北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
それは、現れてから今まで続く、転生者の宿命!
見よ! 今、その長き転生者伝説に終止符が打たれる!!
(聖帝編)第参拾話『(知らずのうちに)聖帝領へ!! 』
砂漠の中をひた走るバギー。かつてぎゅうぎゅうだったバギーも、今は乗っているのはオレ……ナノルと、妹のココ、そして同行者のフラニーの三人だけ。いや違った。もう一人乗客がいたな。
そのバギーは砂漠の中を走る中、ある場面に遭遇した。
若い男女が野盗どもにつかまっている。そして、そのリーダーが男のほうをいたぶっているところだ。どこかで見たような光景だなぁ。
「マリア、俺を愛してると言ってみろ」
「だ、誰が……!」
「ほう、まだこいつを痛めたりないらしいな……」
そしてリーダーが、若い男にナイフを突き刺した。
「ぐはっ……!」
「ふふふ、何突き目に死ぬかなぁ~?」
「ま、マリア……生きて……ぐあっ!!」
それからもリーダーは、男に何度もナイフを突き立てた。そのたびに男が苦悶の声をあげ、血が飛び散る。
そしてその愛する者への拷問に耐えかねて、ついに女が言った。
「あ、愛します! 一生どこへでもついていきます!!」
「ふふふ、聞いたか、ゼン。女の心変わりは恐ろしいのう」
そのやり取りを見た、オレの隣のシートに座っている男の眉がぴくりと動いた。そして。
「人に言わせておいてあいつ……!」
その言葉とともに、彼はその隣のシートから消えていた。気が付くと彼は、そのリーダーの背後に立っていた。
「おい」
「あん?」
リーダーが振り返ったところで、同行者はリーダーの頭をわしづかみにし、そのまま下に押し下げ、ついにはリーダーを背骨側にへし折ってしまった!
「り、リーダー!」
「て、てめぇ!」
すぐさま、手下たちが男女を解放して、リーダーを倒した男を取り囲んだ。
「てめぇ、なにもんだ?」
「俺か? 俺はジュウザって色男だ。その小さな頭にしっかり覚えておけ」
「なんだと~!?」
名乗り、挑発する色男……いやさジュウザ。でも、そんな姿もサマになっているから憎らしいというかなんというか。
でも、さすがにちょっと数が多いな……。オレはバギーからジュウザに言ってやった。
「どうする、手伝うか?」
「いやいや、こんな奴ら相手に力を借りてたら、このジュウザの名がすたるぜ。黙って見てな」
「やれやれ、そうか。無理するなよ」
「わかってるよ。このジュウザの辞書に無理無茶なんて言葉はねぇ」
……よく言うよ。ラオウ戦では散々無理無茶したくせに。というかアニメ版ではさらに無理無茶を超えたことをしでかしていたが。まぁ、あれはユリアのためゆえか。
さて、それを聞いて、野盗の手下たちはさらに激昂する。
「ふざけやがって……やってしまえ!」
サブリーダーらしい男の号令一下、野盗たちが一斉にジュウザに襲い掛かった!
だが次の瞬間には、ジュウザはサブリーダーの後ろに立っていた。そして、奴がジュウザのほうに向きなおったところで手を横一文字に凪ぐ。とたん、彼の足元から砂煙が上がり、サブリーダーの視界を奪った。そして!
「くらいな! 呼雲流栄拳!!」
その砂煙に紛れて死角に回り込んだジュウザの貫手がサブリーダーに炸裂! その貫手は鋭く苛烈な威力をもって奴の胸板を貫いた!
