北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました   作:ひいちゃ

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運命を切り開く者がいる! 天の道を外れ、欲望に生きる外道がいる!
それは、現れてから今まで続く、転生者の宿命!

見よ! 今、その長き転生者伝説に終止符が打たれる!!

* * * * *

聖帝の魔の手からシバとケンシロウを助けだしたナノルたちは、シュウのアジトで聞かされた不思議な狼の調査をするうち、かつて戦ったギバラと再会する。
その狼たちを狙う聖帝軍をギバラたちと撃退した彼らだが、その喜びの束の間、凶報が彼を襲うのだった!


(聖帝編)第参拾五話『我が星は帝王の星!!』

「大変だ! シュウ様が、シュウ様が聖帝に捕えられた!!」

 

 フラニーとともにバギーで駆け付けた、オレ……ナノル……たちがお世話になっている支部のリーダーがもたらした情報は、オレたちに衝撃をもたらした!

 

 リーダーの話によれば、聖帝十字陵の完成が間近に迫った聖帝軍が、レジスタンスの各アジトに総攻撃を仕掛け、それによって多くのレジスタンスたちが殺され、多くの子供たちが連れ去られた。

 シュウは、その子供たちを助けるため、サウザーに挑み、そして敗れたという。くそ、なんてことだ……!

 

「それで、オレたちのアジトは無事なのか!?」

 

 すると、リーダーは顔を曇らせて言った。

 

「いや、残念ながら、俺たちのところもやられてしまった。俺はあんたたちにこのことを知らせるために、お嬢ちゃんと一緒に、なんとか脱出してきたんだ」

「なんてこった……」

 

 だけど、シュウが捕まったとなれば、やることは一つだ!

 そのオレの考えを悟ったのか、ジュウザがうなずいて言った。

 

「さっそく、シュウのおっさんを助けに行くとしようぜ! 生真面目すぎるが、死なすには惜しいおっさんだからな!」

「あぁ!」

「ありがたい、よろしく頼む!」

 

 そこに、ココが横から口をはさんだ。

 

「ねぇ、ナノル兄? ギバラさんはどうしよう? 助けてもらう?」

 

 それができれば、かなり有利になるが……。

 

「いや、やめておく。一刻を争うからな。ギバラのところに戻って、それからとなると間に合わないかもしれない。それに、相手は聖帝サウザーだ」

 

 彼らがサウザーに挑んだら、生きて帰れないかもしれない。その意をくみ取ったココが表情を沈ませてうなずいた。

 

「それじゃ行ってくる。リーダー、もしケンに会うことがあったら伝えてくれ。『サウザーの秘孔は表裏逆』ってな」

「……! わかった、必ず伝えよう。気を付けて行ってきてくれ!」

 

 そしてオレは、再びバギーに乗り込む。そして、ココとジュウザ、フラニーが乗り込んだところでアクセルを踏み込んだ。

 

 目指すは聖帝十字陵だ!!

 

* * * * *

 

 ナノルたちが、リーダーと合流したかなり前。

 

 聖帝十字陵の建設地にて、シュウが聖帝サウザーと相対していた。

 

「ふふふ……来たか、シュウ! だが、俺に勝てると思っているのか?」

「たとえお前を倒せなくとも、未来の光のため、阿修羅となって戦おう! この命、果てるまで!!」

 

 それを聞くと、サウザーは不敵に笑い、指をパチンと鳴らした。

 

「よかろう。その意気にこたえて、相手をしてやる。だが、まずはこいつらからだ」

 

 すると、シュウの前に複数の兵士たちが立ちはだかった。

 

「久しぶりの南斗白鷺拳、さび付いていないか試させてもらおう」

「むぅ……」

 

 兵士たちが手に持っていた何かを振り回す。それは、鎖につながれた刃つきの筒だった。その筒から放たれる風切り音が、シュウの聴覚を乱す!

 

「へっへっへっ……お前は目が見えないと聞く。ならば、耳を封じればただの木偶よ!」

 

 そう言いながら、兵士たちは音を立てながらシュウの周囲を円を描くように回る。だが、その耳を封じられたシュウの顔には、微笑みが浮かんでいた。

 

「ふ……残念ながら、お前たちは私の本質を見誤っているようだな」

「なんだと?」

 

 次の瞬間! 襲い掛かってきた一人の太刀を軽くかわし、蹴りによる斬撃を食らわせる。さらに!

