北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
その名を転生者!
天に連なる七つの星のもと、地に散らばった転生者たちを巡って、悲劇は繰り返される……!
* * * * *
ナノルの不安の通り、既にマミヤの村は戦火に包まれていた!
その中、ジャギは過去の罪と向き合い、ナノルとココは拳王侵攻隊の手練れと激突する!
そして彼らを倒したのもつかの間、ついに拳王が姿を現した!!
「うぬらの技、南斗水鳥拳と、無名のナイフ術、楽しませてもらったぞ」
その声とともに現れる人物。それは、巨大な馬に乗った、これまた巨大な人物だった。
独特な形の兜をかぶり、漆黒のマントを身にまとっている。
オレはこいつを知っている。現世ではなく前世で。
北斗の拳のラオウ編までのラスボス、ケンシロウの兄にして、無敵の世紀末覇王。
そう、拳王軍の首領、拳王ことラオウがついに現れたのだ!
その威圧に、オレはケンシロウを前にしたモヒカンたちの気持ちがわかるような気がした。
この強大さの前では、モヒカンどもに無双してきたオレでさえも、そのモヒカンどものようなものだ。
だが、そんなラオウを前にしても、レイは少し気圧されながらも、戦う気が満々でいる。
「そうか。ならお前にも、我が拳の神髄を見せてやろう!」
そう言って構えるレイ。だがその彼に、リンがすがりついた。
「やめて、レイ! その人とは戦わないで!」
「リン?」
リンに視線を向けるレイに、彼女が訴えかける。
「わからない。わからないけど、あの人とは戦ったらいけないって気がするの! お願い!」
だがレイは、そのリンの頭を軽くなでて言った。
「心配するな。俺は戦うことでしか、お前たちに借りを返せない男だ」
彼はそう言って構える。その彼に、ラオウは馬上のまま問うた。
「戦う前に一つ聞こう。お前たちは北斗七星の脇に輝く蒼星を見たことがあるか?」
ラオウが聞いたのは、北斗の拳の読者なら誰もが知っている、死兆星のことだ。
それを見た者に、近いうちに死をもたらす星。その星が落ちた時、死ぬとも。
ラオウはこれを問いただし、見た者とのみ戦うという。
不幸か幸いか、オレは今まで死兆星は見たことがなかった。
「ないぜ」
あとはレイだが……。
「俺もない。それがどうした」
よかった……レイも死兆星を見ていなかったのか……。オレは心の中で胸をなでおろした。とはいえ、やはり彼とラオウを戦わせるわけにはいかないが。
ラオウの力は強大だ。もしレイがラオウに挑めば、たとえ彼が死兆星を見ていなくても、彼はラオウに敗れ、命を散らしてしまうかもしれない。
幸いにも、その答えを確認したラオウは、その愛馬、黒王に足で合図すると、馬ごとくるりとオレたちに背を向けた。
「そうか。なら今、俺とお前たちとは戦う時ではないということだ」
「軍ごと引き上げるのか?」
「引き上げるのではない。今はこの村を攻める時ではないというだけにすぎん。時が来た時にこそ、再びこの村を我がものにしてくれよう」
そう言って去って行こうとするラオウだが、レイはおさまらないようだ。
「どこへ行く、逃げるのか!」
「逃げるのではない。お前たちにしばしの生を与えてやるだけだ。次に俺が現れる時まで、その少ない生をありがたく味わうがいい」
「なんだと!?」
そこでオレがレイの肩をつかむ。原作を知っているオレは、彼をこのまま戦わせるわけにはいかなかったのだ。
ここで彼が戦えば、原作と同じように……。
「なぜ止める!?」
「戦わずに引き上げると言ってくれているんだ。ここはこのまま引き揚げさせるべきだ」
「なんだと!? 臆したか!?」
オレとレイが口論している間にも、ラオウはゆっくりと立ち去ろうとしている。このままいけば、村は無事解放されたかもしれない。
だがオレはここで、それを台無しにする失敗の一言を発してしまった!
「いや違う。オレは……予知夢で見たんだ。お前がラオウに敗れ、残り三日の命にされる秘孔を突かれて敗北する様を。オレはお前に、その夢の通りになってほしくないんだ」
「!?」
その時、ラオウが突然、その歩みを止めた!
