NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
ストーリー動かしていきます。
人類に栄光あれ。
人形と不穏
「...と、言う訳じゃ。そなたらにはデスマウンテンへ赴き、再び活動を始めたヴァ・ルーダニアの調査をしてもらいたい。」
扇子で膝を軽く叩き、インパは話を締め括った。
「なるほどな。ルッタの次はルーダニアって訳だ。まったく100年前の英傑様たちは随分と活動的だことで...」
皮肉交じり私が返事をすると、ミファーがもじもじとしながら私の背に隠れようとする。
「...何度も調査を頼んでしまってすまんの。しかしリンクは今、ヴァ・メドーを解放するべくリトの村へ向かっておる。頼れるのはお主らだけなのじゃ...」
インパは項垂れるように視線を落とし、私への謝罪の思いを述べた。
「別に気にしなくていい。どの道やることもないし...それに、カカリコ村の人達には色々と世話になっている。」
服やら寝床やらを無償で施して貰っているのだ。その恩を返すことくらい普通だろう。
「ふむ...やはりお主は優しい心の持ち主じゃな...その思い、有難く頂戴するとしようかの。」
インパは満足そうに目尻にシワを寄せる。
私が「優しい」のかどうかはよく分からない──別に受けた恩を返しているだけのような気がする──が、とにかく次の目的地はハイラルの北面に聳え立つ巨大火山、デスマウンテンとなった。
──────
ラネールの塔にはルッタの調査の際に一度赴いたことがあったので「転送」を使うことができた。手を繋いだ私とパーヤの身体は青白い糸のように解けていき、そして塔の頂上で再構築される。便利な機能だが、胸の内がぞわぞわとする感覚だけが難点だ。
「...変な感じだな。」
「私は好きですよ?二号さんに混ざっていくような...二号さんと一つになれたような感覚になって...」
うっとりとした表情のパーヤを見て、多用は禁物であることを悟った。
塔を降りて魔物を蹴散らし、私達はデスマウンテン登山の準備地点、山麓の馬宿へと向かう。
道中、私達は特に言葉を交わすこともなかった。ミファーも今は眠っている期間なので、聞こえるのは動物や魔物の鳴き声と私たちの足音くらいである。別に気まずくもない。むしろ、どこか心地よかった。信頼があるからこその沈黙。そんな関係は初めてだった。
しかし、満たされた静寂は山頂から轟く咆哮によって一瞬で破壊される。
「...今のは」
「...ルーダニアの咆哮です。どうやら情報通り、再度活動を開始しているようですね。」
パーヤも警戒心を顕にしながら山頂の方を見つめている。
「人的被害はまだ無いんだよな?」
「そのようです。今のところ定期的に咆哮が聞こえているだけで、ルーダニアによる攻撃的な手段はまだ取られていません。」
「繰り手の魂は何をしているんだか...」
別に暴れるわけでもなく、ただ叫ぶだけ。何か言いたいことでもあるのだろうか。
「...とにかく、先を急ぎましょう。予定を前倒しして今日中に山麓の馬宿に宿泊して登山準備、出発は日の出前でどうですか?」
「ああ。それでいい。」
引き締まった空気を感じながら、私とパーヤは移動速度を上げた。
──────
~英傑 ダルケル~
聳え立つ岩々をがしりと掴み、神獣ヴァ・ルーダニアはデスマウンテンの山肌を堂々と歩く。
「よおし...この神獣を操るコツ...掴めてきたぜ。」
青年と共に神獣に乗っているのは、岩のような巨体に鋼の鎖を肩からかけた大男である。
「ゴロンの英傑として、このダルケル様にも意地があるからな。」
身体を伸ばしながら、ダルケルと名乗る大男は青年に話しかける。
「神獣の訓練で、外の3人に後れを取るわけにゃあいかねえ。」
青年から視線を外し、ダルケルはこの雄大なデスマウンテンを見渡す。
「俺はよ、ここから見る景色が好きなんだ。見ろよ...あの美しい、ごつごつした美味そうな岩の尾根...」
その後ダルケルは決意をその目に灯し、堂々と言い放つ。
「厄災ガノンとやらがどんなやつかは知らねえけどよ...俺は必ず、この景色を守って見せるぜ!なあ?相棒!」
気合い注入と言わんばかりに、ダルケルはその大きな平手で青年の背中をどしんと叩く。
全身の骨が粉砕されそうな程の強烈な一打だったが、青年はやや痛そうによろけて、腰をゴキゴキさせている程度である。
「そういやあ、おめえを姫さんの御付の騎士に選んだのはハイラル王だってな?」
ダルケルは青年に向き直り、話を続ける。
「直々の指名じゃねえか、頑張んな!」
今度は優しく青年の肩をぽんと叩き、ダルケルは彼を鼓舞する。
「まあ、あの姫さんはちいと気合い入りすぎっつうか余裕がねえっつうか...特におめえには──」
その時、話の骨を折るように、火山がぐらぐらと振動を始めた。
「ん?...何だ...?」
揺れは次第に大きくなり、ついに近くの岩肌が崩れ、巨大な落石が二人を襲う。
「うぉぉおおおお!!」
ダルケルは大きな雄叫びを上げるとその身体の周りに橙色の防壁を展開し、容易く落石を粉砕した。
「ふぅ...危なかったなあ...しかし何だぁ?ここ数十年、デスマウンテンは静かだったのによ...」
少しばかり不安げな表情で、ダルケルは火山を見上げる。
「しかも落石が起こる程山が荒ぶるってこ事は.....いや、まさかな...」
不穏な空気が立ち込める中、二人はただ、火山を見上げることしかできなかった。
これは在りし日の彼の記憶...おく...お...く...く、くくくくく、kkkkk...
「ようやくお目覚めか。ヨルハ機体プロトタイプ アタッカー2号。」
──────
「二号さん!」
パーヤの声が聞こえて、私はがばりと起き上がる。
「...っああ!はぁっ、はぁっ...」
呼吸は乱れ、全身からは体温調節のための膨大な量の水分が分泌されている。
「かなりうなされていたので...大丈夫ですか...?」
パーヤが不安そうに私の顔を覗き込む。
「...行くぞ。時間がない。」
私はパーヤに軽く礼を言って寝床から出る。
「え?行くって...ちょ、ちょっと待ってください!」
急いで荷物をまとめ、出発の準備をする。まだ夜も深いが、そんなことは言っていられない。
あの「夢」の最後...最後に聞こえた声がもし、本物ならば。
そしてこの「夢」が神獣ルーダニアから私に直接送信されたものだとするならば。
...奴は、消えたはずなのに。
私とポッドがあの塔の中で消滅させたはずなのに。
不安と焦燥に駆られながら、私は寝静まった馬宿を後にした。
夢の最後にマーボー神父の声が聞こえたらそりゃあ焦りますわな...
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