北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
その名を転生者!
天に連なる七つの星のもと、地に散らばった転生者たちを巡って、悲劇は繰り返される……!
ROB's BARの前。オレは改めて、バギーに水や食料を積んでいた。それを手伝ってくれ、『あること』を快く引き受けてくれたマスターのジョニーに礼を言う。
「ありがとうな、ジョニーさん。改めて、ココとアキ、フラニーのことをよろしく頼むぜ」
「任せといてくれ。俺のできる限りで、彼女たちの身の安全を保証するよ」
そう、ココ、アキ、フラニーの三人を、オレが戻ってくるまで、マスターに預けることにしたのだ。原作で、バットとリンの二人を預かってくれたジョニーは、彼女たちも快く引き受けてくれた。さすがに激戦が繰り広げられるであろう場所に、子供のアキと、女性のフラニーを連れていくわけにはいかないし、ココにはもしものために二人を守ってもらわなくてはならない。
……なのだが、ココが何かに迷っている様子なのが、ちょっと気にかかった。それが、オレがバギーに乗り込む脚を鈍らせていた。
* * * * *
俺……ジャギとしては、早くSin-GOLANとかいうふざけた奴らのアジトに乗り込んで、連中をぶっ潰してしまいたいところなんだが、ナノルの奴が、ココの様子が気にかかって、なかなか動こうとしないんだよな、だが、あまり文句を言う気にはなれなかった。決して、あの兄妹には色々助けてもらった恩があるからじゃないからな!
……ったく、ココの奴も言いたいことがあるなら、はっきり言えばいいものを。
と、その時、フラニーの奴が、何かに気が付いたようで、ココの肩に手を置いて口を開いた。
「ココさん、一緒に行ってあげてください。私なら大丈夫です。私の身も、アキさんの身も、私が力の限り守ります」
「フラニーさん……」
……なるほどね、ココが迷っていたのはそういうわけだったのかい。ココの本当の気持ちとしては、兄であるナノルの奴と一緒に行きたいが、かといって、フラニーたちを守らないわけにはいかない、と。
そこにかけられたフラニーの言葉に、ココの表情から迷いが少し消えた。それでも彼女はまだ迷っているようだったが、両肩に手を置かれて、それで決心がついたようだ。
「ナノル兄、私も連れて行って!」
それを聞き、ナノルは少しためらっていたが、すぐに笑顔になって手を差し伸べた。
やれやれ、やっと出発かい。さて、今までの分も含めて、いっぱい暴れさせてもらおうか!
……しかし、フラニーがあんなことを言うってことは、もしかして記憶が戻りつつあるのか? だとしたら、俺の年貢の納め時も近いのかもしれねぇな……。
* * * * *
アツガにある、Sin-GOLANの拠点。その建物の一室、特佐の部屋に一人の兵士が駆け込んできた。
彼は慌てた様子で報告する。
「特佐! 奴らが……! 准尉を倒した奴らが接近してきます!」
「奴らが? ということは、中尉は倒されたのか。あれほどの力を持った中尉を倒すとは、ただのネズミではないようだな」
「は……しかし、いかがなさいましょう? 迎撃態勢をとりますか?」
そう聞いてきた兵士に、特佐はにやりと笑みを浮かべて答えた。
「その必要はない。ただものではなくてもネズミはネズミ。我らのあの切り札があれば奴ら等蹴散らせる」
「切り札……もしかしてあれを!?」
「そうだ。ただちにアレの準備をせよ! 私が指揮をとる。急げ!」
「はっ!」
兵士が走り去るのを見送りながら、彼は不敵に笑って、一人言い放った。
「愚かなネズミどもめ。ちっぽけな拳法など、近代兵器の前には無力だということを思い知らせてくれるわ!」
* * * * *
オレたちは、ただ一直線、アツガに向けてバギーを走らせていた。
その後部座席には、あの兵士も乗っている。本当は彼もオアシスに置いていこうと思ったのだが、それは拒否された。やはり、妹が苦しい目にあっているのに、自分だけ安全なところにいられないのだろう。気持ちはわかる。オレも同じ立場だったらそうしただろうから。
そんなわけで、オレたちはアツガに向かっていたのだが、そこでおかしなところが一つ。
「奴ら、全然応戦しに来ないね」
カレンが、オレの疑問を代弁したかのように言う。そう、あれから全然Sin-GOLANの奴らが襲ってくる気配がないのだ。奴らからしたら、オレたちが拠点を目指してるのはわかってるんだから、迎撃の兵士を送ってきてもよさそうなものなのだが……。
「そうだな。拠点で決戦しようとしているのか、それとも別の思惑があるのか……」
そこに、気楽な声、でも緊張感をそれに秘めてジャギが言う。
「なぁに、出てこないのなら、余計な戦いしなくて済むじゃねぇか。うだうだ言っても仕方ねぇよ。このまま突っ込もうぜ」
「うんっ」
ココもジャギに同調してうなずく。
確かにそうだな。ここまで来たら、突っ込んで、そしてぶっ潰すだけだ。オレは強くアクセルを踏み込んだ。
* * * * *
一方、Sin-GOLANの拠点前。そこには、巨大な列車砲が鎮座していた。これが、Sin-GOLANの切り札である。
