北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました   作:ひいちゃ

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運命を切り開く者がいる! 天の道を外れ、欲望に生きる外道がいる!
それは、現れてから今まで続く、転生者の宿命!

見よ! 今、その長き転生者伝説に終止符が打たれる!!

* * * * *

謎の部隊の正体を探るべく、ラオウから派遣されたバルコムの軍団!
そのバルコムの非道に、ヒューイの怒りが静かに燃え、疾風が走るのだった!


(南斗最後の将編)第四拾壱話『風雷十極拳! 乱舞!!』

 かつて鹿児島県・鹿児島市と呼ばれた場所にある、拳王軍の拠点・拳王府。

 そこの拳王の間では、拳王ことラオウが、ジョーカーからの報告を受けていた。

 

「何? 見知らぬ拳法を使う男だと?」

「はい。私が知る、どの流派にも属さない技を使っておりました。少なくとも、第一、第二カサンドラに収容した者たちの拳ではないことは確かです」

 

 そう報告するジョーカーに、部屋の隅に立っているルブラがバカにするように言う。

 

「そもそも、そんなに知ってるのかい? お前さんが知っているのはほんの少しじゃねぇのか? こんな奴を部下にしているなんて、拳王様も……へへへ……」

 

 次の瞬間、ジョーカーの姿はラオウの眼前から掻き消え、次の瞬間には、ルブラの背後に立ち、その首筋にスペードのトランプを突き付けていた。

 ジョーカーの顔は笑っていたが、その身体からは鮮烈すぎる殺気が漂っている。

 

「私のことをバカにするのは構わん。だが、私の拳王様への忠節と、拳王様をバカにすることは許さん。その先を言えば、お前の首を胴体から切り落としてくれよう」

「よさぬか、ジョーカー」

 

 そこでラオウから声がかかり、ジョーカーは再びルブラの背後から姿をけし、ラオウの御前に姿を現した。

 膝をつき、戦闘態勢を解いているが、殺気は消えていない。

 

「もうよい、ルブラ、下がるがよい」

「へいへい……ちっ」

 

 そしてルブラは不満たらたらの様子で部屋を出て行った。

 それを見届け、ラオウは目を閉じ、腕を組み、思案に沈む。

 

 謎の拳を使う男。もしかしたらジュウザなのだろうか? だとすれば、自らの覇道の大きな存在になりうる。

 だが、ジュウザではない、まだ知らぬ拳の使い手かもしれないし、ジュウザだとしても、まだ腑抜けている可能性もある。物資の状態を考え、自ら動く必要はあるが、相手のことを断じるのはまだ早いのではないかとも思った。

 

「よし、俺自ら出陣する。ザク、ただちに軍の準備をせよ」

「ははっ」

「それと……ジョーカー、ソウジンを呼べ」

「かしこまりました」

 

 ラオウの命を受け、ザクは大扉を開けて拳王の間を退出し、ジョーカーの姿もその場から掻き消えた。ラオウは再び目を閉じ、黙考する。

 そして数分後、大扉の向こうから……。

 

「拳王様、ソウジンが参りました」

「うむ、通せ」

 

 ジョーカーの言葉にラオウがこたえると、大扉が開き、ジョーカーともう一人、長い後ろ髪とひげを持つ老人があらわれた。

 

「私に御用と伺いましたが?」

「そうだ。わが軍に歯向かう、謎の拳を使う男がいるという。そいつと戦い、その拳を見極めてほしい」

「かしこまりました。拳王様の命とあらば、否やはありませぬ。微力を尽くさせていただきます」

 

 そして、ソウジンは広間を退出した。そして大扉が閉じたところで、ラオウがジョーカーに対して口を開く。

 

「ジョーカー、お前もソウジンと同行せよ。彼とともに、奴の拳、そして正体を見極めるのだ」

「了解いたしました」

 

 そしてジョーカーの姿もまた、ラオウの前から掻き消えた。

 

* * * * *

 

 さて、オレたち……ナノル、ココ、フラニー、ジュウザ、ヒューイの五人……は、再びバギーで、目的地である南斗の都に向かっていた。

 

 もうすぐ南斗慈母星の将の領土の境界が近いからか、拳王軍からの襲撃もほとんどなくなってきて、快適な旅路である。とはいえ、どこでどんなことがあるかわからないから、油断は禁物だな。

 

「……って、ジュウザ。油断は禁物なんだから、そんなぐでーってしてるなよ」

 

 本当にこいつは、どんな時でも変わらないな。

 

「わかってるって。ちゃんと周囲に気は配っているから心配すんな」

「本当かなぁ……」

 

 ココが、ジュウザのその言葉に首をかしげながらそう言ったのを見て、オレは苦笑を浮かべる。

 そんな、緊張しながらものどかな旅路。だがそこに!

