北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました   作:ひいちゃ

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運命を切り開く者がいる! 天の道を外れ、欲望に生きる外道がいる!
それは、現れてから今まで続く、転生者の宿命!

見よ! 今、その長き転生者伝説に終止符が打たれる!!

* * * * *

シュウを助けるため、十字陵に向かうナノルたち!
奮闘する彼らだが、ケンシロウが到着したその時、ナノルはサウザーの拳に切り裂かれてしまう!
しかしその勇気の戦いが、ケンシロウにサウザーの体の謎を解くカギを与えたのだった!!


(聖帝編)第参拾陸話『非情を断つ愛!!』

「サウザー! 貴様の身体の謎、見切った!!」

 

 額から血を流しよろめくサウザーに対し、ジャケットを脱ぎ捨て、シャツを胸の筋肉で引き裂いたケンシロウがそう高らかに叫ぶ。

 それを聞きながら、彼の傍らのナノルは一瞬、意識を失った。

 

「見切っただと!?」

「友の命を賭けた攻撃が、俺に謎を見切るヒントを与えてくれた!」

「ふん、なにを戯言を! その見切りが誤りだということを教えてやる……!?」

 

 体勢を立て直し、ケンシロウへと一歩を踏み出すサウザーを、再び異変が襲った。

 

「な、なんだ……!? うおおぉぉぉぉ!!」

 

 サウザーの胴体の筋肉が不自然に膨張と収縮を繰り返し、それによってサウザーのシャツもまた破け散ってしまう!!

 それを意思の力で抑え込んだサウザーに、ケンシロウが言い放つ。

 

「心臓の位置が逆、そして秘孔の位置も表裏逆。それがお前の身体の謎……!!」

「ぐぐ……」

 

 そこでケンシロウが横たわっているナノルに対して言う。

 

「ナノル……お前のおかげで、俺は奴の謎を解くことができた。お前が命を捨ててまで与えてくれた鍵、無駄にはしない……!」

 

 だがそこで。

 

「そ、それはありがたいけどな……。勝手に殺さないでくれよ……」

「!?」

 

 サウザーの極星十字拳で殺されたと思われたナノルが、弱弱しく目を開いたのだ。

 

* * * * *

 

「ナノル!?」

「ナノル兄!?」

 

 そう驚きの声をあげるケンとココに苦笑を浮かべながら、オレは胸元に手を入れた。そしてそれを取り出す。

 

「これは……鉄板?」

「あぁ……もしものために忍ばせておいたのさ。それでも死なずに済むかどうかは賭けだったが……」

 

 もしあそこでよろめいていなければ、もしかしたらこの鉄板があってもオレは死んでいたかもしれない。その鉄板は、サウザーの極星十字拳で、見事に真っ二つになっていた。

 

「よかった……ナノル兄……」

 

 ココの眼から涙がボロボロと零れ落ちる。

 

「本当、抜け目のない奴だぜ……でもよかったよ」

 

 ジュウザも、目の尻の涙をぬぐいながら、そう憎まれ口を叩いた。

 

 だが、それをサウザーは一蹴した。

 

「ふん、だがその感動の一幕も、すぐに悲劇へと変わる。ケンシロウをこの手で倒した後で、再び貴様を血祭にあげてくれるわ!!」

 

* * * * *

 

 サウザーがケンに向けて歩き出す。その彼が、ある少年の前を通ったその時!

 

「シュウ様の仇!!」

「!?」

 

 その少年が、突然隠し持っていた釘で、サウザーの脚を刺したのだ! 子供の力ではほんの軽い傷しか与えることはできなかったが。

 

「シュウ様の仇! シュウ様の仇!」

 

 そう言って、再びサウザーの脚をさす少年。サウザーはその少年を平手打ちで打倒すと、その手から零れ落ちた釘を拾い上げて叫んだ。

 

「見ろ、このガキを! 愛や情けが、こんなガキをも復讐へと突き動かす! 愛や情けが目を曇らせ、為すべきことをなせなくする! 愛や情けゆえに、人は哀しみ、苦しまねばならん! 愛ゆえに!!」

 

 そしてサウザーは語り始めた。自らに起こった悲劇を。

 

 かつて自分に優しく接し、導いてくれた師を、一子相伝の掟のためとはいえ、自らの手で殺さなくとはならなかった過去を。その時に彼を引き裂いた哀しみと痛みを。

 

 そしてこの十字陵は、その師オウガイへの愛を葬るために築いた墓標だということを。

 

 だが、そのサウザーにケンが問う。

 

「ならば問う。なぜおまえは、この十字陵を築いた?」

「なに!?」

「お前が本当に愛や情けを捨てたのなら、こんなものを築かず、ただその師を捨て置いてもよかったはず」

「……!」

 

 サウザーの表情が変わった。どうやら図星のようだ。

 