「ふふふふ、損傷して大破していたものを、苦労して回収して、部品を集めて修復したかいがあったというものよ。この切り札の最初の標的が自分たちになったということを誇りに思うがいい! 砲手、照準はどうか!?」
「はい。照準、誤差修正、ともに完了です!」
その報告を聞いた特佐が、会心の笑みを浮かべて言う。
「よし、発射!!」
* * * * *
バギーで引き続き、アツガに突入していくオレたち。そこで、ジャギが何かに気が付いたようだ。
「いかん、よけろ!」
「え!?」
大急ぎでハンドルを切る。その直後。それまでオレたちのバギーがいたところに、爆音とともに大きな大波が立った! そこに残ったのは大きなクレーター。
「もしやこれは……巨大な大砲か!?」
「まいったね、奴らそんなものまであるなんて……。このまま突っ込んでいったら、まんまとその大砲の餌食になるだけだよ」
「ナノル兄……」
確かにカレンの言う通りだ。何の策もなしではただやられるだけ。ここは……。
「仕方ない、一度退却だ!」
そしてハンドルを切り、引き返す。それと同時に、直前にオレたちがいたところに、またも大きな穴が開いた。
* * * * *
「連中、列車砲の射程外へと逃げていきます!」
部下からの報告を聞き、特佐は高笑いを上げた。それは自らの勝利を確信しているかのようだった。
「ぐわははは! どうだ愚か者どもめ! この列車砲があれば、お前らなど恐れるに足らんわ! よし、遊撃隊を出せ! 奴らを追撃するのだ!」
「ははっ!」
* * * * *
そのころ、オレたちは廃墟の中に身を隠していた。どうやら、このあたりはあの大砲の射程外らしく、あの砲撃が飛んでくることはなかった。
それはいいのだが……。
「ココ、あの兵士の様子は?」
「うん。今は落ち着いてるけど、それもいつまでもつか……」
「そうか……くそっ、あの兵士が生きているうちに、奴らをぶっ潰し、妹さんを助け出してやりたいのに……」
ここにいれば、あの砲撃を喰らうことはないが、ずっとここに身を隠しているわけにはいかない。ここにこうしていても、Sin-GOLANを潰すことはできないし、彼と妹さんを再会させることもできない。どうにかしなくては……。
そこに、ココが声をかけてくれた。
「ナノル兄、焦っても仕方ないよ。みんなで何かいい方法を考えよう?」
「ココ……あぁ、そうだな」
お互い微笑みを向けあうオレとココ。そこで、ジャギが声をかけてきた。
「気を付けな。また奴らが来たようだぜ」
「!!」
彼の警告にオレはとっさにダガーを抜いて構えた。ココもダーツを懐から取り出して構える。
そしてそれと同時に、前方からバイクに乗った一団が突っ込んできた!
「せいやっ!」
オレは奴らに向かって突進し、そして直前でジャンプ! それと同時に、奴らの身体を切り裂いた! さらに、その後方の奴の頭を蹴り飛ばし、その反動でココの前に戻ってきた。
敵はさらに上からも襲ってきた! その相手にココがダーツを投げつけて、その目を潰す。そこにダガーを投げつけて仕留めた。
ジャギもガンブレードを振るい、Sin-GOLANの兵士たちを切り倒していき、カレンも南斗翡翠拳で敵を切り裂いていく。
奮闘のおかげあって、奴らはそれほど時間もかからずに殲滅された。
* * * * *
戦い終わって、オレは一息ついた。しかし、肝心な問題は解決していない。あの列車砲をどうにかする方法が思いつかないのだ。
このままでは八方塞がりだ……。その時。
「!?」
オレたちの横を、オレたちのバギーが通り過ぎていった。其れに乗っていたのは……。
「あれは……あの兵士さん!?」
「どうするつもりだ、あの兵士!?」
ココとジャギが驚いている中、カレンが兵士が考えていることに感づいたようだ。
「まさかあいつ……囮になろうとしているんじゃないのかい……?」
「そんな……早く止めないと……!」
だがそこでジャギが言った。
「いや、このチャンスを逃しちゃならねぇ。あいつが囮になっているうちに砂嵐に紛れてあの大砲に迫るんだ。そうすりゃ、あの忌々しい大砲ともおさらばだぜ」
「ジャギさん! そんなひどいこと……」
ココがそう反論しようとして止めた。ジャギの目からは一筋、血の涙が流れていたのだ。
「あいつは残り少ない命を賭けて、俺たちに道を開こうとしているんだ。なら、それを無駄にすることなく、使わせてもらい、大砲を……いや、Sin-GOLANを潰すのが、あいつに応えることじゃねぇのか?」
「……あぁ、その通りだ。よし、たぶん奴らはバギーに乗ってきたはずだ。それを見つけて、それに乗って突っ込むぞ!」
「あいよ! ……ほんと、重傷の身なのに、かっこいいことしてくれるよ、まったく……!」
* * * * *
「特佐、奴らがまた突っ込んできました!」
「ふん、性懲りもなくまた来たか! 列車砲、測的開始、発射用意!」
「了解!」
Sin-GOLANの拠点。不敵な笑みを浮かべた特佐の指示により、列車砲の発射用意が進んでいく……。そして。
「特佐、発射用意、完了しました!」
「よし、撃て!」
号令一下、轟音を立てて、列車砲が火を噴いた!
