北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました   作:ひいちゃ

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199X年世界は核の炎に包まれた!

海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。

だが、転生者は死滅していなかった!


(牙一族編)第弐話『天に輝く蒼き星! 出会いの果てに時代は動く(かもしれない)!』

 マミヤの村となった元舞鶴市。その一角の花畑で、二人の少女がくつろいでいる。

 

 一人はオレ……ナノルの同行者、謎の少女フラニーと、もう一人は、ケンシロウの連れ合い、リンの二人だ。とても仲よさそうで、まるで姉妹のようだ。その和やかな様子に、オレも頬が緩んでしまう。隣を見ると、ケンも控えめな笑顔を浮かべていた。

 

 でも、穏やかに見ながらも、オレは気がかりなことがあった。それは先の戦いで見たフラニーの反応。オレが牙一族に不意打ちを受けて倒れた時、彼女は何かひどく取り乱していた。もしかしたら、何か記憶のようなものを取り戻したのだろうか?

 

「なぁ……」

「なんだ?」

「確か……」

 

 そこまでケンに言って、そこでオレは先を続けるのをやめた。

 掲示板の連中から聞いたのだが、北斗神拳には、外伝で登場した記憶をよみがえらせる秘孔があるそうだ。確か、『忘神』という名前だったか。それを突いてもらえぱ、フラニーの記憶喪失も治るんじゃないかと思ったのだ。

 

 だけど、記憶を失うほどの出来事だというのは、かなり凄惨なことだったのに違いない。オレが倒れた時に錯乱したことも考えると、『忘神』で記憶を取り戻してもらったとしても、その記憶も思い出して心を傷つけてしまうのではないだろうか。下手したら、その場で精神崩壊してしまう可能性もある。

 

 その事件の記憶だけ忘れたままでいればいいんだけど、そんな都合の良い秘孔なんてないだろうしな……。

 

 忘れたまま、このままが一番いいのかもしれない。決して、フラニーとまだ旅していたいからじゃないぞ。

 

「いや……なんでもない。気にしないでくれ」

「そうか」

 

 そしてまた二人で、少女たちを見守る。その時、ケンの傍らに立っていたマミヤさんに、一人の村人がやってきて、彼女に何かを耳打ちした。マミヤさんの顔が真顔に変わる。

 

「ごめんなさい。ちょっと仕事に行ってくるわね」

「どこに行くんです?」

 

 オレがそう聞くと、マミヤさんは目が笑ってない微笑みを浮かべて教えてくれた。

 

「三人目の用心棒になりたいって人が門に来てるの。その人に会いにね。なんならあなた方も来る?」

 

 え、新しい用心棒? そ、それってまさか……。

 

* * * * *

 

「あなたが、新しい用心棒に志願した人? 名前は?」

「あぁ、俺はレイだ」

 

 やっぱり思った通りでした。この村に用心棒志願に来たのはレイでした。

 

 レイ、南斗水鳥拳の使い手。登場からユダとの決闘後に散る(果てるとは言いたくない)まで、ケンの相棒として活躍し、その『人のために生き、人のために死ぬ』という生き様からファンも多い男だ。

 

 しかしその顔つきたるや。リンが『人を助けるような人の目じゃない』、バットが『大悪党の面だ』と評したのもむべなるかな。妹のアイリを助け出すために汚いこともしながら、ここまで来たのだから当然かもしれんが。

 

 そして最大の問題は、オレの横に、アイリをさらった『胸に七つの傷の男』が立っているってことだ。もちろんそれはジャギによる冤罪なのだが……。いやいっそ、ここで『胸に七つの傷の男はジャギだ』と教えれば、あっさりそっちに行ったりするのか?

 

 オレがそう考えていると、レイがオレとケンに目を向けてきた。

 

「この女はお前の女か?」

 

 彼の問いに、二人と首を振る。

 

「いや」

「オレのでもないぜ」

 

 さらに言うと、フラニーもオレの女ではない。

 まぁ、マミヤさんはさすがにリーダー力がすごすぎて、彼女にできそうな気がしない……とはオレの胸の中にしまっておこう。

 

「そうか……もし女がいるのなら、他人にとられないようにすることだ」

「あぁ、ありがとよ」

 

 思わずそう礼を言ってしまった。

 なんたって、大切な妹のアイリをジャギに奪われ、彼女を取り戻すため、人以下にまで身をやつしたレイの言葉だけあって、重みがありすぎるんだ。

 

 礼を言われた相手は、怪訝そうな顔をして去っていった。

 

 まさかこの後に、あんなことがあろうとは……!

