北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。
だが、転生者は死滅していなかった!
* * * * *
村を訪れた男、それは南斗水鳥拳の使い手、レイであった!
ナノルはひょんなことから、レイの妹、アイリをさらった男と誤解され戦うことになってしまうが、ケンと、実はアイリだったフラニーの説得のおかげもあり、和解することができた。
そこに再び牙一族が襲来する! ナノルたちは、アイリと再会できたことにより、こちらの味方になってくれたレイとともに、その襲撃を退けたのであった!
岩山の奥、そこに牙一族の集落がある。
その集落の一番奥にある粗雑に入口を飾り立てられた洞窟、そこが彼らの長の居城である。
その中の巨大な椅子に座する牙一族の王、牙大王は、そこでケマダから報告を受けた。
「な、なんだと!?」
「あ、あぁ。あの村の悪しき悪魔のような三人の用心棒どもに、皆殺しに……」
その報告を受けた牙大王は目から滝のような涙を流し始めた。周囲の牙一族たちも、轟音のような泣き声を発している。
「許さん、許さんぞぉ、用心棒どもおおぉぉ!! ケマダ、先ほどより多くの弟たちを引き連れていけ! 必ず用心棒どもを血祭にあげるのだ!!」
「おう! 必ず、用心棒どもを八つ裂きにしてくるぜ!」
そう言って居城を出て行こうとするケマダ。その彼を、牙大王が呼び止めた。
「待て!」
「なんだ、親父?」
「ただ八つ裂きにするだけでは飽き足らん! その用心棒どもに身内がいないかも並行して調べ上げろ!」
その言葉に、ケマダは得心がいったようにうなずいた。
「その身内を人質にするんだな、わかったぜ!」
そして改めて、ケマダは洞くつを出て行った。
* * * * *
オレとアイリ……もといフラニー、そしてケンとレイ、バットの三人は、村の中をはしゃいで歩き回るリンを微笑ましく見守っていた。
そんな中、レイがオレに問いかけてくる。
「それで、アイリ……いや、フラニーの記憶を取り戻す術はないのか?」
やはり、妹が大事なレイとしては、妹のフラニーのことがとても気にかかるのだろう。だがオレは首を横に振った。そして、フラニーに聞こえないように小声で返す。
「あるにはあるんだが、それで解決とはいかないんだ。記憶を失ったってことは、かなり凄惨な目にあったってことだからな……。その記憶まで取り戻したら彼女の精神が持ちこたえられないかもしれない。せめて、その記憶だけ忘れたままでいられればいいんだが、そんな都合のいい秘孔は……ないよな?」
「うむ」
オレの問いに、ケンも少し沈痛さをにじませた表情でうなずいた。
「そうか……」
ケンの答えに、レイも表情を沈ませる。
だけど、この状況は良いものとは思えない。ふとしたことで記憶を取り戻す可能性もあるわけだからな。ラオウとの最初の戦いの前後のような心の強さを持っていれば多分大丈夫かもしれないが、今のフラニーにそこまでの強さがあるか……。
と、そこで。
「ん、この匂い、なんだろう?」
リンがそうつぶやいた。確かに、甘く香ばしいながらも、懐かしい匂いがどこからか流れてくる。
オレたちはその匂いに導かれるように、その匂いが流れてくるほうに歩いていった。
* * * * *
そこは長老の家。そこでは、長老がケーキを焼き、15か16ぐらいの女の子がそれを手伝っているところだった。
「長老、そのケーキ、どうしたんだい?」
オレがそう聞くと、長老が穏やかな笑みを浮かべてこたえた。
「おぉ、あなた方ですか。今日はマミヤさんの誕生日なのでな。奴らの襲撃もここ数日はなく、余裕があるのでな」
その後を女の子が続ける。
「それで、その誕生日の祝いに、ケーキを焼こうってことになったんだよ!」
なるほど、そういうことか。そしてそこでオレはあることに気が付いた。
ケーキの匂い、懐かしい匂いがすると評したが、それはオレにとって、さらに懐かしい印象があるものだったのだ。
確かこの匂いは、あいつが得意としていた……。
「って、はは、まさかな……」
思わずオレがそうつぶやくと、女の子はそれを聞いて目を丸くした。何かあったのか?
そしておずおずと聞いてきた。
「ね、ねぇ、もしかしてだけど……間違ってたらごめんなさいだけど……ナオ
「え?」
ナオ兄……それはあいつが、オレを呼ぶ時の呼び名だ。も、もしかして……?
