NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
忙しくて更新が遅れてしまい申し訳ないです。
遂にあの人たちが登場です。
人類に栄光あれ。
「これでよし、っと...」
頼まれていた素材を袋に詰め込み、わたくしパーヤは立ち上がる。二号さんの修理用のパーツやら機器やらに使うそうだ。詳しいことはプルア様本人にしか分からない。
ここ数日、私は忙しなく素材集めに勤しんでいる。鉱石やら樹液やら、時には魔物素材までも注文され、私はこのハイラルの大地を休む間もなく駆け回っていた。
「あとは...」
集めた素材を確認し、注文と照らし合せる。
「...古代の遺物から取れる部品ですか。」
メモ用紙には古代の歯車とシャフト、そしてコアがそれなりの量の注文で書かれている。この辺りで遺物の部品が沢山取れる場所となると...
「ハテノ砦跡のガーディアン群から採取できそうですね。」
──...ガーディアンが沢山いるの?──
おつかいの内容を確認する私の隣で、ミファー様が不安げな顔をしている。
ミファー様は二号さんの近くにしか実態化できなかったのだが──恐らく魂とそれを現世に繋ぎ止める神獣が離れすぎると、その効果が薄れてしまうのでしょう──プルア様が開発してくださった『拡張器』のおかげで、その魂をより広範囲に実態化させることができるようになったそう。限度はあるものの、こうしてハテノ村の外でも行動を共にできるというのはとても嬉しいものである。
「はい。と言っても100年前に稼働停止している壊れたガーディアンです。ハテノ砦は当時激戦の地であったらしく、その戦いの爪痕が今でもこうして残っているのです。」
──...そっか。厄災に乗っ取られたガーディアンは、こんなところにまで攻め込んできてたんだ...──
悲しそうにミファー様が俯く。その姿は厄災に敗北し、命を落とした己の弱さへの嘆きと、救えたかもしれない多くの命への懺悔が込められているように見える。
「...ミファー様が気に病まれることではありません。いくら英傑様と言えど、このハイラル全てを癒すことは不可能でございます。それは当たり前の事です。...それに、砦で戦った者たちは皆、最期まで勇敢に戦い抜いたそうです。貴方と同じように。」
私の言葉を聞いて、ミファー様は顔を上げる。
──...うん。そうだね。今はただ...彼らの魂が救われていることを...祈るだけだね。──
「はい。それが最善かと私も思います。」
ミファーは上を向き、両手を握って祈りを捧げる。この地に眠る、多くの尊き犠牲の為に。
──いきましょう。──
再び前を向くその大きな瞳は、かつて英傑と呼ばれた姫君の強き心を、静かに物語っていた。
──────
ギナビーの森を出てからハテノ砦までの道のりは問題なく進むことができた。道中何度か魔物に襲われることはあったが、ミファー様のお力添えもあり、難なく退けることができた。
「そういえばミファー様、先程使っていたあの槍は...?」
そう。魔物との戦いの時には、ミファー様の手にはいつの間にか青白い光を放つ三又の槍が握られていた。だがこうして歩いている時は、その姿はどこにも見受けられない。
──ああ、あの槍はね、出てきてーってお願いすると出てくるんだよ。──
さも当たり前かのように、彼女はそう語る。
「...と、言いますと...?」
──...カースガノンがね、これと似たことをやってたの。A2さんと会った時にそういえばと思ってやってみたら...なんかできちゃった。──
「な、なるほど。ちなみにどうやって出し入れしているのですか?」
──うーん...なんというかこう...ぐってなって、それでぱぁーってなると出てきて...もういいよーって心の中で言うと無くなる...って感じかな。──
「そ、そうなのですね...」
ミファー様は意外と感覚派の人だったりするらしい。天才肌に言葉は必要ないのだ。
そうこうしているうちに、私とミファー様は目的の場所へとたどり着いた。
「...ハテノ砦。」
...見渡す限り、錆のついた武器と壊れたガーディアンの死骸で溢れている。この砦を守るため散っていた生命の残滓と、殺戮機械と化したカラクリ兵の亡骸が、かつてこの地で一体何が起こったのかを鮮明に物語っている。そんな惨憺たる激戦の地に、苔や草木は100年前の惨劇などお構い無しにその身体をのびのびと成長させてゆく。
諸行無常。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
「...行きましょう。」
──うん。──
歴史巡りが今日の目的では無い。日もだいぶ落ちてきたし、早めに済ませたいところである。
苔の生えたガーディアンの残骸には、まだ使える部品がそれなりに残されていた。私はメモにあった部品を照らし合わせて回収し、ミファー様には周囲の警戒をしてもらっている。
