NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
お気に入りしてくださった方が少しずつ増えてきており、めちゃくちゃモチベーション上がっております。
忙しすぎない時に頑張って書き続けようと思うので引き続きよろしくお願いします。
人類に栄光あれ。
私が再起動したのは、ルーダニアを訪れてから半年がたった頃だった。
きっかけは『夢』である。姫君が襲われ、その命が奪われようとする寸前、青年が敵を蹴散らし助けるというものだった。姫君の表情から、険悪な雰囲気になることはこの一件から無くなったのだろう。そんな事を思いながら瞼を開けたら、美しい青色のベッドに寝かされてたって訳だ。
目が覚めて一番に気がついた変化は、自身の髪の長さである。肩上までで切りそろえられていた髪だが、こっちに来てから放置していたのもあって随分と長くなっていた。2Bを殺す前程とはいかないが、それでもロングヘアーに数えられる髪型だろう。気に入っていた訳では無いが、今はこれも懐かしく感じる。
隣にはパーヤが寝かされていた。私と同じで半年間ずっと眠ったままらしい。定期的にプルアがお忍びでここに来て、点滴を取り替えているという話は、私の目覚めに気づいたミファーから聞いた。
「...そうか。お前には辛い思いをさせてしまったな。」
──ううん、大丈夫。守ることはできなかったけれど...何とか二人を助けることはできた。それだけで満足だよ。──
「...そうか。それで...ここってどこなんだ?」
私はずっと気になっていたことを彼女に聞く。
──ここ?ああ、ゾーラの里の近くだよ。正確には東の貯水湖だね。元々ルッタはここにあったから、監視が仮眠するためのベッドがダムの上にあるの。ターミナルがいつ神獣を襲うか分からないし、私が入らないと貴方を動かすことができなかったから...ルッタからも近いここに寝かされてたって感じだね。──
「監視用か。にしてはかなり豪勢なダブルベッドに思えるが──」
──と、とにかく!目が覚めてよかった!──
隠すようにミファーが私の話を遮る。
「...まあ、そうだな。今のところ異常は?」
──特にないよ。向こうもだいぶ消耗してたみたい。A2も起きたし、ひとまず安心だね...──
「あとはパーヤが起きれば万事解決なんだがな...」
──その事で、言っておきたいことがあるの。──
「なんだ?」
真剣な表情で、ミファー私に顔を向ける。
──彼女が目を覚ました時、怒らないであげて。──
「...」
──貴方を刺せなかったのは、仕方のないことなの。誰でも簡単に仲間を...それも恋人を殺せる訳じゃない。──
「...そんなことは分かってるさ。でも...」
──でもじゃない。──
ミファーはぴしゃりと咎める。
「だがターミナルを逃がしたことは確かだ!アイツはガノンを使ってハイラルを支配する気なんだぞ?そうなればこの世界はおしまいさ。誰も逆らえない。誰も己の意志を持つことは許されない...そして奴にはそれを達成するだけの力がある!お前も戦って分かっただろう?簡単に倒せる相手じゃない。そのチャンスを、一番のチャンスを私たちは逃したんだぞ!」
負けじと私も反論する。あそこで奴を殺さなかったからハイラルは...みたいなことになっても全然おかしくないのだ。
──たとえそんな世界になってでも、この子は貴方の方が大切だったんだよ。──
ミファーは優しく微笑み、私を諭す。
到底理解できるものではなかった。世界とアンドロイド一人の命を天秤にかけるなんて...
「.....そんなの...バカげてる。」
私の悪態に対して、彼女は何も言わなかった。
沈黙。
──ねえA2。──
先に破ったのはミファーだった。
──人間ってね、そういう生き物なの。合理的とか人の為とか分かってても...心が、感情がそれを許さない時があるの。──
「...ターミナルの言う通りだな。愚か以外何者でもない。」
──そうだね。でもそれって幸せなことじゃない?──
「は?」
──選択肢がある。生きるためでも、誰のためでもない。自分の心のために、自分のやりたいことのために...そのためなら例え世界だって敵にできる。私はそんな感情が素晴らしいと思うし、守りたいなって思うの。──
「...」
──ねえA2。貴方には力がある。その選択を守るだけの力が。だから彼女を守ってあげて。彼女の人間らしさを奪わせないで。これ以上戦禍によって...誰かが感情を犠牲にするのはごめんだよ。──
ミファーは遠い目をしていた。まるで誰かを想うような。
その目は希望見つめているのと同時に...過去の絶望を写しているように見えた。
「...分かった。やつを逃したのは、義体を乗っ取られた私にも原因がある。それに──」
──それに?──
「それに目が覚めた時、一番気にするのはコイツだろうからな。」
私は瞼を閉じたままの恋人に優しく触れ、その額を撫でる。
──ふふっ。パーヤのことに一番詳しいのは貴方だもんね。ちょっと羨ましいな。──
「欲しくてもあげないからな。」
──そんな上手な返しができたんだね。──
「あのなあ...」
くすくすと笑うミファーに苦言を呈した後、私はパーヤの目覚めを待ち続けた。
そう。ずっと待ち続けた。
けれども。
けれどもパーヤは、起きなかった。
3章もうちょい続きます。
明日はクリスマスですね。私はリアルが全く充実していない予定が山盛りなので歯を食いしばって耐え抜きます。