 

* * * * *

 

 一方そのころ、村の外の野営地。そこには村の様子をうかがう牙一族の姿があった。

 その中の一人、ケマダはレイが無事にかの村に潜りこめたのを見て舌なめずりをしていた。

 

「けけけ……これでうまくいくぞ……」

 

 そう、レイが用心棒としてマミヤの村に向かったのは、彼らの策略だったのだ。

 全ては数日前にさかのぼる。

 その顔が気に入らないからとレイを襲い、逆に殲滅されかけた彼らは、途端に彼に謝罪し、さらに『お前の探している人についての情報を持ってる』と嘘をついて彼を引き込み、埋伏の毒として送り込んだのだ。

 

 自らの勝利を(浅はかにも)確信したケマダは、背後の仲間たちに言う。

 

「兄弟ども! 戦う準備だー!」

 

* * * * *

 

 その後、オレがフラニーと村の巡回をしているときにそれは起こった。

 

 水浴び場の近くに来た時、そこからマミヤさんの叫び声が聞こえてきたのだ。も、もしかして!?

 

 オレはフラニーと、水浴び場に走っていった。

 

* * * * *

 

 そこにあったのは、原作で見たことのある光景であった。

 

 全裸のマミヤさん、リンが驚愕の表情で立っていて、彼女たちの前に、こちらに背を向けたレイがいた。足元に落ちているのは、マミヤが投げつけたヨーヨーの残骸だろう。

 

 それにしても、マミヤさん、とってもいいスタイルだよなぁ。胸も大きいし、ウェストもくびれてて……。

 そんな風に見とれてたオレは、マミヤさんが怒った顔でもう一つのヨーヨーを手に持ったことに気づかなかった。

 

「あなたも何凝視してるのっ!!」

「はうっ!!」

「ああっ、ナノル様っ!」

 

 オレめがけてヨーヨーが飛んできた! 大きくのけぞったおかげで、俺の額に小さな傷ができた程度で済んだが、そこから……正確にはフラニーが悲鳴を出したことから事態が急転したのだ!

 

「なっ、アイリ!?」

 

 その声にこちらを振り向いたレイの瞳が驚きに見開かれる。というかオレもちょっとびっくりだ。まさかとは思ったけど、まさかフラニーがレイの妹、アイリだったとは!

 しかし、フラニー……もといアイリのほうは、やはり記憶が失われているからか、名前を呼ばれてもきょとんとしているだけだった。

 

「え、あなたは……?」

 

 その様子を見て、レイの表情に衝撃が浮かんだかと思うと、それは憎悪の表情に変わり、オレをにらみつけてくる。

 

「貴様……貴様がアイリを! 許さんっ!!」

 

 どうやら、オレがアイリを連れ去った犯人だと勘違いされたらしい。レイがオレに襲い掛かってきた!!

 

「ち、ちょっと待ってくれって!」

「問答無用!」

 

 レイの鋭い手刀が襲い掛かってくる! オレはそれを、とっさに抜いたダガーではじいた。しかし、レイはさらにその手刀を薙ぎ払ってくる!

 

「頼む、オレの話を聞いてくれ!」

「えーい、黙れ!!」

 

 オレがそう説得するも、レイは頭に血が上っているのか、聞く耳持たず、激しい攻撃を仕掛けてくる。

 そしてその手刀が俺の服を切り裂いて、胸があらわになる。それでオレが七つの傷の男ではないとわかるも……。

 

「貴様、何らかの術で傷を消したか! 姑息な!!」

「そんなわけないって!」

 

 それからも激しい戦いが続いた。防御に専念したおかげで、なんとかレイの技にやられることはなく戦えている。きっとオレが守りに集中してること……そして今のレイが怒りと憎しみに焼かれているからだろう。彼の拳、南斗水鳥拳は、誰かのために戦う時にその威力を完全に発揮するという。つまり、今の彼はその力を十分に発揮できない状態なのだ。

 だからこそ、なんとかオレでもその攻撃の軌道を見切り、対応することができているのだ。そして、彼と対等の実力の持ち主なら、それを止めることも簡単に。

 

 ガシッ。

 

「!?」

 

 気が付くと、ケンがレイの手刀を止めていた。

 

「なぜ止める!?」

「冷静になれ。お前には彼が、そんな悪人に見えるのか?」

 

 そうレイを諭すケンシロウ。そこにアイリが助け船を出してくれる。

 

「その通りです。ナノル様は私の恩人です。野盗に捕らえられていた時、この方がその野盗を退治して、私を助け出してくれたんです。それからも私と同行してくれて……」

 

 その告白を聞いて、レイの表情に戸惑いが浮かんでいた。

 

「どうやら、過去に何かあったらしくてな。記憶を失ってしまってるんだ。そんな子を一人で荒野に放り出すのもなんだしな。なのでこうして一緒に旅してたんだよ」

「そ、そうだったのか……すまなかった……」

「気にすんなって。誤解が解けたんだから、どうってことないさ」

 

 オレがそう言って手を差し出すと、レイは少し戸惑った後に、その手を握り返してくれた。あんな大変なことがあったが、こうして和解できて何よりだ。

 

 そこに!

