NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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大変長らくおまたせしました。年末に向けていろいろ忙しくなっているので更新ペースが少々落ちそうです。ご容赦ください。
人類に栄光あれ。


人形と炎の神獣

今、私たちはルーダニアの甲板にあるメイン制御装置の前にいる。ルーダニアの内部はしんと静まり返っていて、デスマウンテンの火口にいるとは思えない程だった。違和感という言葉が一番似合うのはまさにこの光景なのだろう。何も間違っていないが何かが間違っている。そんな状況であった。

“ A2は分かっていると思うが...ルーダニアは今、得体の知れねぇ奴から攻撃を受けている。このメイン制御装置はまだ無事だが、各所に配置された5つの制御装置の内3つがやられちまった。俺も何とか食い止めてはいるが...奴の攻撃はこの世界じゃ見た事がねぇモンだ。明確な対策が立てられねぇ。”

脳に直接響くダルケルの声からは、落ち着きを保ちつつも微かに焦燥が感じとれる。

「だろうな。アンタが言う通り、奴は文字通りこの世界の生まれじゃない。」

“ お前さん、アレについて何か知っているのか?”

ダルケルが反応する。

「知ってるも何も、私も奴と同じ世界の生まれ...そして奴を消したのも私...だったはずだ。」

私はかいつまんで事のあらましを彼に説明する。

“ なるほどな。なんで蘇ったかはわからねぇが...お前さんの言ってることが本当なら、アレを倒す手段なんてのはこのハイラルにはないんじゃねぇのか?”

「いや、そんなことはない...はず。」

私はこの世界での感覚を頼りに、ひとつの仮説を述べる。

「この世界に渡ったということは、この世界に合った存在に作り替えられるってことだ。現に私は元いた世界では神獣なんて役回りじゃなかった。」

──てことは...その敵もまた、ハイラルの世界に適したモノに変えられているってこと?──

「多分な。じゃなきゃ神獣の内部になんて入れないだろう。」

「でも、その敵はデータなんですよね?私のような生身の人間や二号さんの攻撃が効くとは...」

確かに。あの時はポッドがいたけれど、ハッキングができない私じゃ触れることすら敵わないのではないか?

“ そいつは大丈夫だ。A2の神獣としての力を経由すれば、お前さんたちもメイン制御装置から神獣の動力部にアクセスできる。倒し方は分からねぇが...実際に奴と何度か戦って、確かに殴ることはできた。ダメージになってはいなさそうだったが...とにかく触れることは可能だ。”

「なるほど。神獣のデータ内部へ侵入さえしてしまえば、私たちの物理攻撃も同様に情報攻撃に変換されると...」

...小難しい話は置いてけぼりにされているようでなんか気に食わない。

「...そういうことだ。」

──A2、知ったかぶりはよくないよ。──

「うるさい。いいから行くぞ。」

義体を共有しているとこういうところで面倒だ。

 

メイン制御装置に手をかざすと、私の義体に反応してルーダニアが機能し始める。私たちの身体は青白い光の糸のように解け、制御装置の内部へと吸い込まれる。

どういう訳か知らないが、私にはまだ、前の世界でやり残したことがあるようだ。機械生命体を...いや、奴を完全にぶっ壊して、この世界から消滅させる。私の世界から来た災いだ。私が解決してみせる。

復讐のためではなく、彼女を...皆を守るため。瞳に灯した意志は、鮮やかな蒼色をしていた。

──────

「ここがルーダニアの...本当の内部...」

そこは情報空間そのものだった。床や壁は確かにルーダニアの形を模している。だが、キューブ型の組織で構成されている点から、確かにここが現実世界では無いことを簡単に見て取れる。

「ハッキングの時と同じ見た目だな...」

神獣も機械生命体もアンドロイドも、造られたモノという点ではどれも同じらしい。

「不思議な空間ですね...」

パーヤは警戒しながらも、物珍しそうに辺りを見回している。

──構造は大きく異なるけど、システムはルッタとあまり変わらないね。──

ミファーは床や壁を触りながら、無意識的にこの場所の情報を取得している。

“ やっと声だけの存在じゃなくなるな。”

声の方向に振り向くと、褐色の肌に白い髭の生えた大男が、肩を回しながらこちらに近づいていた。

──ダルケル...!──

ミファーは懐かしそうに、そしてやはりどこか悲しそうにダルケルの元へ駆け寄る。

“ 改めて100年振りだな、ミファー。話したいことは山ほどあるが...今はそれどころじゃねぇ。”

──うん。分かってるよ。それより...──

ミファーはダルケルの腕に手を当て、目を閉じる。

ぽうっと暖かな光が発せられたかと思うと、そこにあった傷──正確には小規模なデータのクラッシュ──が無くなっていた。

「癒しの力が使えるのか?」

──うん。力は確かにリンクに渡したんだけど、ここは心の中の世界だから...──

「心の中の世界?」

パーヤが首を傾げる。

“ ミファーは感覚派だからな...要するに、ここは全部情報でできていて、お前さんたちの身体も全部データから構成されているってのが肝ってこった。”

「つまり、使える能力は全部使えるって訳か?」

自分でも分かるくらいバカっぽい質問をする。仕方ないだろ、何度も言うが言葉にするのは苦手なんだ。

“ ま、そういうことだ。自分の思いの丈次第で、情報量はいくらでも増やせる。俺もリンクのやつに『ダルケルの護り』を渡したが...強く思えばこの空間ではちゃんと使えるぜ。”

ダルケルがいい感じにフォローしてくれる。...こいつ、私と同じ脳筋仲間だと思ったのに、意外と頭動く奴だな。

 

『敵を目前に雑談とは、随分と舐められたものだ。』

 

全身に悪寒が走る。この声、この響き、このデータの質感...

パーヤとミファーは突然現れた脅威に戦慄し、ダルケルは目を細めて警戒している。

 

『久しぶりだな、A2。』

 

少女を象った“それ”は、『塔』の時の同じように、深い余裕を含んだ男の声で私に声をかけた。




ダルケルって脳筋だけど物分り良さそう。人生経験の違いとかで。まあ個人的な見解です。
ちなみに英傑で1番好きなのがダルケルです。音楽もかなり好きで、力強さと雄大さ、そしてほんの少しの繊細さを感じられるようなあのテーマが何回聞いてもたまらんのです。
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