 

「待ってください、ナノル様、前!」

「え?」

 

 フラニーの声に前方に目を向けると、前方から二人の人影が接近していた。バギーの速度を緩めて進みながら様子を見てみる。

 やがて、砂嵐が弱まって人影がよく見えてきた。どうやら、女の子と老婆のようだ。何かとても大変そうに見える。

 

 オレは、二人のそばまでバギーを進ませると、車を止めて駆け寄った。

 

「どうしたんだ?」

「はい。私たちは、拳王軍の支配下から逃れて、自由があるという東の都に行くところだったんですけど、途中でおばあちゃんが熱中症になってしまって……」

「そうだったのか、ほら、これを飲みな」

 

 そう言って、オレは水筒を差し出す。その水をおばあさんが飲むと、いくらか体調が戻ってきたようだ。

 

「ありがとうございます。この御恩は決して忘れません……」

「いや、別にいいって。困ってる人は見逃せないしな。よければ、都まで乗せていってもいいけど……。……!」

 

 と、そこでオレは後ろから殺気を感じたオレはとっさに背後を振り向き、ダガーをふるった! とっさのことで闘気を込めていなかったせいもあるかもしれないが、そのダガーの刃が、刃とぶつかったナニカにより切断されてしまった!

 

「残念ながら、お前たちはそこから進むことはできぬ。我が鋼の糸で切り裂かれ、果てる定めにあるのだ」

 

 その声とともに、砂嵐の向こうから一人の男……老人があらわれた。姿は老人だが、そこから発せられる殺気は、とても老人のものとは思えない。

 

* * * * *

 

 砂嵐の中あらわれた老人。彼を見て、ココが叫ぶ。

 

「あの人は……ソウジン!」

「知っているのかい?」

「はい。拳王に仕える武術家の一人で、カサンドラを守っていたフウガとライガという人の師匠……と噂で聞いたことがあります」

 

 そう、ジュウザに説明するココ。そのソウジンは依然殺気を放ち続けている。

 

「わしのことを知っているとは。その娘もテンセイシャか。だが、わしの用があるのはうぬではない。おぬしだ」

 

 そう言うと、ソウジンはジュウザに対して何かをふるった! ジュウザがその場から飛びのくと同時に、その地面に何かがさく裂した!

 

「そこの男、わしはうぬの拳を見極めなければならぬ。勝負してもらおうか」

 

 なんてこった……どうやらソウジンの目的は、ジュウザの拳を見極めることにあるらしい。おそらくは、その拳が我流の拳か否かを見極めるため。

 だが、ここで戦わせるわけにはいかない。あれだけの力を持つ男だ。戦えば、必ず我流の拳だと見極められてしまう。そうなれば、そこから慈母星の将がユリアであることが見抜かれてしまう。それだけは避けたい……。

 

 ……仕方ないか。

 

「ちょっと待ちな。彼と戦うなら、まずオレと戦ってもらおうか」

「下がるがよい。小物に用はない」

「言ってくれるじゃないか。小物かどうか、このダガーに聞いてみな!」

 

 そう言って、オレはソウジンに切りかかった! 奴はそれをかわすと左腕を素早く凪いだ! 殺気を感じ、とっさに飛びのく。かわしたつもりだったが、頬が一筋切り裂かれた。

 そのオレに、ココからの声が飛ぶ。

 

「ナノル兄、気を付けて! その人の拳は、風雷十極拳。両手の指につないだ鋼の糸をふるって相手を切り刻む拳なの!」

「ライガとフウガの二神風神拳のようなものか!」

「わしの技をも知っているとはな。だがそれを知られたところで!」

 

 そういいながら、ソウジンはたて続けに腕を振るい、鋼糸を繰り出す! 彼に操られた鋼の糸が縦横無尽に、オレに襲い掛かる!

