NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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人類に栄光あれ。


人形は神獣

───ごめんなさい...───

少女の、すすり泣く声が聞こえる。

───ごめんなさい...私、わたし...───

何とか上体を起こして、声の方に顔を向ける。

───私、貴方に、なんてことを...───

正気に戻ったミファーは、自分がしてしまったことへの罪悪感に苛まれていた。

「...べつに...気にして、ない。」

立ち上がろうとするも足がもつれ、ばたんとうつ伏せになる。

慌ててミファーが駆け寄ってくる。

「パー、ヤは...?」

───...薬のおかげで、今は落ち着いてます。私は...あの方にも...───

「気に、するな、と...言って、いるだろ。」

───でも!でも...私は...───

過剰なまでに、自分を責め続けている。ミファーはどう見てもまだ幼い。心の弱さだって当然だ。強力な力をその齢で持ってしまったのなら、こうなることだって至極当然のことである。

───貴女方だけじゃない。周りの人達にも、ゾーラの里にも迷惑をかけて...私、私.......もう、消えてしまいたい...───

消え入りそうな声でミファーはその美しい瞳から大粒の涙を流し続ける。

 

しとしとと泣く声だけが、大部屋に響き渡っていた。

 

痺れを切らした私は、げほげほと咳をこみながらミファーに提案する。

「...そんなに後悔...してる、なら...ちょっとは、手伝って...くれないか」

───...え?───

「応急、処置をして...ほしい」

───え...あ、はい!───

ミファーの目に少しだけ光が戻る。

「お前、その身体で...物は...持てる、のか?」

───あ、はい...小さいものを、動かすくらいなら...───

「なら、いい。火花が、散ってる配線が...ある、だろ?それを引っ張って───」

 

暫くの間、ミファーは私の応急処置に勤しんだ。

だんだんと視界が良くなり、少しずつ動けるようになってくる。

ミファーは手際よく、私の言った通りに義体を直していく。

少しずつ、互いの心の蟠りが解けていく。

静かな時間が、過ぎていった。

 

「...なあ。」

───なんでしょう?───

歪んだ部品を取り除きながら、ミファーが応える。

「さっきから思ってたんだが...敬語はいらない。」

───なんでです...な、なんで?───

「別に必要ないだろ。」

───...そ、そうかもしれないけど...まあ、A2さんがいいなら...───

「さん付けもいらない。」

───わ、分かった...A2。───

「それでいい。」

それから、取り留めのない話を何度か続けた。ミファーは感情豊かな子で、表情をころころと変えながら私と会話をする。やはりまだ、小さな子どもなのだ。

───ねえ...ちょっと気になってたんだけど、A2の身体がしっとりしてるのって...───

「ああ。お前の唾液だぞ。」

───うぅ...やっぱりそうだよね...ほんとにごめん...───

「謝るなって。悪い匂いもしないし。私のこと美味しそうに味わってたじゃないか。」

───もうやめてぇ...───

少しからかってやると、直ぐに顔が真っ赤になる。

こんなにも幼く、柔らかな心の女の子が戦場に駆り出されていたなんて...

 

この世界も案外終わってるのかもしれない。

 

───ねえA2。貴方はなんで、私を怒らないの?こんなことされたのに...───

思案に耽っていると、ミファーが真面目な表情で私に訊ねてきた。

「...さあな。お前より重症なやつを知ってるからかもしれない。」

───えぇ...その人...大丈夫なのかな...───

「...多分。でないと、私が死んだ意味がない。」

───A2は、死んだの?───

「...ああ。私は前の世界で一度...死んだ。そんでいろいろあってここにいる。」

───そっか。だからA2は不思議な人なんだね───

「バカにしているのか?」

───ううん!そうじゃない!そうじゃなくて...神獣なのに、人間みたいな心があって...───

「...その話、さっきもしてたな。」

───うん。A2は確かに神獣だよ。じゃないと、記憶を送ったりはできないから...───

...私、本当に神獣になっちまってるらしい。どうなってんだか。

応急処置が終わり、私はゆっくりと上体を起こす。

その時、奇妙な考えが脳裏に浮かぶ。...私らしくない、妙案とか言うやつかもしれない。

「なあ、ミファー。」

───...なに?───

「お前、私の繰り手にならないか?」

───え?───

「私は神獣なんだろ?そしたら繰り手を乗せられるはずだ。」

───そう...かもだけど...でも、なんで?───

「いや...このまま私たちがここを去ったら...お前、またひとりぼっちになるんだろ?」

───.......うん。そうだよ。───

「それなら、私と一緒に旅しないか?その方が寂しくないだろう。」

───...でも私はリンクのために───

「ちょっとくらいルッタを留守にしたっていいじゃないか。決戦の時に戻れば大丈夫さ。」

───...そう...かな。───

「そういうもんだ。まあその方がまた厄介事を起こされないから楽だし。」

───うう...ごめん───

「おいおい泣くな。そんなこと思ってない。ただ...もう丸呑みはごめんってだけだ。」

泣きっ面に蜂。ミファーは茹でダコのように顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。

───...いじわる。───

「すまんすまん。で、どうするんだ?」

一呼吸おいて、ミファーはゆっくりと話し始める。

───...一緒に、行きたい。私、外の世界を...今のハイラルを、ちゃんと見てみたい。そして、ちゃんと償いたい。私がやってしまったこと...ここにいたらそれは、出来ないから。───

力強い意志をその美しい瞳に灯して、ミファーは私を見つめる。

「決まりだな。で、どうすればなれるんだ?」

提案したはいいものの、やり方は知らない。そもそも繰り手の定義ってなんだ?難しいことは分からん。

───A2。動かかないでね。───

分からんので言われた通りにする。ミファーの美しい顔が私の顔に近づき、小さな両手が私の頬を包んで───

「...おい!お前何しようとして───」

ミファーの温かな唇が、私の作り物の唇に重なる。

その瞬間、ミファーの魂がふわりと私の中に入り込み、その感覚が隅々まで行き渡る。

そっと唇を離し、暫くの間、見つめ合う。

 

契り。確かに今、私たちは繋がった。

 

 

静寂。

 

 

「こ、これでいいんだな!よかったよかったー!」

───う、うん!これで繰り手になれたはず!───

お互い恥ずかしくなって話をもどす。

「...ったく。まさかその...き、キスするだなんて...パーヤが見てたらとんでもないことに...」

 

「とんでもないことに?」

 

殺気。振り向く。

いつの間にかパーヤが起きてた。めっちゃ見てる。怖い怖い。パーヤごめんって。なんで謝ってるか分かんないけど。とりあえずごめんって。怖いって。瞳に光がこもってないって。

「二号、さん?」

「ああっとこれには事情があって───」

 

その後についてはご想像におまかせする。




ミファー が仲間になった!
A2さんはずっと独りだったので傷の処置とか自分の義体について詳しそう。
ミファー普通にお手伝いしてるけどヨッホホイとか普通に生活してたし、魂だけになっても物とか動かすくらいならできるんじゃないかと。
パーヤは...ここ二話分くらい活躍なしでしたからね。
誤字脱字、解釈不足等ありましたらコメントにてお伝えいただけると幸いです。

あと良ければですが、感想いただけると嬉しいです。
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