「うーん...古代のコア...そのままの状態で使えそうなものはなかなか見つかりませんね...」
古代のコア。遺物を動かす原動力ともなるその部品は、100年も前のガラクタからはなかなか入手できない希少な素材だった。
──場所を移動してみる?──
「...そうですね。あちらの方も探してみましょう。」
ミファー様の提案を承諾し、荷物を抱えて移動しようとしたその時だった。
──っ!危ない!──
「え?」
ミファー様が私に体当たりし、私達はごろごろと転がり込む。
私が数秒前まで立っていた場所を青白い光線が素通りし、大地に当たって爆散する。
見れば、壊れていたはずのガーディアンが赤紫色に点灯し、その青い瞳でこちらに照準を合わせていた。
──大丈夫?──
「ええ。感謝します。でも、この中にまだ動ける個体がいるだなんて...」
──とりあえず逃げましょう。ここは危険だわ。──
ミファー様に手を引かれて起き上がり、私達は姿勢を低くして駆け出す。
ガーディアンの瞳から出た赤い照準線が、私達の心臓を捉えている。何度も襲いかかる光線を避けながら、私はミファー様に提案する。
「私が囮になります。私が奴の注意を引き付けている間に、ミファー様は背後から攻撃を!」
──わかった!気をつけて!──
二手に別れ、私はガーディアンの前をジグザグに走る。青い瞳から発せられるレーザーを紙一重で避け、ガーディアンの注意を引き続ける。
「...っ!今です!」
ミファー様が完全にガーディアンの死角に回り込み、青白い槍を標的に向かって定める。
よし、いける。そう思った次の瞬間──ガーディアンがぐるりと振り返り、ミファー様目掛けて閃光を放つ。そんな、奴は確かに私の方を向いていたのに──
「ミファー様!危ない!」
投擲姿勢に入ってしまった彼女には、そのレーザーを避ける術がない。
青白い光の槍は、一切の慈悲もなく彼女の胸元へと飛び込んでいく。
どん。
鈍い音と共に、爆風が当たりを包み込む。
「ミファーさまっ!!!」
大急ぎで彼女の元へと走る。晴れた煙の中にはミファー様の無惨な姿が──
──無かった。
赤髪で癖毛。スラリとしたスタイルで、右手にはギザ刃の剣が握られている。左手にはボロボロの盾が構えられており、腰を落としてミファー様を守るように立っていた。
「あーあ。気に入ってたんだけどなーこの盾。」
快活な声で、彼女は呟く。
「...っ!まだです!」
「お?」
ガーディアンの照準が、赤髪の女性の額を捉える。もう一撃が来たら、盾の壊れた彼女は防ぐことができない。
私は全力で駆けた。世界すら止まっているように思えるその刹那、私の伸ばした腕は二人の元へ────...あと一歩、届かない。
ガーディアンの虚ろな瞳から、再び青白い光線が発せられる。その筋は私の目の前を通り過ぎ、女性の額へ──
「──伏せて。」
鈴のような声が聞こえ、赤髪の女性は私とミファー様を抱えて地面に倒れ込む。
頭上を通り過ぎたレーザーはその後ろにいたもう一人の赤髪の女性──こちらはストレートヘアーだ──の元へと迫る。だが彼女はその光景に焦る素振りも見せず、まるで舞踊のようにくるりと背を向け、迫り来る光線を遠心力を乗せた右手の盾で綺麗に弾き返した。
返された閃光は再びガーディアンの元へ吸い込まれていき、轟音とともにそれを破壊した。
「大丈夫?」
ストレートの女性が、私に向かって手を伸ばす。
「はい...助けて頂きありがとうございました。」
「そう、良かった。二人とも怪我はなさそうね。」
翡翠色の瞳が、優しく私を見つめている。
「なんとか...本当に危ないところでした。感謝してもしきれません。」
「別に気にすんなって。アタシたちはやるべきことをやっただけさ。」
ミファー様の手を取って起こしながら、癖毛の女性が答える。
二人の顔は瓜二つで、髪の違いがなければ完全に同一人物に見えてしまう程だった。
「それじゃあ、私たちはもう行くので。またどこかで会いましょう。」
──あ、待って!何かお礼を...──
ミファー様が慌てて声をかける。
「いいっていいって。次会った時に一杯奢ってくれよな。」
二人は私達に軽く手を振り、去っていく。助けて頂いたのに、何もできないなんて...
「あの!」
私の呼び掛けに、二人は再びこちらを振り向く。
「せ、せめてお名前を!」
二人は顔を見合わせ、にこりと微笑んで言う。
「いずれ分かるさ。」
「また、『その時』に会いましょう。」
「じゃあな!パーヤ、ミファー!」
...あれ?なんで私たちの名前を知って──
そう考えた時にはもう、彼女たちの姿はそこにはなかった。
赤髪でストレートと巻き毛の双子の女性って誰なんやろな...
誤字脱字、解釈不足等ありましたらコメントにてお伝え頂けると幸いです。