 なんとかかわし続けるが、彼の言う通り、種を知ったところでどうなるものでもなかった。奴の攻撃は鋭く、激しく、とても反撃の隙がつかめないほどだ。

 

「ナノル!」

「こうなったら、俺が代わりに戦うぜ! 代われ!」

「いいって、ここはオレに任せてくれ。まだお前のことを知られるわけにはいかないからな!」

 

 そうは言うが、やはり戦況はオレにとても不利だ。奴の技に、こちらはかわし続けることしかできない。隙がないその技は、搦め手を入れる隙もない。

 そんなオレに、ソウジンが技をふるいながら言う。

 

「小僧、なぜそこまでして立ち向かう? すでにお前が小物だということはわかったはずだ」

「知れたことさ。あいつを死なせたくないからだ」

 

 この戦いのことではない。もしここでジュウザのことが知れれば、原作の動き通りにラオウが動き出す。そうなれば、ケンがたどり着くまでの時間稼ぎとしてジュウザが立ち向かわねばならず、彼は壮絶な死を遂げてしまうことになるだろう。それは避けたいのだ。オレは、親しく関わった者たちに、どんな死にざまでも死んでほしくない。

 ギリギリまで知られるのを遅らせ、その結果、状況が変われば、彼が生きる目も出てくるだろう。そのためならば多少の苦痛ぐらいどうってことはない。

 

 そのオレの眼の光を見たソウジンは、一瞬表情を緩めると、うなずき、再び表情を険しく、鋭くした!

 

「よくぞ言った。大した覚悟よ。よかろう。その覚悟に敬意を表して、わしの最高の一撃をもって、お前を切り刻んでやろう」

「そううまくいくかな?」

 

 そう言ってオレは構えるが、打開策は見つからないままだった。しかも、次はおそらく彼の最強の攻撃だろう。搦め手どころか、かわすこともできないかもしれない。

 となれば、道はただ一つか……。オレは闘気を満ちさせる。ダガーの刃にではない。自らの肉体にだ。

 

「食らうがいい! 風雷殲迅閃!!」

「うおおおおお!!」

 

 奴が技を放つと同時に、オレは奴に向けてまっすぐに突き進む!

 

「ナノル兄!」

「ナノル様!」

 

 ココとフラニーの悲鳴を聞きながら、さらに突っ込む。ソウジンの放った鋼の糸がオレの身体を切り裂く中、ただひたすら奴のもとへ。

 鋭い痛みが体中を走るが、闘気を満ちさせて一時的に強化したおかげもあり、深いダメージには至っていない。

 すべては一つ! オレが奴を倒すのが先か、オレの闘気が尽きて、鋼糸に切り裂かれるのが先かの勝負だ!!

 

「うぬ、こやつ!」

 

 ひたすら攻撃を仕掛けてくるソウジン。それでもオレは突き進む。やがて、ソウジンは距離を離そうと後ろに飛びのく! そこにオレはダガーを投げつけた!

 ソウジンはダガーを鋼の糸で払ったが、そのことで彼に隙が生まれた! さらにダッシュして、彼との距離を詰める。

 

「俺の勝ちだ!!」

「ぐうっ!!」

 

 その突進の勢いを乗せた蹴りを放つ! それによってついにソウジンは吹き飛ばされた!

 だが、そこにオレがとどめを刺そうとしたところに!

 

* * * * *

 

「ちょっと待ちな!」

 

 聞き覚えのある、だがまた聞きたくなかった声に、オレは動きをとめた。声がしたほうを見ると、そこには……。

 

「ルブラ!」

「へっへっへっ、久しぶりだなぁ~?」

 

 そう、ルブラが立っていたのだ。しかも、その腕にあの老婆と少女を抱きかかえている。

 

「てめぇ……」

「ぐへへ、さっさと武器を捨てな。さもないと、このババアとガキの命はないぜぇ~」

「くっ……」

 

 奴に屈するのは耐え難いが、人の命がかかっているんじゃ仕方ない……。オレはダガーを足元に捨てた。そのオレを見て、ソウジンは驚いたように目を見張り、続いて、ルブラのほうに険しい視線を向けた。

 

「さぁ、ジジイ。とっととそいつをしとめな! だが忘れるんじゃねぇぜ。このルブラ様のおかげってことをなぁ。ひゃっはははぁ!!」

「……」

 

 そのルブラの命を受け、ソウジンは腕を振り上げた。くそ、オレもここまでか……すまん、ココ、フラニー……!