* * * * *
「いや違う。オレは……予知夢で見たんだ。お前がラオウに敗れ、残り三日の命にされる秘孔を突かれて敗北する様を。オレはお前に、その夢の通りになってほしくないんだ」
「!?」
それを聞いたとたん、ラオウは足を止めた。
ただの戯言であれば、「たかがザコの世迷言」と一蹴していただろう。だが、ナノルのまるでこの後起こることがわかっているかのような言葉は、彼にある存在のことを思い起こさせたのだ。
最近、この世紀末の世に現れた、自らの覇業の障害となりうる存在……テンセイシャ。
目の前のナノルがそのテンセイシャだという可能性に思い至った時、ラオウはこの場から立ち去る選択肢を捨てた。このナノルという者だけは、今この場で始末しておかなければならない、と。
そして、方向転換し、改めて向きなおって言った。
「気が変わった。そのナイフの戦士よ。うぬだけはなんとしても、今この場で打ち砕いてくれよう!!」
* * * * *
なんてこった! なんとか戦いを回避できそうだと思ったが、それから一転、ラオウと戦うことになってしまった!
「やはりこうなったか。ナノル、こうなったら俺も戦うぞ!」
レイはそう言ってくれるが、オレはそれに対して首を振った。それでもレイを戦わせるわけにはいかない。
「いや、ケンと同じように、お前だってこの時代に必要な男だ。ここで、お前を巻き込んで死なせるわけにはいかない」
「だが……」
「心配するな。オレはまだ命は惜しいからな。無駄に命を捨てるような戦いはしないさ」
そしてラオウに向き直り、構えを取る。
「別れのあいさつはすんだか? いくぞっ!! はあああっっ!!」
ラオウが、掌底を放った! そこから闘気の衝撃が放たれる! オレはそれを横に飛んでかわす。
オレはラオウの攻撃をかわすことにのみ専念する。オレとラオウは蟻とゾウ同然。まともに戦って勝てるとは思えない。
ゆえにオレは、ケンが駆け付けるまでの時間稼ぎにのみ専念する。それだったらオレでもできるからな。
ラオウが放つ闘気を、ある時は横に飛んでかわし、またある時は奴に向けて飛ばないように気をつけながら、上空に飛んでかわしていく。
回避に集中しているおかげで、なんとか奴の攻撃を紙一重ながらもかわすことができている。
しかし……!
「もらった、そこだぁ!!」
オレの動きを読んだラオウが、オレが飛んで交わした先を狙って闘気を放つ体制をとった! しまった、これではかわせねぇ!!
と、そこに!
* * * * *
「!! ふんっ!!」
「きゃっ!」
やられる!と思ったその直後、何かに気づいたラオウが、別の方向に闘気を放った! それを喰らったのか、聞いたことがある女性の悲鳴が。
そこにいたのは……。
「カレン!」
「くっ……さすが拳王ね……。かわすのが遅れていたか、全力で避けていなければ直撃喰らって、全身の骨を砕かれてたわ……」
そう、カレンだった。抑えている左腕から血が少し流れ出ている。闘気がかすめたのだろう。
「カレン!」
「レイ様、無事だったのですね、よかった……」
レイに名前を呼ばれて、カレンがいつもの彼女らしくない表情をして安堵していた。あのー、カレンさん? そんな恋する乙女みたいな表情している場合ではないと思うのですが。そしてそこに。
「兄さん、無事ですか!?」
「フラニー、記憶が戻ったのか! ……!」
駆け付けたフラニーに、レイが安堵したような表情を浮かべたものの、その脇にいた人物……ジャギを見て、その表情がすぐに激しいものに変化する。
「貴様、親父とお袋を抹殺し、アイリをさらった……!」
「待って、兄さん! ジャギさんは悲しい出来事にあって、改心したの! もう彼はかつての極悪人ではないんです!」
ジャギを討とうとするレイ、そのレイを止めようとしているアイリという修羅場。その横ではオレとラオウが絶賛バトル中なのですが。
「修羅場を見ている場合じゃないね!」
「あぁ。俺たちも手を貸すぜ! 水鳥拳の奴にやられるのはその後だ!」
「それは助かるんだが、二人とも、死兆星は見たことあるのか!? 北斗七星の脇に輝く蒼星は!?」
もし見ていたら、彼らを戦わせるわけにはいかない。
「心配するな。俺は一度も見たことねぇよ」
「私もさ! そんな星、見たことも知ったこともないよ」
「そうか……なら頼んだ。くれぐれも奴の攻撃をかわすことに専念してくれ。ケンたちが駆け付けるまで時間を稼ぐんだ!」
そして三人で戦闘に入る。ラオウの拳や闘気をかわしながら、隙を見て、一撃離脱で攻撃を仕掛ける。二人とも、俺以上の使い手だけあって、ラオウの攻撃をうまくかわせている。この調子でいけば、なんとか時間を稼げるか……?