ジュウザが貫手を抜くと同時に、サブリーダーが血を吐いて倒れる。
それを見て野盗たちが浮足立つ。それを見逃すジュウザではなかった。
「とあっ!」
天高く跳躍! そして舞い降り……。
「ぶげ!」
「ぐばら!」
「ずもらっ!!」
変幻自在の拳や蹴りで次々と野盗たちを葬っていく。
……本当に、とんでもない男だぜ。
* * * * *
オレたちがこの男……ジュウザと出会ったのは、オレたちがマミヤさんの村を出発した後のことだった。
バギーを走らせていると、砂漠の真ん中にサムズアップでヒッチハイクしている男を見つけた。それがジュウザだったのだ。
さすがにこんなところで、北斗の拳でも有数の有名人と会うとは思ってなかった。ココなどは思わず声をあげそうになっていたほどだ。
そしてジュウザはオレが車を止めると、遠慮もなく勝手に車に乗り込んできた。
「いや~、よかったよかった。アシがなくて困ってたんだよ。よろしく頼むぜ」
「あのなぁ……いやなんでもない」
いっそのこと、慈母星の将の正体がユリアだとばらしてやったら速攻で彼女を助けに行くんじゃないかと思ったがやめた。今はまだ五車星は動いていないみたいだしな。彼らが動き出すのは、サウザーが倒れ、ラオウが再び動きだしてからのはずだから。
それに、今ばらしたら、それがどこからかラオウの耳に入り、結果、サウザーが倒れたら即、ラオウが南斗の都に走ることになりかねない。
時が来るまで将のことは黙っていたほうがいいだろう。ココともそういうことで示し合わせておいた。
まぁ、そんなことでジュウザを旅の仲間に加えたオレたちは……。
「よし、今回はそこそこの収穫だったな」
「こちらも収穫だったぜ! こんなに女がいたぜ」
「……」
「あの……すみません。私には夫が……」
「あたしには彼氏が……」
「……」
盗賊どものアジトを潰して、物資を手に入れたり、今回のように、通りすがりで見かけた悪党を潰しながら旅をしてきたのだ。
幸いにも、ジュウザは面白い奴だし、悪意も何もなさそうだったから、案外楽しく旅ができている。時々、ココに手を出してくるぐらいか。フラニーについては、手を出したら(ブラコンの)レイが黙っていないぞ、とくぎを刺しておいた。
こんな感じで、一時はどうなるかと思ったが、問題なくて何よりだ。……ユリアのことを口に出したら、「忘れぇい!」されそうな気がするけどな。
* * * * *
「さて、鳥取へはこっちのほうでいいんだよな? フラニー」
「はい。そろそろ、かつての鳥取県の県境を超えます」
爆走中のバギー。方向を尋ねるオレに、カーナビフラニーはそう答えてくれた。本当に頼りになる。
答えを確認し、再び前を向いてハンドルを握りなおすオレに、ジュウザが面白そうに笑いながら口を開いた。
「鳥取砂丘に観光か。こんな世紀末の世に、本当に変わった奴だねぇ」
「よく言われるよ」
オレがそう返したところで、ジュウザが何かに気づいたようだった。
「ん、鳥取県? ……まぁいいや。面白いことになりそうだしな」
「?」
そこでココが後部座席から話してきた。
「それはいいけど、そろそろどこかの町に立ち寄らない? ちょっと食料が心もとなくなってきたよ」
「そうですね。カレンさんたちがいた頃と同じくらい消費しているような気がします」
そういえばそうだった。ジャギとカレンが抜けたんだが、新しく入ったジュウザがジャギと同じぐらい食べてるからな……。あのガタイだし仕方ないが。しかもここ最近、悪党どもを潰した戦利品も、それほど多くなかったしな……。
そう思っていると、近くに村が見えてきた。それを見て、ココはほっと胸をなでおろしたが、すぐに何かに気づいた。
「村が見えてきた……けど、あまり活気がないみたいだね」
「確かにそうだな……。なんというか、限界集落みたいな感じだ」
「ゲンカイシュウラク?」
「いや、気にしないでくれ。何はともあれ行ってみるか」
聞いてきたジュウザにそう返して、オレはバギーを件の村へと向けた。
* * * * *
やはりこの村には活気はあまりなかった。人が住んでいる気配はするのだが、外に人通りが全くないのだ。いや、それどころか。
出てこようとしている人もいるが、オレたちの姿を見かけると、すぐに家に引っ込んでしまう。それはまるで、よそ者を警戒しているような……。
その様子を見て、ジュウザが愚痴る。
「なんだいなんだい、この村の連中。しけた態度取りやがって」
「何か事情があるのかな?」
ココがそう言うが、その理由へとつながる手がかりは何もなし。
「これでは、ここでの食料補給は諦めたほうがいいかもしれませんね」
「そうだな、残念だけど……」
フラニーとそう言葉を交わしたところで……。
「きゃー、助けてー! 坊やがー!!」
女性の声が響いた。
* * * * *
駆け付けると、そこではモヒカンが三人の子供をトラックに積み込んでいるところだった。母親らしい女性がモヒカンの一人にすがりついているが、モヒカンはその母親を蹴り飛ばした。これまでにも何度もすがりついては蹴り飛ばされていたのか、母親の身体は傷と泥だらけだ。
「あいつら……許すわけにはいかねぇな」
「そうだな。それに、女性に暴力をふるうなんて気に入らねぇ」
オレとジュウザはそう言ってうなずきあい、奴らに飛び込んでいく。
「へへへ、これだけいれば、俺も聖帝軍に……」
そう言って満足そうに笑ってるモヒカンの一人に、オレは後ろからダガーの一閃を放った。そして。
「ぐはぁ!!」
そのモヒカンはたちまち、首から血を噴き出しながら倒れた。
「な、なんだ!?」
「何者だてめぇらは!」
いつぞやのように、モヒカンたちがオレたちの周囲を取り囲む。しかし、奴らが襲い掛かる前に、ジュウザが機先を制し、モヒカンの一人に飛び掛かる。
「その台詞はもう聞き飽きてるんだよ。とっととくたばりな」
そして蹴りの一撃で、数人のモヒカンたちを吹き飛ばした。さすが無敵の我流の拳を使いこなすと言われているジュウザだ。一説によれば、彼の一撃を喰らえば、それがどんな攻撃であっても、ザコはアウトだという話だが、まさにその通りだ。オレも負けてはいられないな!
