話『愛する人よ永遠に! そしてジャギよ……』
「このままではお前は、永遠にアンナの微笑みを失ったままだ。もしここで果てれば、お前は二度と彼女の微笑みを見ることなく地獄に落ちることになるぜ」
※次の更新は、12/22 19:00の予定です。お楽しみに!
北斗転生終了後、どの作品を連載開始してほしいですか?
-
機動新伝説ガンダム
-
SDガンダム戦国伝
-
一年戦争もの
-
その他