NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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長らくお待たせ致しました。手術等いろいろありまして更新が遅くなりました。
5900UA感謝します。お気に入り追加してくださる方も増えてきていて、とても嬉しいです。引き続き頑張ります。
人類に栄光あれ。



双子の人形

「らっしゃい」

がらがらと店の戸を開けると、景気の良い掛け声が飛んできた。

一瞬立ち止まり、カウンター上のメニューに目を通す。時間にしておよそ0.3秒。うんうん。なかなかな悪くないレパートリーだ。

後ろから入ってくる相方の音を聞きながら、私は奥の席へ向かう。詰めずに座るのはマナー違反ってやつだからな。

「大将、醤油ラーメン一つ。」

「おう。隣の姉ちゃんは?」

連れが席に座ると、額にハチマキをつけた店主は快活な声でそう聞いた。

「そうね...じゃあ私は味噌を頂こうかしら。」

「あいよ。あんさんたちがきたってこたぁ、気合い入れ直さねぇとだな。」

「あら、別にそんなに身構えなくてもいいのよ?」

「とんでもねぇ。赤毛で双子のべっぴんさんが『ウワサのミツバちゃん』のラーメンコーナー編集者だってことは、こっちの界隈じゃ有名な話だぜ。」

なるほどな。こっちの世界でも随分と有名になったもんだ。

「世辞が上手いねぇ大将。けど、大切なのは味だよ味。知っての通り、評価にはそれなりに厳しいつもりだよアタシは。」

「分かってるぜ巻き毛の姉ちゃん。店の看板に泥は塗れねぇからな。」

「そいつは楽しみだねぇ。」

軽い雑談を交えて、大将は寸胴の裏へと消えてゆく。鼻をくすぶる香ばしい匂いが、彼のラーメンに対するたゆまぬ努力を伺わせる。これは期待できそうだ。

「楽しみね、デボル。」

どうやら相棒も同じことを考えていたらしい。

「ああ、久々にいい記事がかけそうだよ。」

──────

「おまちどーさん。醤油と味噌、チャーシュー大盛りトッピングだ。」

「あら、オプションは付けなかったはずだけど?」

「サービスだよサービス。ウチは新規さんには必ずチャーシューを大盛りにしてるんだ。姉ちゃん達だけハブにする訳にはいかねぇからな。」

ニッと笑って、大将はそう答える。

「へぇ...いいサービスじゃないか。こいつは素直に嬉しいよ。」

相手を知っての依怙贔屓だったらこっぴどく書いてやろうと思っていたが...どうやら嘘はついていないらしい。ここは彼の好意に甘えるとしよう。

カウンターに立ててある「箸」を手に取り、口に加えて片手でぱきんと割る。ポポルは箸を割るのが上手い。今日も綺麗な二等分である。

「相変わらずね、デボル。」

斜めに割れた二対の木片を見て、ポポルはくすくすと笑う。

「う、うるさい。味に関係はないだろ。」

そう言って私は邪魔にならないよう髪の毛を後ろでぎゅっと束ねる。ポポルも結び終えたのを確認すると、私達は両の手のひらを顔の前で合わせた。これがこの世界の食事の作法なのだ。

「「いただきます。」」

まずはスープから。鶏ガラ出汁の香ばしい風味に乗せて、数々の薬味、調味料の織り成すハーモニーが舌の上にじんわりと広がってくる。精密に計算されたその味の旋律に、思わず私はほうと吐息を降ろして頷いた。

「美味しいわね。」

ポポルも満足そうにしている。

次に麺...と行きたいところだが、私はここであえてチャーシューに手をつける。食べ始めて暫く経ったチャーシューは、当たり前だがスープの味がしっかりと染み渡ってしまう。ありのままのチャーシューの味を知るには、開幕に手をつけるしか方法がないのだ。

「!!」

美味い。一口噛めばほろほろと蕩けて消える霜降りのような柔らかさを持ち合わせながら、決してスープの補助輪に甘えることなくその存在感を維持している。この大将、やはり只者じゃないな。

「麺も完璧ね。最近は硬めが流行りだけれども...やりすぎは帰って麺とスープの調和を乱すわ。それを太麺にすることで歯ごたえと味の調律を両対応した美味しさを作り上げている。」