「あぁ、そうだけど、もしかしてお前は……由紀だったりするか?」
「うん、そうだよ! あぁ、まさかナオ兄とこんなところで再会するなんて!」
それはオレもびっくりだ。まさか由紀……オレの前世での妹とこんなところで再会するとは。
なおこの超展開に、長老はもちろん、レイやバット、フラニー、さらにはあのケンまできょとんとしていたりするわけですが。
あれ? でも、こいつがここに転生したってことは、前世で死んだってことなわけで……。
「だけどお前、ここにいるってことは、あれから死んでしまったのか?」
「うん……。ナオ兄が死んだ2年後に、子供を暴走車からかばって……」
「そうか……」
オレが前世で死んだのが、オレが25、由紀が20のころ、ということは、22で死んだってことか……。
それは……。
「22年という短い命だったのか……。オレもだけど幸薄かったな」
「うん。だけど、前の世界に未練がないといえば嘘になるけど、こうしてまたナオ兄と会えたんだもん。よかったって思うよ」
彼女の話によれば、彼女のチートは、軽業師以上の運動能力だそうだ。(肉体の屈強さは、長い間食事をとらなくても耐えられるのを除けばマミヤさんクラスだそうだ)彼女はそれと、転生前から得意だったダーツを武器に、基本的には戦いを避けながら、やむを得ない時には枯れ木を削って作ったダーツで切り抜けながら生き抜き、この村まで流れ着いたという。
……とそうだ。ケンたちにも紹介しておかないとな。
「あぁ、紹介が遅れてごめんな。こいつはオレの妹の……えぇと」
「うん、この世界ではココって名乗ってるよ」
「ココっていうんだ。仲良くしてやってくれ。えーと、ココ。彼らは……」
そして自己紹介しあうオレたち。和やかに時が進む。しかしそこに!
* * * * *
和やかな空気に包まれた長老の家。そこに、せわしない足音とともに、マミヤさんが入ってきた!
「コウを、コウを知りませんか!?」
「コウ? はて、わしは見ておらぬぞ?」
コウといえば、確かマミヤさんの弟だよな。そういえば……。
そこに、レイが口を開いた。
「コウという名前かどうかは知らないが、若い男がバイクに乗って村を出ていくのを見たな」
「そんな……!」
やはりか……。だが今なら急げば間に合うかもしれない! 助けられるものなら助けたいからな!
「オレが連れ戻しに行ってくる! フラニーはここにいてくれ!」
「は、はい……」
「俺も行こう」
「ナノル、ケン……!」
そしてオレはバギーに乗って村の外に飛び出していった。そのバギーにケンも飛び乗る。
* * * * *
そして車を走らせること数分。
思った通りだった。コウらしき若い男が、牙一族に囲まれている。見ると、全身は傷だらけだが、まだ生命はある模様。
オレはケンとともにジャンプして車から飛び降りると、車をそのまま一団のほうに突っ込ませた。
「うおっ!?」
「な、なんだ!?」
そして車の突進で隊列を乱した奴らに、そのまま上空から襲い掛かる!
「やらせねーよ!」
「ほーあたたたたっ!!」
オレはダガーナイフで、ケンはお得意の北斗神拳で周囲の牙一族を蹴散らしていく。
しかし、無双しているわけにもいかない。谷のほうから増援が接近しているのだ。本当に奴ら、雑魚どもが無尽蔵だな……。
「ケン、こうしててもラチがあかない! コウをバギーに乗せてズラかるとしようぜ!」
「うむ」
そしてもうひと踏ん張り。周囲の奴らを蹴散らして、数が減ったところでバギーに飛び乗る。そこでコウを担いだケンも飛び乗り、彼をシートに寝かせたところでバギーを走らせた。
だがオレは気づいていなかった。牙一族の奴らの一人が槍を構えたことに。
* * * * *
ケマダは走り去っていくバギーを悔しそうに見送っていたが、そのまま見過ごすことはなかった。槍を構え、彼らのバギーに狙いを定めたのだ。
そして言い放つ。
「見せしめに捕らえるのは失敗したがなぁ……このままじゃ俺の気がすまねぇんだよおおぉぉぉ!!」
そして全力でその槍を投げつけた!! 槍はすさまじい勢いで、バギーに迫る!!
* * * * *
もう少しで奴らが見えなくなるかどうかというころ。何かが突き刺さる音とともに、「がはっ!」という吐血する声。ま、まさか……!?
後ろを振り向くと……なんということだ! 後ろのシートに乗ったコウの身体を槍が貫いていた!
どう見ても致命傷……! 助かる見込みはない……。くそ、油断しちまった……ちきしょうめ!
