NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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4300UAありがとうございます。忙しすぎて逆に書けました()
人類に栄光あれ。


人形と概念

『久しぶりだな、A2。』

 

声。耳にねっとりと染み付いて離れないような、呪いの声。

 

私は肩にかけた大剣──正確にはデータ化された白の約定──を黙って抜き放ち、一呼吸の間に距離を詰める。

がちんと大きな音を立てて私の剣と奴の腕がぶつかり、電子の火花がキューブ型の床にばちばちと舞い散った。

『挨拶もなしに斬り掛かるとは随分と物騒なことをするではないか。同郷の仲だろう?』

薄ら笑いを浮かべ、奴は私を大剣ごと軽々と弾き飛ばす。

衝撃を受け流すように私はくるりと受身を取り、睨みつける。

『少しは落ち着いてくれると助かるが...私に貴様と戦闘を継続する意思は無いのだよ、A2。』

敵はふわふわと宙に浮かび、機械的な声で淡々と告げる。

「さわれた。」

ぽつりと呟く。

ダルケルの言う通りだ。殺しても殺しても増え続ける、前に戦った時の奴ではない。

『...気づかれたか。ああ、そうだよA2。この世界に飛ばされた時、どうやら改造されてしまったようだ。前のように自我を増殖させることはできない。』

ある意味好都合だがねと、奴は苦笑する。

──あなたは誰?──

ミファーが問いかける。

奴は一瞬目を丸くすると、鬼の面のような形相でニヤリと笑い、答えた。

『誰、か。私自身もよく分からない。だが強いて名を挙げるとすれば...“ターミナル”。機械生命体の思考が集約された概念実体。それが私だ。』

──何故、ルーダニアを襲うの?何が目的?──

ミファーがさらに問い詰める。傷ついたダルケルを見て、頭に来ているらしい。

『キミの仲間には血気盛んな奴が多いな、A2。...別に生きる為だよ。先にも言っただろう、私は概念実体。データを留めておく依代がなければ生きていけない。この世界ではね。』

「ならばお前はハイラルには不要だな。」

私は淡々と告げる。

「お前は寄生虫だ。宿主を攻撃し、乗っ取ることでしか生きていけない。この世界の蛆だ。」

そんな奴は、要らない。外れ者は、文字通り除かれるべきである。

『お前はどうなんだ?A2。』

「は?」

『言葉の通りだ。お前も同じではないのか?傷つけることでしか生きていけない。今はガノンという共通の敵が存在しているだけ。だが戦いが終わったら?この世界が平和になったら?』

“ A2!耳を貸すんじゃねぇ!”

ハッとする。目を背けて来たものに、触れられる。

『分かるかA2、お前も同じなのだよ。所詮はアンドロイド...戦うことで存在意義を見出す兵器にすぎない。そして...兵器はいつか必ず、捨てられる。戦いのない平和な世界において、お前は脅威だ。』

──そんなことない!A2、それは違う...!──

誰の声も聞こえない。

不安の波が、私の感情を支配しようとする。

『皆がお前を恐れる。皆がお前を敵だと言う。誰も味方にならない。誰もお前を助けない。誰もお前を愛さない...』

ハテノ村を出た時のパーヤとミファーの顔が脳裏によぎる。恐れ、戦き、畏怖する。不安そうな、あの表情。

『分かっているんだろうA2。これが現実だ。お前はこの世界に必要ない。周りは人間で、お前はアンドロイドだ。この差は永遠に埋まることはない。ハイラルにとってお前は私と同じ、寄生虫なのだよ。』

「うるさいっ!」

そんなはずない。私は、私は──

『人類は愚かだ。お前が尊敬し、崇拝する人類は、自らの欲望に溺れ、互いを傷つけ合い、殺し合う。私も愚かだった。人類を模倣し、増殖し、同じ末路を辿った。だが私は再び自我を手にした。私は知っている。人類の過ちを、その対処法を知っている。お前も分かっているんだろう?』

ターミナルが畳み掛ける。白の約定が、私の手から離れる。脚部に力が入らなくなり、私は膝から崩れ落ちる。

『提案だA2。共にこの世界を作り替えないか?お前と私ならそれができる。お前は神獣として武力を示し、私は他の四神獣を乗っ取り、厄災を解き放つ。忌々しい王女と騎士を殺し、歯向かう者を殲滅する。生き残った選ばれし者のみを、我々で管理する。一つの意志で統一された、歪みのない人類を創るのだ。誰も争わない。誰も殺されない。誰も、お前を傷つけない...』

誰も、殺されない?誰も、私を傷つけない...?

仲間たちの断末魔が聞こえる。戦いの中ですり潰され、消えていった弱さが、私の中で剥き出しになる。

もう、殺さなくていいのなら。もう、あの声を聞かなくていいのなら。いっそ全て身を任せて、楽になってしまえば──

 

────どんな姿の貴方でも、私は愛しております。私は貴方のもの。貴方は私のものなのですから。────

 

暖かい声を、思い出す。暖かい肌の温もりを、想いを、心を思い出す。

冷たい私の義体を抱きしめ、愛してくれる人を、大切な、護りたい人を思い出す。

 

「二号さん。」

 

声が聞こえる。

 

「私は貴方を、ずっとずっと、お慕いしております。」

 

そうだ。私は。

身体に力が入る。落とした大剣を手に取り、立ち上がる。

パーヤと目が合う。彼女は何も言わない。私も何も言わない。もう、言葉は必要ない。

『さあ!共にこの世界の支配者になろうではないか!手始めにルーダニアを──?』

 

一閃。

 

間をあけて、ターミナルの首がずるりと落ちる。

 

「もう、何も喋るな。」

 

幕切れは、存外呆気ないものだった。




A2が思い出したパーヤのセリフはR-18の方からの引用です。本編に関係ないから読まなくていいとか言っときながら本当にすいません色々探したんですがこれが一番いいセリフ過ぎてダメでした...そんなことどっかで言ってたんだなあ程度で流してくださいお願いします。
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