北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました 作:ひいちゃ
それは、現れてから今まで続く、転生者の宿命!
見よ! 今、その長き転生者伝説に終止符が打たれる!!
* * * * *
ナノルたちに衝撃が走る!
ケンシロウ、とらわる!!
彼と、ケンシロウ救出のために命を投げ出そうとするシュウの息子、シバを救うため、ナノルたちは砂漠を走る!
ジュウザの怒りの我流拳が、その幼い命を踏みにじろうとする聖帝軍の奴らに炸裂するのだった!
ケンとシバを助けた後は、特に障害もなく、シュウのもとに二人を送り届けることができた。なお、ケンにはココが応急処置を施したのは言うまでもない。
そして送り届けると、シュウは滂沱のごとく涙を流して喜んでくれた。ケンが生きて戻ってきたことはもちろん、何より、死んだと思っていたシバが生きていてくれたことに感極まっているようだ。
なお、シュウの見立てでは、ココの的確な処置のおかげもあって、回復は思っていたよりは早くなりそうではないか、とのこと。それは何よりだ。ただ、ココにレジスタンスの看護兵として働いてくれないかと頼まれたのには困ったが。
さて、そんな中、オレはある話を聞いた。それは、レジスタンスの一人がシュウに報告した話がきっかけだった。
「シュウ様、またあの狼と遭遇した、とのことです。やはり、子供を連れていた、と」
「そうか、ふむ……」
「狼?」
シュウに聞いてみると、聖帝軍による子供狩りが始まってから、この聖帝軍のエリアで、狼の群れが見かけられるようになった、という。
しかも奇妙なことに、その群れは子供を守りながら移動していて、遭遇したレジスタンスに襲い掛かる様子もなかったそうだ。
それはなんとも不思議な狼がいたものだな……。
「我々への敵意はなさそうだが、子供たちを連れているというのが気にかかるな……」
「それならオレたちが、支部の拠点に帰るついでに調べてくるよ。もし聖帝軍とつるんでいたら、子供たちを助け出してくる」
「そうか、ありがたい。君たちなら任せても大丈夫だろう。よろしく頼む」
「あぁ」
そしてシュウに一礼すると、オレたちは再びバギーに飛び乗り、シュウの本部を後にした。
* * * * *
「えーと、ジュウザ。アジトはこっちのほうでいいんだよな?」
「俺に聞くな俺に。ハナから道筋なんて調べてねぇよ」
「そうだったな……。どうだ、ココ?」
オレは溜息をつきながら、後部座席のココに声をかける。さすがにココはジュウザとは違った。
「うん、合っている……と思うよ、たぶん」
……まぁ、一応調べてくれているだけでもジュウザよりはましか。やっぱりフラニーも連れてきたらよかったな……。
そんなこんなで、苦労しながら砂漠を進んでいると……。
「ねぇ、ナノル兄? あれじゃない?」
「ん?」
ココが指をさした先を見ると……。いた。獣らしき影と、子供ぐらいの背丈の影がいくつか。
「本当だ。よし、気づかれないように接近してみるか」
なるべくエンジン音をたてないようにゆっくりと接近していく。やはり情報のとおり、数匹の狼が、子供たちを囲んで守りながら移動していた。
だが不思議なことに、子供たちは若干の不安を表情に浮かべているものの、悲壮感などは感じられないのだ。泣いている子供もいない。少なくとも、無理やり連れていかれたわけではなさそうだ。中には子供の手をぺろぺろとやさしくなめている狼もいるし。
「どうする、ナノル兄?」
「そうだな……。人に対する敵意はないようだが、気になるものもあるし、聖帝軍の者の可能性もある。このまま、気づかれないように後を追ってみるか」
そして引き続き、狼たちのあとを追う。その先で思わぬ再会を果たすことになるとは、この時、オレは思ってもいなかった……。
* * * * *
そして、狼たちに気づかないように、彼らのあとを追う。狼たちはこちらのことには気づいて……いないように思う。
だがそれは甘かった!
「ワオーーーンッ!!」
「!?」
どこからか狼の遠吠えが聞こえると、追跡していた狼たちが一斉に戦闘態勢をとる。さらには周囲の崖にも狼の姿が!
しまった、見張りがいたのか! 狼と思って甘く見ていた!