 

「南斗裂脚斬陣!!」

 

 逆立ちして放った回し蹴りが、兵士たちに襲い掛かる! その蹴りの鋭さの前に、兵士たちは次々と切り裂かれ、倒れていった。

 

「私は目も耳も使わん。私は心で敵の動きを捉える!」

 

 そこでサウザーは再び笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「さすがはシュウ。白鷺拳はさび付いていなかったようだな。いいだろう。この俺自ら、相手をしてやる」

「サウザー!」

 

 そう叫び、シュウがサウザーに攻撃を放った。だがサウザーはそれを軽くかわす。

 

「とあっ!」

「ふん……」

 

 再びシュウの蹴り! それも、サウザーは笑みを浮かべながら返す。

 

「なぜだサウザー!? なぜ攻撃を出さん!」

「俺は相手をしてやると言ったが、俺の拳、鳳凰拳で相手をしてやるとは言っていない」

「なんだと!?」

 

 そして最後に放たれた蹴りをサウザーは後ろに跳躍してかわすと、勝利の笑みを浮かべて言い放った。

 

「俺が相手をするのは、鳳凰拳ではなく、帝王としての覇道よ!」

「なに!? ……!?」

 

 シュウの動きが止まった。彼は察知したのだ。兵士たちが人質たちに刀を突き付けているのを。

 

「サウザー、貴様……!」

「攻撃したければするがいい。ここにいる百人の人質の命が惜しくなければな」

「ぐぐ……」

 

 シュウは手刀を放とうとするが、彼の良心がそれを許さなかった。まるで彫像のように硬直する。

 

「さぁ、どうした? 今が千載一遇のチャンスだぞ」

「ぬぅ……」

 

 それでも手刀を放てないシュウに、人質たちから声がかかる。

 

「私たちのことは構いません! 聖帝を倒してください!」

「聖帝が倒れるなら、ここで死んでも悔いはありません、シュウ様!」

「う……うおおぉぉぉぉ!!」

 

 だが、シュウには彼らを犠牲にすることはできなかった。むなしく拳を天に掲げて叫ぶ。

 

「許せ……お前たちを犠牲にしてまで勝つことはできぬ。それなら奴に屈したほうがましだ……」

「シュウ様……」

「くくく……惜しいな、シュウ。やはり愛や情けが、貴様の拳を鈍らせておったわ。振るえぬ拳など腐ったも同然。貴様が愛や情けを持ち、このサウザーに挑んだ時点で、白鷺拳は堕ちていたのだ。例えさび付いていなくともな。はあっ!!」

「ぐあぁっ!!」

 

 炸裂する極星十字拳! その鋭すぎる斬撃によって、シュウの両足太ももの腱が切り裂かれた!! シュウが倒れこんでしまう。

 

「あぁっ、シュウ様~!!」

「これで貴様は白鷺拳を振るえなくなった。仁星もこれで終わりよ!!」

 

 そして高らかに言い放つ。

 

「見たか、この世に愛も情けも無用! 愛や情けが道を歪め、為せることも為せなくなる!! それらが生むのは、ただ悲しみや痛みだけだ!!」

「サウザー、それは違う……!」

「負け犬の遠吠えにしか聞こえんな。愛や情けをもった貴様が俺に負け、こうして地に醜くへたばっている。それこそが全てよ」

「ぐ……」

 

 そしてサウザーは冷徹に言い放った。

 

「連れていけ。お前には残酷で重要な役目を背負わせてやる。ここにいる人質以外のレジスタンスの奴らを皆殺しにした悲鳴をBGMにしてな」

「な、なんだと!?」

「この聖帝サウザーが、レジスタンスの奴らを生かしてくれると思っていたのか? おかしいな。俺は人質以外の奴らを助ける、といった覚えはないぞ。くくく……これも帝王の覇道よ」

「お、おのれ……サウザー……!」

 

 そして兵士たちがシュウをひきずっていく。その中、シュウは叫んだ。

 

「聞け、我が無念の叫びを! ケンシロウーーーーーー!!」

 

* * * * *

 

 一方そのころ。シュウのアジトの地下水路にて。

 

「この先の希望は奪わせ……うぎゃっ!!」

 

 レジスタンスの一人が、聖帝軍の一人に切り殺された。それでも、先に進ませまいとその一人の少年が、手を広げて立ちふさがる。

 シュウの息子、シバだ。彼はシュウから、ケンシロウを無事に安全圏に逃がすように言われていたのだ。

 その言いつけを守ろうとするシバに聖帝軍が刀を振り下ろしたその時!