「さすがだな姉ちゃん。俺も何年も麺のを研究した甲斐があるってもんだ。」

「膨大な時間の試行錯誤がなければなかなかこの回答にはたどり着けないわ。自信をっていい点よ。」

辛口で有名なあのポポルのべた褒めである。それだけこの一品は仕上がっているってことだ。

その後も私たちは感情の赴くままに麺を啜った。額にはいつの間にか体温調節システムによって汗が流れ、義体が熱を帯びていることに気づいたのは器の底が見えた後だった。

「「ご馳走様でした。」」

はじめと同じように顔の前で手のひらを合わせ、感謝の気持ちを述べる。

「あいよ!また来てくれよな!」

次の仕込みをしながら、店主は快活な声でそう答えた。

──────

「ふぃ~ちっと食いすぎたかもなぁ...」

「...私も。そもそもこの身体に経口摂取は必要ないのに...」

「まあ、いいんじゃないか?幸せだし。」

「幸せ、ね。」

ポポルが暗い表情をする。

「ねぇデボル──」

「いいんだよ。多分。」

私は彼女の言葉を遮って言う。

「誰かの幸せを願うためにはさ、願う人が幸せじゃなきゃいけないんだ。不幸な人が他人の幸せを願うとさ、願われた方はその不幸な人を気にせずにはいられない。それってありがた迷惑だろう?だからもし、私たちに第二のチャンスが与えられたなら...人類存続を願う権利が、もう一度与えられたとするなら...」

「幸せじゃなきゃ、いけないのね。」

「そういうことだ。別に誰かが決めた訳でもない、アタシの持論に過ぎないけどな。」

「ううん。それが正しいと思う。そうやって、私たちは生きてきたのだから。」

「そうだな。だからさ、思うんだ。もう罪の中身も覚えていないけど...償わなければならない大罪を犯した私たちの仲間はきっとさ...」

「きっと、幸せじゃなかったんでしょうね...」

「或いは、目の前の...当たり前の幸せに、気がつかなかったのか...」

私とポポルは、無意識に空を見上げる。

この世界は広い。雄大な自然の中に、多くの生命が生まれ、育まれ、そして死んでゆく。

美しい、生と死の螺旋を、私たちは見守っている。

そして何より、この世界には人類がいる。

愛してやまない私たちの父であり、母であり、そして神である存在。

古い記憶は何も覚えていなくても、私たちの底にあるものが、なにか大きなものが告げるのだ。

「人類を存続させろ」と。

その為ならば、私たちはどんな苦労も惜しまない。たとえそれが許されざる「幸福」であろうとも。

 

それが時に、誰かの幸福を歪ませてしまうとしても。

 

『遅い。部品は集まったのか?』

通信が入る。無機質な男性の声。この世界で通信機能を使えるのは、私たちくらいだろう。

「そう焦るなって。こっちだって仕事があるんだ。」

『例の文字書きか。フン。随分といい身分になったな、デボル、ポポル。』

「カモフラージュのためよ、仕方がないでしょう。それに必要なものは集まったわ。もう向かってる。」

『急げ。ヤツらとの戦闘による消耗が想定よりも大きい。』

「ああ。だが条件は忘れていないだろうな。」

『分かっているさ。「人類の存続」だろう?A2はこちらの話に乗らなかったがな。』

「...そうか。だが、いずれ分かるさ。そのために、ツレを助けたんだ。」

『そのせいで私の疲弊に繋がったのだがな。どうしてA2をこちらに引き込もうとする?奴がいなくても計画自体は──』

「この件に関しては文句は言わない約束でしょう。それとも、この部品が欲しくないのかしら?」

ポポルが割り込む。

『...まあいい。詳しくは会って話す。』

 

「りょーかい。また話そうぜ、ターミナル。」

 

全て、人類のために。

その為ならば、私たちは手段を選ばない。




アニメNieR:Automata ver.1.1a始まりましたね!今作にはリリィがいるのでA2大好き人間としてはそこら辺非常にゾクゾクしております。
早く登場しないかなあA2...
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