「せいっ!」
「ぐはっ!」
「どべなっ!!」
ダガーの二刀流でモヒカンたちを切り払っていく。
そうして戦っているうちに気配を感じた。オレは正面を向いたまま、後ろにダガーを投げつけた。
「ぐへへ……この娘たちを人質にとれば……ぐぼあっ!!」
そのダガーは、ココとフラニーを人質にとろうとしていたモヒカンの後頭部に突き刺さった。そして。
「えいっ!」
「ぎぶらはっ!?」
さらにココのダーツを右目に喰らって倒れたのだった。
* * * * *
そして戦いの末、モヒカンどもは全滅した。
戦闘服から血しぶきをふき取りながら、ジュウザがオレに声をかける。
「あんた、なかなかやるじゃねぇか。気に入ったぜ」
「お前もな。敵にしなくてよかったよ」
そこに、あの母親が子供たちを伴って近寄ってきた。そして思いっきり頭を下げて礼を言う。
その様子からは、感激と感謝の気持ちがたくさん込められていた。
「あ、ありがとうございますありがとうございます! あなたたちのおかげで私も子供たちも助かりました!」
「いや、礼なんていいよ。あんな場にいたら見過ごせないからな。それで、もしかしてあいつらは……」
「はい。彼らはこの村の子供たち目当てにやってきた悪者たちです。なんでも、子供を連れてきたら聖帝軍に入れるとかで……」
聖帝軍だって? そういえばあのモヒカンもそんな感じのことを言っていたな。「これだけいれば、自分も聖帝軍に……」って。それにしても、こうして原作に関わってしまうのは、もうオレの宿命なのかな? いや、それよりも。
「そうだったのか……。もしかして、ここは聖帝軍の支配下にあるのかい?」
「はい……このエリアから西は全てそうです……」
「やっぱりな」
とそこで、ジュウザがさらりと聞き逃せないことを言った。ちょっと待て!
「知ってたのかよ!?」
「あぁ。だけど、聖帝軍に絡めば面白いことになりそうだと思ったから黙っていた」
「あのな……」
思わず呆れてしまう。だけど関わってしまったものは仕方ない。覚悟を決めよう。
「あの……もう一つお願いしてもいいでしょうか?」
「あ、あぁ。なんだい?」
「実は、他にも多くの子供たちが、ここから北にある城に連れ去られたんです。聖帝の手下、ダンテへの贈り物ということで……」
それを聞いたオレは笑顔でうなずいた。答えは決まっている。
「その子供たちを助け出してほしいっていうんだな。わかった、引き受けるよ」
「へっ、本当に人好きだな」
「そう言うお前はどうするんだ?」
そう聞くとジュウザににやりと笑いながら、肩をすくめて答えてきた。その答えも決まっていたが。
「もちろん行くさ。面白いことになりそうだし、収穫もありそうだしな。何より、こんな美人の願いを聞かなかったら男がすたる」
「あんたらしいな」
オレはそう言って苦笑する。キザだが本当に頼りになるし、信頼できる。出会った時はどうなるかと思ったが、やはり仲間になってくれてよかった。
……さて、どうやってそのダンテの城に潜入するか……。
* * * * *
一方そのころ、そのダンテの城。
その城の前に停まった車から子供たちが降りていく。彼らは絶望に打ちひしがれた表情のまま、城の中に入っていく。噂で、聖帝軍につかまった子供がどのような目にあるか聞いているのだ。
だがその中に一人、瞳に意志を宿した少年がいた。彼は一体何者なのか……?
感想、ファンアート、そして『テテテUC』を書いてくださる方、募集中です!
それでは、次回予告をどうぞ!
*次回予告*<チャーチャーチャチャー
聖帝の手下、ダンテの城に潜入したナノルたちは、一人の少年と出会う。
その少年シバ。果たして敵か味方か!?
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第参拾壱話『北斗の男との再会!!』
「なぁ……こいつ、本当にあの〇〇〇か? 頭を打ったんじゃねぇのか?」
「どういう意味だ!」
※次の更新は、5/11 13:00の予定です。お楽しみに!
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