 

 少年の頭上から拳がはなたれ、その聖帝軍の兵士に直撃した! 哀れ、その兵士は砕け散る。

 背後を見たシバが言う。聖帝軍が衝撃の表情で言う。

 

「ケンシロウさん!」

「け、ケンシロウ!」

 

「シュウが……シュウが呼んでいる!!」

 

 シュウのもとに向かい、彼を助けなければ。その一念がケンの胸の十字の傷をふさいでいく。

 恩人の叫びによってよみがえったケンシロウのあゆみをとめるものなど、目の前の聖帝軍の中には誰もいなかった。

 

* * * * *

 

 そして現在。

 

 十字陵の前にて、シュウは聖帝軍の兵士から鞭を打たれていた。

 

 鞭は、シュウの皮を裂き、肉を断って、彼の力を奪っていく。その背後に響く、シュウの名を呼ぶ人質の声が、その残酷な儀式を彩るBGMだ。

 

 しばらく兵士がシュウに鞭を打ったところで、サウザーがそれをとめた。

 

「よし、そのへんでいいだろう。いいザマだな、シュウよ」

「さ、サウザー……」

「それではお前に、最期の役目を与えてやろう」

 

 しかし、そこに!

 

「ちょっと待った!」

「そうはさせないぜ!」

 

 その鋭い声に、サウザーと、聖帝軍の兵士たちが背後……声がしたほうを振り返る。

 そこには、二人の漢……ナノルとジュウザの姿、そしてココとフラニーが乗ったバギーがあった。

 

* * * * *

 

「ナノル……なぜここに……!? それにジュウザも……!」

「ほう、お前がうわさに聞く転生者か。それに、雲の男。ここに何をしに来た?」

 

 サウザーの問いに、オレは一歩を踏み出しながら答えた。

 

「決まってるだろ? シュウを助けにきたんだよ」

「最初はあんたの軍にからんでいるのも退屈しないからと思っていたがな。シュウのおっさんは死なせるには惜しいんでな」

 

 そう言いながら前進するオレたちの前に、聖帝軍の兵士たちが立ちはだかる!

 

「待ちな!」

「お前たちのようなどこの馬の骨かしれない奴に、神聖なるこの地の土を踏ませるわけにはいかねぇ!」

 

 そう言って武器を構えるが、そんなものでオレたちを止めることはできない!

 

「だけど踏ませてもらうぜ! うりゃっ!」

 

 二刀流のダガーで、聖帝軍兵士を切り裂く!

 

「どりゃりゃりゃっ!!」

 

 ジュウザの変幻自在の拳が聖帝軍の奴らを吹き飛ばしていく!

 

 ただひたすら前進するオレたち。オレたちの前に立ちはだかっていた奴らは全部倒され、目の前にはサウザーしかいなかった。

 

「くくく、ただの馬の骨ではないようだな。だが、お前たちなどこの聖帝が戦うまでもない」

「なんだと……!? ……!!」

 

 そうか、ぬかった! こうなったとき、奴の使ってくる手は決まっていたというのに!

 

「シュウに手を出せば、この場にいる百人の人質の命はないぞ! さぁ、お前たちもこの聖帝に屈するがいい!」

 

 こうなれば、可能性は少ないが……やるしかない!

 

「それはごめんだね」

「ほう……? ならどうする?」

 

 そのサウザーに問いに、ジュウザが答える。

 

「決まったことよ……」

「シュウを助ける前に……」

「人質を助け出す!!」

 

 そしてジュウザが、人質をとらえている兵士たちに飛び掛かった! そして言う。

 

「ナノル、俺はこの兵士たちを片付ける! お前はココとフラニーを守ってやれ!」

「あぁ、任せた!」

 

 そしてジュウザは、兵士たちを倒していく。一方のオレはバギーに向かって走り、フラニーに襲い掛かろうとしていた兵士を切り倒す。

 たちまち周囲は大乱戦となった。

 

* * * * *

 

 果てしなく乱戦を繰り広げるオレたち。だが、それもちょっと苦しくなってきた。

 

 何しろ数が多い。ジュウザはまだ少し余裕があるようだが、オレのほうは押し寄せてくる奴らを倒していくのでいっぱいいっぱいだ。ココやフラニーが援護してくれているが、数が多すぎる!

 

 その様子を見て、サウザーがあざけり笑う。

 

「シュウを助ける前に人質を助けるといった判断をしたことはほめてやるが、たった二人で何ができるかということに考えが及ばなかったのが、お前たちの愚かさよ。やはり、愛や情けは無力なのだ! ふははは!!」

「へっ、言ってろ……!」

「ナノル、ジュウザ、いい……もういいのだ……!」

 

 シュウがオレたちをいさめ、止めようとするが、止める気はない。最初からやらない気だったらそもそもここには来ないし、シュウの悲劇を見て見ぬふりして後悔するよりははるかにましだ。

 

 それでもどんどん押されていた。そして、兵士の一人がフラニーに刀を振り下ろそうとしたその時!