「くそっ……これじゃ飛ばしても、村までは……。せめて村までは生きて連れ帰りたいのに……!」
「俺に任せろ……」
「ケン……?」
俺にそういうと、ケンはコウの鎖骨のくぼみに親指を当て……。
「……!」
どうやらケンがコウの秘孔を押したようだ。その効果か、彼の表情から苦痛が消えていく。
「痛みと出血を軽減する秘孔、亜血愁を押した。これで村まではもつだろう。それでも、彼は助からんが……」
「そうか……。でも、村まで生きて帰れるだけマシだよ。やっぱり安心できるところで死にたいだろうからな。くそ、奴らめ……!」
原作とは違い、姉であるマミヤさんに看取られることはできるだろうが、それは何の慰めにもならない……。
* * * * *
そして夕方、オレたちの乗ったバギーはようやく、村の入り口にたどり着いた。
オレたちの元にみんなが駆け寄ってくる。
「コウ……」
弟の元に駆け寄るマミヤさん。だがリーダーとしての立場からか、彼女はひざまずいたり、抱き上げたりはしなかった。
「姉さん……ごめん……。勝手に村を飛び出したりして……でも、これを届けたかったからさ……」
そう言ってコウは、胸元から何かを取り出した。それは野イチゴの実だった。
テレビ版と同じように、彼は姉の誕生日のケーキに使うため、これをとりにいっていたのだ。
「コウ……」
「姉さん……遅くなったけど、誕生日……おめ……で……!」
そして彼は目を閉じ、二度と開くことはなかった。
「コウ様……」
「こんなことって……」
その場にいる人々はすべて、悲しみに涙を流し、嘆きの声を上げ続けた。
その中でオレは、マミヤさんが涙も泣き声も出さず、ただ立ったままだったのが印象に残った。彼女の背中が強い悲しみを語っているのがわかったからだ。
そしてその悲しみはオレ……いや、三人の男に行動を促すには十分であった。
* * * * *
その夜、オレはバギーで村を出発した。
何の罪もないコウを惨殺し、マミヤさんを哀しみに沈ませた牙一族。奴らをこのままにしてはおけない! その想いを抱いてのことだ。
そして、オレと同じ思いを持った男があと二人。
入口に、ケンとレイの二人が立っていたのだ。その表情からして、オレと同じ思いを抱いているのは明らかだった。
「あんたら……」
「……」
「三人とも、女の涙に弱いのは同じらしいな」
そう言って、レイが苦笑を浮かべる。ケンは沈黙を保ったままだ。
「らしいな。オレたち三人、似たもの同志ってことか」
そう言ってオレは、あごを動かしてバギーに乗るよう促した。
* * * * *
そしてオレたちは、奴らの野営地にやってきた!
これから村を襲うつもりだったのか、奴らは既に戦闘準備を整えていた。だがそんなのはオレたちには関係ない。こいつらを壊滅させてやる。それだけだ。
「き、貴様ら! 何をしに来た!」
小柄の牙一族の言葉にも、オレたちは動じない。
「悪党どもに教えてやることはない」
そう言いながら、ケンが指をボキボキと鳴らす。
「お前たちは死んでいく身。聞いても意味のないことだろう」
レイが流れるような動きで構えを取りながら言い放つ。
そしてオレは腰のホルダーからダガーナイフを抜いた。
「知りたきゃ、あの世で胸に手を当てて考えるんだな」
そして三人とも同時に戦闘態勢をとる。いや、オレは二人より少し遅れたが。
「しゃらくせぇ、やっちまえ!」
小柄の号令とともに、牙一族たちが襲い掛かってきた! さぁ、来るならきやがれ!
「せやっ!」
「びぎゃっ!」
左手のダガーを投げつけると同時に駆け出す。ダガーは見事、一人の額に突き刺さり、一撃でとどめを刺した。そしてそいつの目前に迫ったと同時に、そのダガーを引き抜き……。
「うおおぉーーー!!」
「ていっ! おりゃっ!」
「ころせおっ!!」
背後から迫ってきた男に二刀流のダガーをお見舞いした!
「おーあーたたたたっ!!」
ケンは拳や蹴りを炸裂させ、迫りくる牙一族たちを次々と打ち倒していく。そして。
「北斗四方斬!!」
その言葉とともに、周囲の牙一族たちがはじけ飛んでいった。
「くたばりやが……なっ!?」
「ひょーおぉ……!」
四方からレイに牙一族が襲い掛かってくる。だが彼は、奴らの一斉攻撃をジャンプしてかわし……。
「シャウ!!」
手刀一閃! そいつらを逆に輪切りにした!