 

 だが。

 

 オレが切り裂かれることはなかった。ソウジンはその鋼の糸を、老婆と少女をとらえたルブラへと放ったのだ。

 その攻撃に、あわててルブラが二人から飛びのく。そこにすかさず、ジュウザとヒューイが二人の前に立ちはだかり、保護する。

 

「な、何をする、ジジイ!」

「真剣勝負に人質をとるなど、神聖なる戦いを汚す行い。そのようなことで勝つことを、このソウジンがよしとすると思うか!」

「な、なんだと、このクソジジイが……!」

「立ち去れ。さもなくば、次こそその醜い身体を肉片になるまで切り刻んでくれる!」

 

 その鋭くも激しく荒い口調に、ルブラはたじろぎ、そして。

 

「お、覚えてやがれ!!」

 

 と捨て台詞を吐いて逃げ去っていった。

 

 それを確かめると、ソウジンはオレに向き直り、そして言った。

 

「うぬの、自らの命より他者の命を選ぶその心、このソウジン、とても感じ入った。今回は退こう。だが次はこうはいかぬと思うことだ」

「お、おう。できればもう会いたくないがな」

「ふふ……さらばだ」

 

 そしてソウジンは去っていった。それを見送るオレに、他のみんなが集まってくる。

 

* * * * *

 

 戦いの場を離れて、拳王府に戻ろうとするソウジンに、枯れ木に隠れていたジョーカーが声をかける。

 

「今回のことは、拳王様に報告しておくぞ。処分を覚悟しておくことだな」

「……わかっておる。覚悟のうえでのことだ」

「私個人の考えとしては、お前ほどの男を死なせるのは惜しい。なんなら見逃してやってもいいが……」

 

 そう言うジョーカーに対し、老武術家は首を振った。

 

「ご厚意だけいただいておく。おとなしく拳王様の処分を受けるのが、この老骨のせめてものあのお方への忠節よ」

「……そうか、さらばだ」

 

 そう言うと、ジョーカーはあらわれたときと同じように、砂嵐の中に掻き消えた。それを見届けると、ソウジンは再び歩き出す。

 拳王府に戻り、何も言わず、ラオウによる処分を受けるために。だがその歩みに恐怖やためらいは感じられない。

 

 だが、拳王府に彼がたどり着くことはなかった。突然、彼の体が何かに深く切り裂かれたのだ。

 

「がはっ……!」

 

 そう血を吐くソウジンの背後から声がかけられる。

 

「どうせ拳王様に殺されるんだ。今ここで俺に殺されても問題ないよなぁ~?」

「き、貴様……!」

 

 背後からソウジンを襲った男、ルブラは両手に鎖鎌を構え……。

 

「先ほど俺様をバカにしてくれた借り、返させてもらうぜぇ~!!」

「ぐわあああ!!」

 

 縦横無尽、あらゆる方向から鎖鎌の刃を浴びせ、ソウジンをズタボロに切り裂いた。全身から血を吹き出しながら、彼が倒れこむ。

 その頭を踏みにじりながら、ルブラが下卑た笑みを浮かべて言う。

 

「拳王様には、てめぇが途中で野垂れ死にしたって伝えておいてやるぜ。あばよ。ヒャッハハハハァ!!」

 

 そう高笑いをあげてルブラが去っていく。

 ただの肉塊となったソウジンの体を、砂嵐がその砂の中に隠していった……。

 

 




感想、ファンアート、そして『テテテUC』を書いてくださる方、募集中です! テテテUCを書いてみたい方は、ひいちゃまでメッセをくださいませ(平伏

それでは、次回予告をどうぞ!

*次回予告*<チャーチャーチャチャー

ナノルたちが立ち寄った町、復興の兆しがみられる町を拳王軍が襲う!
彼らは果たして、町を奴らから取り返すことができるのか!?

次回、『北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました』

第四拾弐話『復興の兆しを奪われた町!!』

「ザリガニにやられるようでは、五車星は務まらないんだよ」

※次の更新は、7/27 13:00の予定です。お楽しみに!

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