 何者かがその兵士の首元にかみついた!

 

* * * * *

 

 フラニーを殺そうとした兵士にかみついたもの、それは一匹の狼だった。……狼だって!?

 それと同時に、バギーの背後から響く遠吠えに混じる声。

 

「助けにきたぞ! 何も言わずに行っちゃうなんてひどいじゃないか!」

 

 そう、ギバラと彼の仲間の狼たちだったのだ!

 

「ギバラ、なぜここに!?」

「風の便りで、お前たちがサウザーを倒しに向かったと聞いてな。急いで駆け付けてきたのよ!」

「だが、相手は……」

 

 オレの言葉に、ギバラは首を振り、不敵な表情で言った。

 

「いいってことよ。このことを聞いて思ったんだ。ここが、お前たちに助けられた命の使い時だってな!」

 

 そう言って、飛び掛かってきた兵士を、その爪で引き裂いた。

 

 さらに、援軍はそれだけではなかった!

 

* * * * *

 

 兵士の一人がジュウザに飛び掛かった! ジュウザはその刀を白羽取りして防ぐ。だが、そうしてジュウザが動けなくなったところで、別の兵士が背後から切りかかろうとした!

 

「ジュウザ、お前の命、もらった! ……!!」

 

 だが刀を振るうことはできなかった。彼の背後から放たれた矢が、その身体を射抜いたのだ。

 見ると、ジュウザたちのいた支部のリーダーが、レジスタンスを率いてやってきたのだ。

 

「残った仲間を糾合して駆け付けてきたぞ!」

「ありがてぇ! そういえば、ケンシロウには会えたのか?」

「いや、残念ながらそれは……」

「そうか……まぁ、仕方ねぇか」

 

 そう言いながら、目の前の兵士の刀をへし折り、拳を食らわせる。

 

* * * * *

 

 戦況は変わりつつあった。ギバラたちと、レジスタンスの残存部隊の加勢で、絶望的から苦戦へと。

 

 まだ、人質たちの解放も、シュウの救出も為せていないが、その一方で最悪の状態にもなっていない。先ほどまでとは偉い違い。

 

 レジスタンスの一人の背後から襲い掛かった兵士を、別のレジスタンスがその手刀で切り裂いた。

 別の兵士を切り裂きながら、彼が独り言ちる。

 

「炎を封じて戦えとは、海も無茶なことを言う。もし使えれば、こんな奴らなどまとめて一蹴できるものを」

 

 その彼に、別のレジスタンスが返した。

 

「仕方ありますまい。まだ聖帝にも拳王にも、我らのことを感づかれるわけにはいきませんからな」

「確かにその通りだがな……とりゃっ!」

 

 そう言って、手刀を使うレジスタンスが、新たに襲い掛かってきた敵に斬撃を放った。

 

 ギバラと狼たちも負けてはいない。爪で引き裂き、牙を突き立て、聖帝軍の兵を倒していく。

 

 各所で激戦が繰り広げられていた。その戦況が少しずつ、苦戦から善戦へと変わりつつあった。

 

 そこに。

 

* * * * *

 

 オレが敵兵をダガーで切り倒したところで。

 

「小僧! 貴様が彼らの要と見た! 貴様を倒せば、有象無象は自ずから瓦解する! その命、頂くぞ!!」

 

 なんとサウザーが上空から襲い掛かってきた! その姿はまさに、鳳凰のごとし!

 その斬撃を紙一重でかわし……たと思ったが、かわし切れず、左肩を軽く引き裂かれてしまう。

 

「くぅっ!」

「ナノル兄!」

「貴様の首をとることなど、シュウを打ち倒すことよりも簡単なこと! くたばるがいい!」

 

 そこに。

 

「くたばるのはてめえだあああああ!!」

 

 上空からギバラが、サウザーに飛び掛かった! なんて無茶な!

 彼を援護しようと、オレもサウザーに切りかかるが、奴はオレにケリを放って吹き飛ばし、一蹴する。

 

「もらったあああああ!!」

 

 ギバラがサウザーの頭上から切りかかる! だが、それより速く、サウザーの手刀が一閃した!

