北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。
だが、転生者は死滅していなかった!
* * * * *
カホとの触れ合いの中で、自らの道の誤りに気づいたジャギ。
だがそんな中、そのカホが奇跡の村に連れていかれた!
ジャギたちはカホを救うために、連れ去った奴らの後を追うのだった!
オレたちは、あの村を出て、奇跡の村へとバギーを走らせていた。
幸いにも、村の場所はジャギが知っていてくれて助かった。
彼によれば、『あの男』は拳王の配下とのことで、拳王と協力関係にあった彼の元にも、『あの男』の動静は伝えられていたという。もちろん、奴が奇跡の村に居を構えたことにも。
それだけではない。
「継承者がケンシロウに決まって、俺が北斗の寺院を飛び出して間もないころ、俺はあいつと遭遇したんだ。そして俺は邪な心から、奴に邪悪な提案をした。オレがケンシロウに成りすまして非道を働くように、お前もトキになりすましてあいつの名を貶めるのはどうだ、とな。そしてあいつはそれにのり、俺はあいつに北斗神拳とトキの背中の傷のことを教え、あいつから南斗聖拳を教わった。それが巡り巡ってこんなことになるなんてよ……!」
「そんなことが……」
「今となっては悔やんでも悔やみきれねぇぜ。一刻も早く、奴のアジトに乗り込み、カホを助けないと……!」
焦りを隠し切れない様子のジャギ。今にも、カホが『奴』の毒牙にかかろうとしている今、焦るのも仕方ないことだろう。
そしてオレたちが引き続き車を走らせていると、地面に一人の女性が倒れ伏しているのが見えた。オレは車を止めるとその女性の元に駆け寄る。
「おい、大丈夫か、どうしたんだ?」
「私は……奇跡の村から逃れてきた者です……。トキの人体実験から逃れてきたのです」
「なんだって!?」
オレもジャギも、女性の告白を聞いて驚く。そこに、向こう側からバイクに乗った一団が接近してくるのが見えた。
「ああっ……トキの手下たちが……!」
「仕方ないな。まずはあいつらを片付けるとしようぜ」
「だな。ちっ、急いで奇跡の町に行かなきゃいけないのによ」
「いくよ!」
そして追っ手はあっけなく蹴散らされた。
それを見た女性は、すごい勢いで礼を言ってきた。それだけではなく。
「ありがとうございます、おかげで助かりました! よければ私の家に来てください。おもてなしさせていただきます」
「え? オレたちは先を急いでいるし……」
「いえ、私の家はこのすぐ近くですから。ぜひともおもてなしを……」
なぜこの女性はそんなに誘ってこようとしているんだ?
と、そこでジャギがイラついたように進み出て、口を開いた。
「おい姉ちゃん、その服を脱いでみろ」
「え?」
「ちょ、ちょっとジャギの兄ちゃんっ……」
「なんでそんなこと……」
アキとココの非難には耳を貸さず、ジャギはただ女性をにらみつける。
「い、いえ。それは私の家で……」
家でならいいのかい。だがジャギは許さないというかのようにさらに言い放つ。
「どうした、なぜ脱げない」
「……」
そして。
「きえ~いっ!!」
女性が飛び掛かってきた! ジャギは飛び掛かってきた彼女にパンチを放って吹き飛ばした。
「ぶげらっ!? なぜ、なぜ俺が刺客だとわかった!? アミバ様の秘孔による人体改造で女の身体になったのに!」
「匂いだよ。お前から匂いがしてたんだ。俺と同じドブネズミの匂いがな」
「……」
そしてたちまち、女性はオレ、ジャギ、カレンに囲まれる。
「お、おのれ~! だがただではやられんぞ~!!」
はい。そう言うトキ(偽物)の手下でしたが、ほぼただでやられました。ジャギの怒りの鉄拳で一発です。
「ちっ、時間を取られちまったな。急ごうぜ!」
「あぁ」
* * * * *
一方そのころ、奇跡の村のビルの前。木人形狩り隊につかまった人々が、追い立てるようにそのビルの中に入っていく。
その中に、少年……ナツを抱えたカホの姿があった。
「お願いです、助けてください! 弟が……ナツがすごい熱で……!」
必死にビルの扉を叩くカホ。十数回叩いた後で、扉が開き仮面の男が現れた。
「おや、すごい熱ですか。それは大変だ」
「お願いします、彼の命が助かるからなんでもしますから!」
「わかりました。それではさっそく治療を施しましょう。さぁ、おはいりなさい」
「あ、ありがとうございます!」
だがカホは、男が仮面の奥で邪悪な笑みを浮かべていることに気づかなかった。
そして彼女は、男にすすめられてビルの中に入っていった。娘の未来を暗示するような音を立てて、扉が閉まる……!
* * * * *
そしてオレたちが、奇跡の村の隣町にやってきたその時!