 

「牙一族だ! 牙一族が攻めてきたぞ!!」

 

 村人が、牙一族の襲来を告げる声をあげた!

 オレとケン、そしてレイはすぐに声のあがったほうに走っていった。

 

* * * * *

 

 村の入り口は、牙一族による暴力のるつぼとなっていた。

 ブルドーザーで門を破壊し、そこからなだれ込んだ奴らが、抵抗を続ける人々を虐殺している。入口近くにある家々は、奴らによって略奪を受けていた。

 

「あーたたたたっ!!」

 

 その奴らの一人に、ケンの拳が炸裂した! 吹き飛ばされたその身体が次の瞬間には破裂する。

 さらに繰り出した拳の連打が、他の牙一族たちをまとめて吹き飛ばし、ひでぶ!させた。

 

「そりゃあ!!」

 

 別の牙一族に、オレのダガーが振り下ろされる! 闘気が宿った刃は、その野獣を縦に切り裂いた!

 そいつらが絶命したのを確認することなく、オレは他の獲物にダガーナイフの斬撃を放つ! 雑魚相手だったら、何人かかろうと負ける気はしないぜ!

 

 レイだって負けてはいない!

 

「ふぅーーー。シャオッ!!」

 

 鋭く美しい南斗水鳥拳が前方の二人の牙一族をなます斬りにした。まだアイリの記憶が戻らないとはいえ、彼女と再会できたことで、これまでよりも拳の威力が上がっている。水鳥拳本来の力が戻ってきている、といったほうがいいだろうか。

 

 そして戦いがひと段落すると、オレたちの周囲の牙一族は全滅していた。その向こうの小柄の牙一族が驚愕の表情でオレたち……正確にいえばレイのほうを見る。

 

「な、何しやがる、レイ! 裏切る気か!」

 

 だがその牙一族に、レイは言い放った。

 

「悪いな。だが俺はこの町で大切なものを見つけた! それをお前たちに蹂躙させはしない!!」

 

 そう言って一歩力強く歩みだすレイ。その姿に牙一族の奴らは恐れおののいた。これ以上戦えば全滅するだけだと野生の勘で感じたのだろう。

 

「お、覚えてやがれ!!」

 

 そう捨て台詞を吐いて、小柄が後ろを向いて走り出す。そして、残りの牙一族もそのまま走り去っていった。

 

* * * * *

 

 戦いを終えたオレたちの元に、マミヤさんとフラニー……アイリが駆け寄ってくる。そして、水の入ったカップを手渡してくれた。

 

「はい、どうぞ、ナノル様」

「あぁ、サンキュー、フラニー……ああいや、アイリと呼んだほうがいいかな? 身内も見つかったことだし」

「いいえ。今までと変わらず、フラニーと呼んでください。あなたがつけてくれた名前ですから」

「そうか、ありがとな」

 

 そう会話を交わすオレたちを、レイが温かい目で見ていた。そしてオレたちに歩み寄ると、胸元から赤く染まったケープを手渡した。

 確かこれは……レイがフラニーの結婚式のために用意したものじゃないか。これを胸元に入れて戦っているうちに、その返り血で赤く染まったのだとか。

 

「レイ様……これは?」

「フラニー、遅くなったし、赤く染まってしまってすまないが、お前の結婚式のために用意したものだ。もしお前に好きな人ができたら、これを身に着けて式に出るがいい」

「え……」

 

 オレは思わず声を上げてしまった。それってもしかして、オレをフラニーの婿さん候補として認めてくれてるってことですか!?

 

 そう動揺しているオレを見て、レイが苦笑を浮かべる。

 

「誰も、お前と結婚しろとは言っていない」

「そ、そうか、そうだよな……」

 

 そう言って、頬が赤くなってしまうオレ。

 

 周囲から笑い声があふれたのだった。

 

 




* 次回予告 *

意外な人物と再会を果たしたナノル! だがその余韻に浸る間もなく、牙一族の魔の手は、マミヤの村に忍び寄っていた!

非道なる奴らに、ケンの北斗神拳、レイの南斗水鳥拳、そしてナノルのダガーが炸裂する!

次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』

第参話『敵を斬り裂け! 非道なる奴らに鎮魂歌はない』

※次回は、10/27 19:00更新の予定です。お楽しみに!

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