 

 ギバラが硬直した。

 

「へへ……ドジ踏んじまったぜ……やはり俺じゃ、聖帝にはかなわねぇか……」

「ギバラ!!」

「だけど後悔してはいねぇぜ。お前たちに助けられた命、使うべきときに使えたんだからな……」

「ギバラ……」

「ケマダの兄貴、俺も今、そちらに行くぜ……ぐばらぁ!!」

 

 ギバラの身体が細切れ肉となって砕け散った。

 

* * * * *

 

「ギバラ……!」

「ふん、愛や情けに持つ者の当然の末路だ。お前も同じ道をたどるがいい!」

 

 ギバラを失ったことを悲しむ時間も、愛や情けを踏みにじるサウザーへの怒りを燃やす時間も、サウザーは与えてくれなかった。間髪入れず、サウザーは俺へ激しい攻撃を加えてくる。

 

「小僧、なぜ愛や情けに生きる? 末路はあのようになると決まっているのに。愛や情けなど、哀しみや痛みしか生まぬ害毒だというのに」

 

 サウザーが斬撃を放ちながら、そう問いかけている。確かに、その一面はあるかもしれない。だが、それだけではないことを、愛や情けに満ちた世界で生きてきて、そして北斗の拳の原作を読んできたオレは知っている。

 

「それだけではないぜ?」

「なんだと?」

「哀しみや痛みを生むことは否定しねぇよ。だけど、愛や情けが生むのはそれだけじゃない」

「ふん、戯言を。そんなこと見たことも知ったこともないわ!」

「それなら、ケンシロウと戦って教えてもらうんだな。いや、そうじゃねぇ。お前はもう知っているはずだ」

「なに?」

 

 そう、そのことも、原作を読んでいたオレは知っている。

 

「お前も愛や情けが生むものを知っているはずだ。だが、それが生む痛みや哀しみに耐えかね、愛や情けから逃げたことで、それまで忘れているだけだ」

「……黙れ、この聖帝を愚弄する気か!」

「愚弄するつもりはないさ。改めてそれらと向き合うんだな。帝王と名乗るならそれくらい……」

「黙れと言っている!!」

 

 サウザーがオレの説得を振り切るように、極星十字拳を放った! それによって、二本のダガーの刃が叩き折られた! 残されているのは……もしものためにとっておいたドライバー一本。これでどこまでできるかわからないが……いちかばちかだ!

 

「とどめだ小僧!!」

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 

 サウザーが突進する! それに対してオレも突っ込んでいく。

 そこで、かろうじて神様がオレに奇跡を与えてくれたらしい。サウザーが再び十字拳を放つよりわずかに早く、オレの闘気を込めたドライバーが、サウザーの左肩に突き刺さったのだ。さすがに深手を与えることはできなかったが。

 やった! そう思って油断したのがいけなかったのか。疲労からかそれともただの偶然か、オレは足元をもつれさせ、後ろに倒れこみそうになったのだ。そのオレにサウザーが迫る!

 

「終わりだ!!」

「ナノル!!」

 

 サウザーの掛け声と、ケンの声が同時に届いた。それと同時に、十字拳がオレの胸に炸裂し、オレは十字に切り裂かれた!! 激しい痛みが身体じゅうを駆け抜け、血をまき散らしながら、オレは吹き飛ばされる。

 

「ナノル!!」

 

 これまた奇跡か、石畳にたたきつけられる前に、オレはケンシロウに抱き留められた。

 

「サウザー! シュウに引き続き、ナノルまでも。許さぬ!!」

「ふん。愛や情けに生きる者に、このサウザーは倒せ……ぬ!?」

 

 サウザーがそう言った瞬間、サウザーの身体が電流を開けたようにびくっと震え、続いて、その額が裂けて、血がわずかながら噴き出た。オレの放ったあの一撃、それが幸いにも秘孔を突いたたのか。ココの放ったダーツが、カレンの秘孔をつき、呪縛を解いたように。

 

 そしてそれを見たケンは、闘気を身体に満ちさせ、ジャケットを脱ぎ捨て、シャツを筋肉の力で引き裂いて言い放つ。何かをつかんだかのように。

 

「サウザー! 貴様の身体の謎、見切った!!」

 

 

 




感想、ファンアート、そして『テテテUC』を書いてくださる方、募集中です!

それでは、次回予告をどうぞ!

*次回予告*<チャーチャーチャチャー

聖帝の謎がついに暴かれた!
聖帝の衣を脱ぎ捨て、愛や情けを取り戻せサウザー!

次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』

第参拾陸話『非情を断つ愛!!』

「ならば俺はあえてお前の中に愛や情けを呼び戻そう。この奥義でお前を破ることによって!!」

※次の更新は、6/15 13:00の予定です。お楽しみに!

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