* * * * *
そして激闘の末、気が付くと、残るは小柄と仲間たち8人のみとなっていた。
「お、おのれ……ならばオレたちの奥義を見せてやる! 喰らえ!!」
そして8人が一斉にジャンプする!
「崋山群狼拳!」
まるで群れで襲い掛かる狼のように飛び掛かってきた!
でも、やはりオレたちは動じない。
「……」
「ふん、狼だけに群れるのは得意だな」
「まったくだぜ。ノーザン群狼拳を見習ってこいってんだ」
「は?」
聞き返してきたのはレイだ。それを聞き流して、オレは飛び掛かってきた一人目にダガーを放ち、仕留めてやった。そこに別の奴が飛び掛かってくるも……。
「シャオッ!!」
レイの南斗水鳥拳がそいつをなますにした! さらにレイは跳躍し、上空から飛び掛かってきた二人に水鳥拳を炸裂させる!
「べーしくっ!!」
「こぼるっ!!」
その二人も見事に輪切りにスライスされた。そしてケンも負けてはいない!
「アチョッ!! アータッ!」
蹴りや拳で襲い掛かってくる二人を撃墜していく。着地した彼らがはじけ飛んだのは言うまでもない。
結局、崋山群狼拳とやらも、オレたちの前では大した効果はなかった。本当にこれならノーザン群狼拳のほうが強いぜ。
そしてオレたちは残った二人へと一歩を踏み出す。
小柄が言ってくる。
「お、俺をやったら、親父が黙っていないぞ! い、いいのかよー!?」
「安心してやられろ。あーたたたっ!」
そしてケンの北斗百裂拳が小柄にヒットした。そして。
「ほあたっ!!」
「ぶほばっ!!」
とどめの一撃で吹き飛ばされる。
「お前の命はあと一分だ。その一分の間、己の罪深さを思い知るがいい」
「の、残り一分の命なんていやだ~! お、親父~!!」
小柄はそう言って、もう一人と共に逃げ出すも……。
「ならば今死ね!」
「とーほっ!!」
レイによって細切れにされたのだった。だが、もう一人はその間にすさまじい跳躍で逃げてしまったが……。
そしてオレは、小柄の奴らの死骸から、コウの形見だと思われるペンダントを拾い上げた。
* * * * *
そしてオレたちは村に戻ってきた。
入口ではマミヤさんがずっと立って待っていた。その横には、フラニーと由紀……いや、ココ、そしてリンとバット、長老の姿もある。
その彼女に、オレはそっとペンダントを手渡した。
「ほら、弟さんの形見だ」
「……っ、ありがとう……」
マミヤさんはペンダントを受け取ると、大事そうに胸に押し当てた。その瞳から、やっと涙が一筋こぼれ落ちる。
「さぁ、改めてケーキを食べましょう。コウの命を懸けての願い、無駄にするわけにはいきませんからな」
「はい……」
そう言って、長老を先頭に、オレたちは村の中に戻っていった。
マミヤさんとコウの件を見て何か思うことがあったのか、ココがオレの腕にしがみついてくる。それにオレは、少し哀しげな笑顔を向けて、一緒に歩いていったのだった。
そしてその後のバースデーパーティは、哀しくも、穏やかな宴となったのだった。
* * * * *
だが彼らは気づいていない。ナノルとココが仲睦まじくしているところを、陰から何者かがのぞいていたこと、その男が邪悪な笑みを浮かべていたことを……。
* 次回予告 *
ついに牙一族のボス、牙大王が動き出した! 息子たちに号令を発し、ナノルたちとの全面対決に構える!
その中、牙一族討伐のために旅立ったナノルたちの前に現れた、牙一族のギバラ率いる軍団!
その表情の中に、ナノルたちが見たものとは!?
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第四話『緒戦開幕! 野獣の涙に人の心を見た!』
「殺したさ……今までの獣の心に満ちたお前をな」
※次の更新は、11/3 19:00の予定です。お楽しみに!
* * * * *
ここで新キャラの紹介を。
【 ココ 】
ナノルの前世での妹。前世での名前は由紀。彼を『ナオ
前世では看護学生をしていたが、ナノルが前世で死んだ二年後に交通事故死。享年22。それだけあって、看護や医療について多少は明るい。
彼女が神から与えられたチートは身のこなしの鮮やかさ。その動きの素早さ、軽やかさは本職の道化師以上。一方、屈強さは、長い間食べなくても問題ないという点をのぞけばマミヤさん並み。
武器は枯れ枝を削って作ったダーツを使うが、強さはモヒカン一人~二人を相手になんとか戦って勝てるぐらい。
北斗転生終了後、どの作品を連載開始してほしいですか?
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