「師への愛を葬る墓標など方便にすぎん。この十字陵こそ、お前の中にわずかながら愛や情けが残っており、それを完全に捨てきれていない証拠」

「黙れ! 貴様もこの俺を愚弄するのか!」

「お前は愛や情けを捨ててはいない。その中にある痛みや悲しみを見まいとして、愛や情けから目を背け、強がっているだけにすぎぬ」

「断じて違う! 俺は聖帝サウザー! 愛や情けなどという害毒を捨て去った男だ!」

 

 そう叫び、サウザーは高く跳躍し、十字陵の頂上に着地した。

 

「我が鳳凰拳の奥義を持って、俺を愚弄した罪を償わせてくれよう!」

 

 そしてサウザーは構えをとった。鳳凰の形をとったその構えを。

 

* * * * *

 

 サウザーがある構えをとった。その翼を広げた鳳凰のような構え、それはまさしく……。

 

「南斗鳳凰拳奥義・天翔十字鳳!!」

 

 自らを羽とし、ありとあらゆる攻撃を受け流す技。原作でも、ケンは天破活殺で奴の秘孔を射抜くまで、拳の一発も当てられていなかったほどの技だ。

 

「くくく……この天翔十字鳳は、帝王が自らと対等の敵に対した時に、あえて虚を捨てて放つ不敗の拳! このサウザーがこの奥義を出すことはすなわち、極星につばを吐く愚か者を必ず断罪するという意思の証! この奥義で、貴様を愛や情けとともに葬ってくれよう!」

 

 それに対して、ケンも構えをとりはじめた。

 

「ならば俺はあえてお前の中に愛や情けを呼び戻そう。この奥義でお前を破ることによって!!」

 

 ケンの手が北斗七星を描くように動く。そして構えをとったケンからオーラがほとばしる。

 

「それが北斗神拳伝承者の定め……!! 見よ、北斗神拳秘奥義・天破の構え」

 

 天破の構え……天の守護者である北斗七星が、その天が乱れた時に、その天を破るともいわれる秘奥義。

 

 オーラをみなぎらせ、対峙しあうケンとサウザー。その姿を、オレはココから傷の治療を施されながら見ていた。

 

 天から降り注ぐ雹も、二人の戦いを止めることはできないように見えた。いや、それどころかその二人の戦いに興奮した天が、興奮のあまりに雹を降らせたようにも見える。

 

 そして。

 

「いくぞ、ケンシロウ! 我が拳にカケラや愛がないことを感じつつ、死ぬがいい!!」

 

 サウザーが跳躍し、ケンに飛び掛かる! ケンがそれを迎え撃つ!

 

「おあたぁ!!」

 

 そのサウザーに向けて拳を放つ! だがそれはむなしく空を切った。

 

「こ、これは……ぐあっ!!」

 

ケンの両肩に傷が刻まれ、血が噴き出る!

 

「天空の鳳凰は落ちぬ!!」

「あーたたたたたっ!!」

 

 再び飛び掛かるサウザーに、ケンが拳の連弾を放つ。そのすさまじさは、まさしく弾幕のごとしだ。

 だがその弾幕をも、サウザーは潜り抜けて、再び斬撃を放った!

 

「ぐっ!!」

 

 今度はケンシロウの胸に傷が刻まれる。その様子を見て、周囲の兵士たちから歓声があがった。

 

「ただでは殺さぬ。俺の鳳凰拳を持って、お前を肉の一片になるまで切り刻んでくれよう! とあっ!!」

「ぬぅっ……! おーあたたたたぁっ!!」

 

 交錯する二人の拳。そして一瞬の間。そのあとの結果は、やはり同じだった。

 原作での戦いを知っているココでさえも、不安そうな表情を浮かべて、オレの手をぎゅっと握っている。

 

「この聖帝を愚弄した罪に対する怒り、そしてこれまで北斗の前に不遇を強いられてきた南斗の者たちの無念。その全てを込めて、お前を切り刻んでくれる! とあっ!!」

「……!」

 

 再び天翔十字鳳をもって飛び掛かるサウザー。その時、ついにケンが動いた。構えから技に。

 

「北斗神拳奥義・天破活殺っ!!」

「なっ!?」

 

 飛び掛かったサウザーがまるで何かに叩き落されたかのように吹き飛ばされる。

 その背後の岩が北斗七星の形に穿たれ、サウザーの背中に同じ傷が穿たれた!