「ど、どうしよう、ナノル兄……?」
「仕方ない。迎え撃とう。だけど、彼らと明確に敵対はしたくないし、傷つけたくない。なるべく殺さないようにしろよ」
「う、うん」
「やれやれ、やっと出番か」
そして、オレたちが戦闘態勢をとると同時に、狼たちはこちらに襲い掛かってきた!
「せいっ!」
「キャンッ!!」
飛び掛かってきた狼を、ダガーの峰打ちで払いのける。もちろん、急所には当てないように。
ココは、狼の目前にダーツを投げつけて、彼が襲い掛からないように牽制している。
「そーら、そらそら!」
ジュウザも、変幻自在の拳法を駆使して、狼たちと渡り合っている……というか、彼らとじゃれている感じすらある。本当に余裕だなおい。
そんなわけで狼たちを傷つけたり、殺したりしないように気をつけながら戦いを繰り広げる。
だがその戦いは突然終わりを告げた。
「お前たちは!? おい、狼たち、戦いをやめるんだ!」
どこかから声が響くと、狼たちは戦いをぴたりとやめ、退いてお座りの態勢をとった。そして向こうからやってきたのは、毛皮をまとった、粗暴な顔の中にも、理性的な光を宿した男……え?
「お、お前は……牙一族との決戦の時に最初に戦った!?」
「???」
* * * * *
そう、狼たちを統率していたのは、元牙一族の男だった。
彼は、オレたちが牙一族討伐に出発した時に、最初に戦ったやつだ。彼は牙一族でありながら、彼らの中では珍しく、人の情を持ち合わせていた。
戦いはオレたちの勝利に終わったが、その情を持つことからオレやケンに許されて、命までは奪われなかったのだった。
そのあとはどうしたかわからないが、まさかこんな聖帝領で会うとは思わなかった。
……そういえば名前を聞きそびれていたな。
「あの後、俺はしてきたことの償いのため、人を助けたり、町や村を襲う悪党を倒しながら、放浪していたんだ。その末、この狼たちと知り合って絆を築き、ここに住み着くことにしたんだよ」
「そうか、それで……」
「あぁ。この周辺の人々が『聖帝』とかいう奴らに子供を奪われている、ってことを知って、奴らから子供たちを助け出し、かくまうことにしたってわけよ。まさかその中でお前たちに再会するとは思ってもいなかったぜ」
「あぁ、オレもだよ。でも、元気そうで何よりだ。えぇと……」
オレが名前を聞いてなかったことを思い返すと、元牙一族は苦笑してこたえてくれた。
「あぁ、オレはギバラというんだ。でも、また会えてうれしいよ。たいしたものはないが、ゆっくりして……」
とそこで、一匹の狼がやってきた。狼はギバラに何かを伝えているようだ。それを聞いた彼の表情が険しくなる。
「せっかく来てもらったのに済まない。お前たちの力を借りたいんだが、いいか?」
「あぁ、いいぜ。どうしたんだ、敵か?」
「あぁ、奴らが来た。聖帝軍のやつらが。今回はちょっと数が多いようなんだ」
* * * * *
一方そのころ、ナノルたちが立ち寄ったギバラの集落に向かっている一団があった。
ギバラが言っていた、聖帝軍の部隊である。
「いいか! 聖帝様からガキどもを奪った奴らを、一人一匹たりとも逃がすな!」
「おー!」
「その意気だ! 愚か者どもに、わが聖帝軍の力を……」
しかし、率いている隊長はそれ以上言えなかった。彼の首は、音もなく忍び寄っていた狼の一匹に首を食いちぎられていたのだ!