だがそれは甘かった!
* * * * *
「ふん……この拳王を甘くみるな!!」
なんとラオウは、自分を中心にして、周囲に闘気を炸裂させた! その衝撃波で、ジャギとカレンが吹き飛ばされる!! オレはなんとか真上に跳躍してかわすことができたが……。
「ジャギ、カレン!」
「いでぇ……けど、なんとか生きてる……」
「私もさ……でも、済まないが、これが限界だね……後は任せるよ……」
闘気のダメージがかなりのものだったのか、二人とも戦うどころか、立ち上がることもできないようだ。でも、そのおかげあって、かなりの時間を稼ぐことができたようだ。本当に感謝だ。
そして、その時間稼ぎは無駄ではなかったようだ。知っている者の気配が近づいてくるのが感じられる……これはケン一行だ。
それをラオウも感じ取っていたらしい。
「時間をかけすぎたか……。ならばケンシロウが来るまでにお前を全力をもって葬るのみ!!」
そう叫び、ラオウはこっちに向けて黒王を突進させた! その身体からは闘気があふれ出している。
ここにいたり、オレの頭には三つの選択肢が浮かび上がった。
・受け止める→無理! 黒王に潰されるだけ!
・左右によける→かわしたところに、さっきのような闘気の炸裂を喰らう。これだけの至近距離となれば即死は免れない
・飛んで避ける→落下してくるところに、「お前は死兆星を見た男だ!!」と新血愁を突かれる
……どの選択肢でもBAD ENDじゃねぇか! だがそう考えていくうちに、ラオウは迫ってくる。どうにかしなくては……。
どれも最悪な選択肢だが、それでも三番目の選択肢ならやりようによっては……。いちかばちかだ!
短い時間の間に、そこまで考えをまとめたオレは、意を決して上空に跳躍して、突進をかわした!
そして、着ていた上着を目くらまし代わりにラオウの眼前に投げつけてやった! それはうまく広がって、奴の視界をふさいでくれた!
「うぬ、こざかしいまねを!」
さらに、ダガーを近くの木に放ち、紐がうまく枝に巻き付いてくれたところで、その紐を引き寄せるようにすると同時に、サウザーがやっていたように宙を蹴り、少しでも落下の軌道をずらす!
そして、なんとか当初の軌道からそれたかどうかというところで……上着が破れ、ラオウの指が迫ってきた!
そして、ついに……奴の巨大な指が、オレの胸に突き刺さった!
「がはっ……!」
それと、ケンとトキ、バット、マミヤが駆け付けたのはほぼ同時だった。
「来たか、ケンシロウ!」
「ラオウ!!」
そしてラオウは、オレの身体をそのままケンに投げつけた。
飛ばされていく中、薄れていく意識の中、見上げた空には、死兆星は……かが……
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* 次回予告 *<テレッテー!!
目を覚まさぬナノルのために、薬の町へと向かうココとマミヤ。
しかしそこは、犬が全てを支配する狂気の町!!
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第弐拾四話『狂気の魔都! メディスンシティーの狂宴が今開かれる!!』
「好きなトラックなのだろう? ならばそのトラックと運命を共にしたらどうだ」
※次の更新は、3/23 12:00の予定です。お楽しみに!
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