 

 これで勝ったな……たぶん。そう思ったところで、限界が来てしまったようだ。意識が急激に遠くなっていく。

 

「天破活殺の奥義は、闘気をもって、触れずに秘孔を突くことにあり。将星堕ちるべし!!」

 

 そのケンの声を聴きながら、オレは再び意識を失った。

 

* * * * *

 

「北斗有情猛翔破!!」

 

 意識を失っていたオレは、そのケンの言葉で意識を取り戻した。

 目を開けたオレが、横に目を向けると、そこにはトキの姿が。

 

「具合はどうだ?」

「えぇ、かなりよくなったみたいです。ありがとうございました……」

 

 おそらく、トキが秘孔でオレの体力を回復させてくれたのだろう。今では意識もはっきりしている。

 

「戦い、終わったね。ナノル兄……」

「あぁ、そうだな……。さて、行こうぜ。あいつに伝えなければならないことがあるんだ」

 

 そしてオレは、ココの肩を借りて、ケンとサウザーのほうへと歩いていった。ジュウザに支えられたシュウも同じく。

 

* * * * *

 

「貴様……苦痛を生まぬ有情拳を……。この俺の死でさえ、情けで見送るのか……? なぜ、愛や情けを抱くのだ。それが生むのは、哀しみや苦しみだけだというのに……。悲劇しかないというのに……?」

 

 それに答えたのはケンではなかった。

 

「言っただろ? それだけじゃないって」

 

 ケンとサウザーのところまで、なんとかやってきたオレは、サウザーにそう言ってやった。

 

「なに……?」

 

 シュウがオレの続きを紡ぐ。

 

「思い返してみるがいい。お前がオウガイとともに過ごした年月。果たして、哀しみや苦しみだけだったのかを」

「お前も、覚えているはずだ。ぬくもりというものを」

「ぬくもり……」

 

 ケンに言われ、サウザーは過去に思いを馳せた。そこでぬくもりを思い出したのか、その表情から険しさが消えた。

 

「小僧、貴様の言うとおりだったな……」

「あぁ、そうさ。あんたは、オウガイ先生の死に受けた哀しみや痛みに耐えかね、ぬくもりもあったことに目を伏せて、愛や情けから逃げていたんだ。でも、もう大丈夫だろう。今の、ぬくもりを思い出したあんたの姿を見て、きっとオウガイ先生も安心してるだろうぜ」

「ふ……」

 

 そのサウザーに、ケンが哀しみを含んだ声で宣告した。

 

「お前の命はもはやここまで。一番死にたいところで死ぬがいい……」

「負けだ……完全に俺の負けだ……。北斗神拳伝承者……愛や情けから逃げていた俺が勝てる相手ではなかった……。だが不思議と悔いはないな……。お師さん……待っててください……」

 

 そう言って、サウザーはよろめきながら、オウガイ先生のミイラの眠る部屋へと歩いていった。

 

 その姿を、オレもココもジュウザも、トキもシュウも、涙を一筋こぼしながら見守っていた。

 

* * * * *

 

 そして。

 

「結局、シュウの脚は治らなかったか……」

 

 そう残念そうに言うジュウザに、トキが申し訳なさそうに詫びた。

 

「済まない……できる限りのことはしてみたのだが……。斬られた腱はどうにもならなかった」

 

 そのトキに、質素な松葉杖をついたシュウが微笑んで言った。

 

「あなたはできる限りのことをしてくれた。それだけで十分です。それに、白鷺拳は費えても、仁星は死にません。このシバの胸の中で生き続けているのですから」

「はい……」

 

 シュウに肩をたたかれたシバがそう決意を込めた声で応えた。その瞳には、確かにシュウと同じ、人を慈しみ、人の光のために生きる仁星の光が感じられる。これなら、きっと大丈夫だろう。

 

「私は再び、ケンシロウとともにマミヤの村へ戻る。ナノル、お前はどうするのだ?」

「また、ココやジュウザとともに旅を続けるよ。もうあんなことは御免だけどな」

「ふふ……また深手を負ったら治してやろう。安心するがいい。それと」

「ん?」

 

 そこでトキが、オレの肩に手を置いて言った。

 

「お前の星はいまだ鮮烈な光こそ放っていないが、されどこの世に光をもたらす一助となる可能性を秘めた星。お前の旅が、この世紀末に希望をもたらす道となることを祈っている。良き旅をしてくれ、転生者よ」

「……」

 

 オレが転生者であることに感づいていたのか……さすがトキだ。そのうえで言ったこの言葉、オレの胸に刻んでおくとしよう。

 

「あぁ、ありがとう。肝に銘じておくよ。それじゃあな、ケン、トキ。シュウも」

「うむ」

「さらばだ」

「ありがとう、ナノル。世話になった」

 

 そしてオレたちは、再び、それぞれの旅路へと戻っていくのだった……。

 

 




感想、ファンアート、そして『テテテUC』を書いてくださる方、募集中です!

それでは、次回予告をどうぞ!

*次回予告*<チャーチャーチャチャー

旅を続けるナノルたちの前に現れた者。
それは壮絶で哀しい宿命を持った孤狼の星を持つ男!

次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』

第参拾七話『哀しき天狼!!』

「謀反だというのか? 拳王様の村を好き勝手に支配していた奴の言うことではないと思うがな……」

※次の更新は、6/22 13:00の予定です。お楽しみに!

北斗転生終了後、どの作品を連載開始してほしいですか?

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