人一人見当たらない死の町にトラックがやってきた。見間違うはずがない。木人形狩りをしていた奴らのものだ。
オレたちはそのトラックのほうに走っていく。その中、男たちは車を降り、木人形にされた人たちのなれの果てと思われる死体を次々と放り投げていく。
その中の一人を見たジャギが、絶望に満ちた声をあげる。
「か、カホ……!!」
そう。血まみれになり、今も身体の各所が破裂しているが、それはカホだったのだ。
「貴様らあああああ!!」
怒りに燃えたジャギが叫び声をあげてトラックに突っ込んでいく。
それに気づいた木人形狩りの奴らが驚きと恐怖に満ちた表情を浮かべる。
「な、なんだお前らは!?」
「うるせぇ!!」
奴らのうちの二人が戦闘態勢をとる前にジャギは彼らに襲い掛かった。そしてたちまち二人の秘孔を突いて破裂させる。
それを見たリーダーらしき男が慌ててトラックに乗り込んだ。
「る、ルブラ様!」
「俺は一足先にア……トキ様のところに帰る! お前らはこいつらの足止めをしていろ!」
そして急に走り出す。
「逃がすかあああぁぁぁ!!」
ジャギがそれを追おうとするも、そこに木人形狩りの奴らが襲い掛かる。
「邪魔するんじゃねええええぇぇぇ!!」
しかし、怒りと憎しみに燃えた今のジャギの敵ではない。鎧袖一触という言葉すら生ぬるい。
襲い掛かってきた奴らは、次々とジャギの北斗神拳の前に倒されていった。
戦いはあっという間に終わった。だがその間に、ルブラといったあの隊長が乗ったトラックはとっくに逃げ去ってしまったのである。
ルブラへの、そしてトキ(偽物)への怒りの叫びを、ジャギが吠える。
「くそがあああああぁぁぁぁぁ!!」
* * * * *
「あ……ジャギ……さん……」
カホはかろうじて生きていた。全身血まみれになりながらも、まだ生きていたのだ。かろうじて、生と死とをつなぐ踊り場で留まっている状態ではあったが。
「何があったかはわかっているつもりだ。だから、何も言うんじゃねぇ……」
「よかった……またジャギさんに会えて……うっ……あぁっ!!」
ボンッ!! ブシュウッ!!
悲鳴とともに、彼女の右胸が膨らみ、怪しく蠢き、そして爆ぜた。鮮血が辺りに飛び散る。
「済まねぇな……俺にはこれしかできねぇ……」
そう言うとジャギは、彼女の服の裾をあげ、のぞいた生身の脇腹に指を突き入れた。
OVA『新・北斗の拳』の中で見たことがある。秘孔『閉血愁』。緩やかに心臓の動きを停止させ、安らかな死を与える秘孔だったか。
カホがもう助からないとわかったジャギは、これ以上彼女が苦しみ、砕け散る悲惨な最期を迎えさせないように、安らかな死を与えることにしたのだ。
「いいえ……私……ジャギさんに会えて……」
幸せでした。その彼女の言葉が、声なくオレたちの心に届いた気がした。それを確かに受け取っていたジャギが答える。
「あぁ……俺もだぜ……ありがとよ……」
「ジャギ……さん……」
そしてカホは穏やかに目を閉じ、二度と開くことはなかった。それを看取るジャギの目からは血の涙が流れていた。
「ひどいや……」
「こんなのって……残酷すぎるよ……」
「カホさん……」
アキやココ、フラニーも、カホがたどったあまりにも悲惨な運命に、哀しみの言葉を発し、そして涙した。
そんな中、ジャギはゆっくりと立ち上がる。
「同情の言葉はいらねぇ。これは俺の邪心が招いたことだ。俺の邪に満ちた心が、奪い、殺し、壊してきたふるまいが、巡り巡ってきた。それがカホを殺しちまったんだ。彼女を殺したのは確かにトキ……いやアミバの野郎だが、俺も彼女を殺した犯人の一人なのさ」
「ジャギさん……」
「だがそんな俺とはこれでおさらばだ。アミバを必ず倒し、俺がこれまで抱いてきた邪心、してきたこと全てにケジメをつけ、今までの俺をこれで断ち切る。それが俺がカホに、いや俺の犠牲になった奴らに対してできるせめてものことだ。俺がしてきたことを償うには足りんかもしれんがな」
「ジャギ……」
俺がジャギの名を呼ぶと、彼は決意に満ちた表情を浮かべてこちらに向きなおった。そして口を開く。
「さぁ、行こうぜ。奇跡の村へ。奴のアジトへ」
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* 次回予告 *<テレッテー!!
遂にトキの偽物と対決するジャギ!
例え一度は同じ道を歩んだ仲なれど、それが自分の大切なものを奪った男ならば、そんな仲でも倒すのがジャギの歩む道!
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第拾伍話『怒拳二連弾! アミバ地獄で待っていろ!』
「安心しろ。俺もいずれそちらに行くさ」
※次の更新は、1/19 19:00の予定です。お楽しみに!
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