NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
いつもご愛読頂きありがとうございます。
ご指摘を頂いて、第12話の幕間「人形と人間」はR-18タグ付けをした「NieR:Breath of the Automata R-18」の方へ移動しました(URLはあらすじに記載)。
私の配慮不足で不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。
引き続き「NieR:Breath of the Automata」をお楽しみ頂けると幸いです。
それでは
人類に栄光あれ。
人形と遺物
翌日、インパとミファーは100年越しの面会を果たした。お互いの頬には涙が零れ、溢れ出る感情を誰も止めようとはしなかった。
インパには事の全てを詳細に話した。ミファーの意志である。全てを聞き終えるとインパは黙って頷き、ミファーの同行を許してくれた。
それで私とパーヤのことなんだが...恥ずかしくて皆にはまだ秘密にしてある。当面の間は二人だけの秘密だ。
で、今私が何をしているかと言うと...馬車に揺られている。
私の背中の傷はナノマシンによる自然治癒だけでは直らず、部品の交換と修理が必要だった。だが、カカリコ村にそれができる優秀な技術士はいない。そこでハテノ村にいるプルアという女性を訪ねることにしたのだ。100年前から名が上がる人間だから、インパ同様さぞかしご高齢なのだろう。というか彼女はインパの姉らしい。
...本当に修理できるのか...?
そんなことを考えながら、私はがたごととリズミカルに揺れる馬車の中で暇を持て余していた。
ミファーは私の中で休息を取っている。実体化するにはそれなりに体力が必要らしく、一日遊び回った後はこうして寝ていることが多い。
隣を見ると、パーヤも私の肩を借りてすうすうと寝息を立てている。私の前でのみ見せてくれる無防備な姿に鼓動が早くなるが、ぐっと堪えてその白銀色の髪を触るに留める。
さらさらのその髪は私の指につかえることなく滑り落ち、彼女の肩へと帰っていく。どこをとっても美しく、可愛らしい私のパートナーを、ついまじまじと見つめてしまう。
「...あまり見られると、恥ずかしいです...」
視線に気づき、彼女が目を覚ます。
「...すまん。つい、な。」
詫びの口付けをすると、彼女は機嫌のいい猫のようにごろごろと私に寄り添ってくる。
幸福に満ちた一時を堪能していると、それを壊そうとする殺気が馬車の外から注がれた。
「...二号さん。」
「ああ。...二人だな。」
「行ってまいります。」
「気をつけろよ。」
せっかくの甘い一時を邪魔され、機嫌の悪そうな顔をしてパーヤは外へ出ていく。数分も経たないうちに断末魔が二度聞こえ、何事もなかったかのようにパーヤが戻ってくる。
「随分と早かったな。」
「...はい。ですが、少し貰ってしまいました。イーガ団め...」
腕に刃の掠った傷がある。らしくない。
「感情に身を任せるのは良くないですね。判断が鈍ってしまう。」
よっぽど機嫌を損ねたらしい。私たちを襲った連中はとんでもない目にあったに違いない。
「ハテノ塔が見えてきましたね。ハテノ村ももうすぐです」
簡単に処置を済ませると、外を見ながらパーヤは言う。
「なあ。塔ってなんなんだ?」
私はずっと気になっていた素朴な疑問を投げかける。
「古代の遺物であることは間違いないのですが...詳しくは分かっていないのです。あの塔は勇者様の目覚めとほぼ同時期に各地に出現しました。その地域の地形を読み取る装置のようなものだろうと推測されています。」
「なるほどな。」
どうやら勇者様を助けるためのものらしい。古代の遺物だって言うのなら同じ遺物の「神獣」である私も使えないのだろうか。
そう思いながらハテノ塔を見つめていると、不意に身体が軽くなる。
自らの義体が青白い線に分解されていき、実体が薄れていく。
「...な、なんだこれ。」
車内に目を戻せば、パーヤも実体が消えかかっている。
「分かりません!待って、二号さ──」
その言葉を最後に私達は馬車の中から消えた。
「...っ!」
目が覚めると私は空の中にいた。雲が近くに見え、陸が遥か遠くに見える。
「二号さん!」
パーヤが私を呼び、私を抱き締める。
「無事でよかった。それで...ここはどこだ?」
「...どうやら私達、塔の上にいるみたいです。」
見下ろすと、さっきまで乗っていた馬車がある。どういう訳か知らないが、どうやら私達は塔の上に転送されたようだ。
「なんでこんな所に...」
「分かりません...何か、心当たりはありませんか?」
「心当たりと言われても...古代の遺物なら神獣の私も使えるんじゃないかーとか考えながら塔を見てたらここに飛ばされて...」
「それですよ!おそらく神獣である二号さんの呼びかけにこの塔が応じて、私達を呼び寄せたのでは無いでしょうか?」
手を顎において、パーヤが考える。
「その可能性が高いな。...てことは各地に生えてる塔も使えるってことか?」
「...そういうことになりますね。とりあえず今は馬車に戻りましょう。御者も私たちがいないことに気づいたようです。」
「そうだな。」
「...お身体を支えます。ゆっくり行きましょう。」
「...老人じゃないんだ。多少なら動いたりできる。お前たち人間はアンドロイドを心配しすぎだ...」
介護されそうになって、私は呆れた声でそう呟く。
「すいません...」
少しだけ寂しそうに、パーヤはそう応えた。
私達ははしご状になっている壁と足場を伝ってなんとか地上に降りた。
前はポッドがいたから高い場所からの降下は楽だったが...今アイツはいない。
少しだけ寂しさを感じつつ、私は地上から塔を見上げる。
...前の世界の転送装置と同じように使えるってことだな。
これで多少の移動は楽になりそうだ。
「詳しい効果については傷が治ってから検証しましょう。」
「治りはしない。直るんだ。」
彼女の言葉を、私は咎める。パーヤは私を人間扱いする節がある。前にも言ったように、私はアンドロイドだ。緩い感情は、選択を迫られた時に身を滅ぼす。
「...分かりました。」
浮かない顔をしながら、パーヤは渋々了承する。
私は彼女を愛している。愛しているからこそ、間違った価値観を覚えて欲しくはない。
少しばかりの心の行違いを感じつつ、私達は馬車へと戻った。
こちらから第二章の始まりです。
今後もどうぞよろしくお願いします。
誤字脱字、解釈不足等ありましたらコメントにてお伝え頂けると幸いです。