* * * * *
兵士は、意識がもうろうとし、視界がゆがみながらも、必死にバギーを運転していた。妹を救うため、彼らの助けになる、その一念が兵士の十分に動かないその身体を動かしていた。
その彼の耳に、かすかに轟音が届く。あわてて、彼はハンドルを切った。なんとか回避成功。バギーのすぐ近くに爆発が巻き起こる。
なおもさらに突撃する。それからしばらくして、また砲撃音。だが、今度はとてもかわしきれない弾道だった。
兵士は諦めながら上を見て思う。
(マキ……どうか、幸せに……)
そして勇気ある兵士は、バギーとともに砕け散った。
* * * * *
砂嵐の中、遠くのほうで煙があがっているのが見えた。あれはおそらく……。
「兵士さん……」
ココの目から涙がこぼれ落ちる。そして手を組み、兵士の冥福を祈った。
「これであいつらへの貸しがまた一つ増えちまったな。あの兵士たちのためにも、奴らをぶっ潰さないとな」
「あぁ……!」
オレはさらに強くアクセルを踏み込む。奴らが乗ってきたバギーはとても大きく、オレ、ココ、フラニー、アキ、カレン、ジャギの六人が乗ってもまだ余裕があるぐらいで、さらにその大きさに見合うだけあり、スピードもかなり出るものだった。
そのバギーをさらに加速させ、オレたちは奴らアジトへ突っ込む。
そしてついに、砂嵐を突っ切ったオレたちの目の前に、Sin-GOLANの拠点が見えた!
* * * * *
「と、特佐! 奴らが!」
「何!?」
報告を受け、その方向に目を向けた特佐が衝撃を顔に浮かべた。ナノルたちの乗った軍用バギーが、もう拠点の目の前まで迫っていたのだ!
「つ、次だ。早く次の砲撃の準備をしろ!」
「む、無理です! 最短射程距離まで踏み込まれました! この距離では、撃っても当てることはできません! それに、準備をしても間に合いませ……ぶぎゃっ!」
報告をしてきた兵士の首を、鞭で切断し、特佐は歯ぎしりした。
「お、おのれぇ……。兵士たち、奴らを迎撃せよ! 私は司令部で指揮を執る!」
「と、特佐!」
副官が止める間もなく、特佐はビルの中に駆け込んだ。
そして副官が前方に目を向けると、そこには……。
「よし、いくぞ、ジャギ、カレン!」
「おうよ!」
「あいよ!」
ナノルたちのバギーがゲートの金網を吹き飛ばして突っ込み、それと同時にバギーからジャギとカレンが高く跳躍し、兵士たちに襲い掛かった!
「おーりゃりゃりゃっ!」
「ぶげりゃ!?」
「どべりゅ!!」
兵士たちの中に飛び込んだジャギが、ガンブレードを突きまくり、兵士たちを撃ち貫いていく。
「そらよっ!」
「ぴーぎゃー!」
「るるるーーー!!」
同じく飛び込んだカレンが、空中で南斗翡翠拳の回し蹴りを放ち、周囲の兵士たちを切り刻んでいった。
「おのれ……。だが、俺もSin-GOLANの者。ただではやら……」
そう言って戦闘態勢をとる副官だが、その彼の目の前にはバギーが迫っていた!
猛スピードで突っ込むバギーに跳ね飛ばされる副官。そこに。
「兵士さんの仇だよ!」
「くらえ!」
「ぶへ! ぶぎゃらは!?」
バギーから跳躍した二人の攻撃を受けた。ココのダーツを目に受け、とどめにナノルのダガーナイフの二刀流を受け……。
「……」
副官は立ったまま、そのまま息絶えた。
そしてそれを見て……。
「ひ、ひいぃぃぃ……!」
「こんな奴らに勝てるわけがねえぇぇぇ!」
「逃げろおぉぉぉ!!」
その場にいた兵士たちは恐慌を起こし、逃げ出した。自分たちより強い副官を倒した奴らに、誰が勝てるというのか。そんな相手に戦おうとするほど、彼らは勇敢ではなかったのである。
そして誰もいなくなった広場でジャギが言った。
「情けない奴らだぜ。俺の手下どもの爪の垢でも飲ませてやりたいくらいだ。さて、行くかい。奴らとのケリをつけによ」
「そうだな」
「うん!」
「あぁ、腕がなるね」
そして四人は司令部のあるビルに足を踏み入れたのだった。
ついに、Sin-GOLANの拠点に踏み込んだナノルたち!
だが、その支配者である准将には、恐るべき力が備わっていた!
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第弐拾話『従うべき悪しき理想はない! ただ悪を憎み、准将を討つ!!』
※次の更新は、2/23 13:00の予定です。お楽しみに!
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