そしてそれと同時に、部隊の周囲の崖に、多数の狼たちの姿があらわれる。
「た、隊長!!」
「し、周囲に狼どもが!!」
その状況にうろたえる聖帝軍の兵士たち。
だがさすがに聖帝軍。ただの野盗どもとはわけが違った。
副隊長と思われる一人が声を張り上げる。
「者ども落ち着け! われらは栄光ある聖帝軍! こんな狼どもにうろたえてどうする! 落ち着いて態勢を立て直せば、どうってことはない! ただちに戦闘態勢をとれ! 我らに喧嘩を売ったこと、地獄で後悔させてやるのだ!」
「お、おう!」
その副隊長の言葉に、兵士たちは落ち着きと闘志を取り戻し、武器を構えて戦闘態勢をとる。たちまち、各所で激戦が繰り広げられた。
さすが聖帝軍の統率がとれた兵士たち。彼らは多数の狼相手に互角の戦いを展開していた。
その様子を見て、副隊長が笑う。
「ははは、見たか狼ども! 我が聖帝軍の前に敵はない! ……む?」
「へぇ、言うじゃないの。それじゃ俺たちが最初の敵になってやるよ」
その声に、副隊長が前に目を向けると……そこには、ナノルとジュウザの二人がいた。
* * * * *
「お、お前は……ジュウザ!」
「俺のことを知っているのか。俺って結構有名人なんだな、いい気分だぜ」
ジュウザがそう軽口を叩くと、副隊長らしき男は、懐から剣を構え、ジュウザを侮辱するような笑みを浮かべて言い放った。
「おうよ。だがな、無頼に走り、腑抜けた貴様など、この俺様の敵ではないわ~!!」
それに対し、ジュウザも一瞬顔をしかめながらも、すぐに挑発的な笑みを浮かべて応えた。
「そうか。なら試してみるんだな。この俺の拳が腑抜けているかどうかを!」
そしてまっすぐに副隊長に向けて走り出す。それに対して、副隊長が剣を振り下ろすも、ジュウザはそれを軽くかわした。
それからも副隊長は次々と攻撃を繰り出すが、ジュウザはそれをことごとく、涼しい顔でかわしていった。
そして。
「はぁはぁ……。俺様の剣をここまでかわすとは……。だが、拳を曇らせたお前など……」
「どうかな?」
「なにぃ……? !?」
とたんに、副隊長の顔に拳痕が浮かび始め、その顔が醜くゆがんでいく。
「こ、これはいったい……? 奴は一切、拳を出していなかったはず……?」
「曇っていたのは、お前の目のようだな。俺はお前の攻撃にカウンターで拳を放っていたぜ。お前にはそれが見えず、それに気づかなかっただけだ」
「そんなばかな……ばかばかかかかばかあかばああああ!!」
副隊長は限界まで顔を歪め、そして最後には空中に身体がはじかれるように飛び上がり、醜くねじれて果てていった。
その様子を見やって、ジュウザは一言。
「例え曇り、腑抜けていてもな。お前を倒すには十分なんだよ。……お前たちの副隊長は倒した!」
その言葉に、周囲の聖帝軍たちの間に動揺が走る。そしてそれをきっかけに、奴らは狼たちの前に急に劣勢になっていった。
そして。
「ひいいぃぃぃぃ!」
「に、逃げろおおおぉぉぉぉ!!」
ついにたまらず、逃げ出していったのだった。それを見送る狼たちの遠吠えが、まるで凱歌のように谷に鳴り響いた。
* * * * *
「力を貸してくれてありがとう。おかげで助かった」
「いや、オレたちは大したことはしてないさ」
オレがそういうと、ギバラは首を振り、ぎこちない笑顔を浮かべて言った。
「いや、お前たちが副隊長を倒してくれなかったら、奴らに勝つことはできなかった。狼たちは皆殺しにあっていただろう。本当に感謝してもし足りないよ」
「そうか。そう言われるとなんかくすぐったいな」
「何かあったら言ってくれ。できることならなんでも協力する」
「あぁ」
そして握手し、お互い笑顔で別れたのだった。オレたちはバギーに飛び乗り、再び支部アジトへの帰途についたのだった。
* * * * *
だが、そこから事態が急転した!
アジトに向かうオレたちの前に、支部のリーダーとフラニーを乗せたバギーがやってきたのだ。
なんだろう……? いやな予感がする……。
そして、その予感は正しかった。
支部リーダーはバギーを降り、オレたちのもとに駆け寄るとこう言ったのだ。
「た、大変だ! シュウ様が、シュウ様が聖帝に捕らえられた!!」
なんだって……!?
風雲が急を呼ぼうとしている……!
感想、ファンアート、そして『テテテUC』を書いてくださる方、募集中です!
それでは、次回予告をどうぞ!
*次回予告*<チャーチャーチャチャー
風雲急を告げる!
シュウがサウザーに敗れた!!
あまりに冷徹かつ強力なサウザー率いる聖帝軍を前に、ナノルたちはシュウの救出を果たすことができるのか!?
次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』
第参拾五話『我が星は帝王の星!!』
「哀しみや痛みを生むことは否定しねぇよ。だけど、愛や情けが生むのはそれだけじゃない」
※次の更新は、6/8 13:00の予定です。お楽しみに!
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