NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
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新章へ突入しようと目論んでおります。それでは。
人類に栄光あれ。
人形のやすみ
半日程度の出来事だと思っていたが...どうやら帰ってくるまでに2週間もかかったらしい。心象世界から出てきてみれば、目にたっぷりとクマをつけたプルアがわあわあ騒ぎ始めて大変だった。それはもう心配してくれていた様子で、私とパーヤをその短い手でぎゅうと抱きしめてはガミガミと叱りだし、泣き始めたと思ったら突然ニヤニヤし始めたりと、とにかく情緒が不安定だったので軽く寝かせておいた。
「.......心配、したんだからネ。」
こんな女々しい言葉を言う人だったのかとなんだか暖かい気持ちになったところで、彼女の話は終わらせておこう。
実際に大変だったのは、プルアではなくパーヤの方であった。長期間眠りについていた彼女の身体は当然イレギュラーまみれ。当たり前だがすぐに動かせるものではないらしく、当面の間リハビリ?とやらが必要だそうで。聞いた感じ、人類は長時間動かないでいると筋肉が石のように固まってしまうらしい。アンドロイドもアジを食べると体液が凝固して全身が固まるって話を誰かの記憶に垣間見た気がするが、そんな感じなのだろうか。
とにかくそんな立つこともままならない身体にもかかわらず、パーヤは私に無理やりついて歩こうとするものだから、食べ物を取りに行くのだって彼女を宥めるのに一苦労だった。加えて動かない身体や長時間眠りについていたことにも責任を感じているらしく、そんな考えから必要以上のリハビリもしようとしてしまう...かえって回復が遅くなるとプルアに散々注意されていたのだが、彼女がそうしてしまうのも無理はない。結局私が付きっきりで看病兼監視をすることにして、パーヤがこっそり部屋を抜け出して鍛錬をしようとするのを防いでいるのが現状である。まあ私としては彼女とこんなにもゆったりとした時を過ごせる時間は今までになかったので、パーヤには悪いがかなり心は上向きになっていた。
「こんなにも...こんなにも弱っていたとは...」
彼女がショックを受けるのも仕方がない。箸を持つ手すら力が入りにくく震えてしまうのだ。自身の弱り具合に嫌でも目がいってしまう。誰かの足でまといになることを嫌がる気持ちは私もよく分かる。彼女は今、まさにその焦燥感に苛まれているのだろう。
だから私は、なるべく彼女とのスキンシップを増やすことにした。人の慰め方は分からないし、コミュニケーションを取ることが苦手な自信はあるのだが、私が落ち込んでいた時少なくとも四号はそうしてくれた。それが私には嬉しかった。パーヤにとっても嬉しいものかは分からないが、彼女も嫌がってはいないあたり──私にはむしろ満更でもなさそうに見えるが──間違いではなさそうだ。
こうして考えてみると、いつの間にか私は彼女を昔の私と重ねていたように見える。仲間に頼りきりで、活躍できない焦燥感と迷惑をかけてしまう不安に頭を抱えていた私。そんな私にとって、やはり四号はかけがえのない存在だった。彼女の声が、言葉が、温もりが...そして、犠牲があったから。私は今、私としてこの世界に存在していられる。二号にとっての四号であったように、パーヤにとっての二号でありたい。あの世界では復讐しか生きる糧がなかった私が、沢山の出会いを経て、今はそう素直に思えるのだった。
それとこれは余談だが、私も料理とやらを嗜むようになった。とりあえず即席麺こと、湯を入れて3分待つ料理は作れるようになった。プルアに自慢したら「それは料理ではない」と一蹴されてしまったが、パーヤがすごいすごいと褒めてくれたので私も成長していることは間違いないのだろう。
まあそんなことがありつつも、ハテノ村での幸せな療養期間は平和に、あっという間に過ぎていった。
そして私は今日、再び『夢』を見た。
──────
~予兆~
「たいした傷では...ないようですが...」
周りに転がるのは、魔物の屍。
「けれど、このところ少し無茶し過ぎです。」
姫君は青年の傷を手当しながら口を尖らせる。
「貴方だって、不死身じゃないんですよ?」
そう言って彼女は眼前の光景に目をやる。釣られるように、青年の瞳もそちらを向いた。
おびただしい数の、死体。しかし人間のものはひとつもなく、ただ魔物の亡骸だけが、道を埋めるように横たわっていた。その中には大型の魔獣も多く含まれていて、その戦闘がとてつもなく過酷であったことを易々と想像させる。
全て、青年が倒したのだろうか。退魔の剣の騎士の強さは、神話の域に勝るとも劣らぬように思える。
「最近、魔物に襲われたという報告が増えています。あのような強靭な種族まで混じってきていると...」
姫君が言う。
「やはりこれは、厄災復活の予兆と考えるべきなのでしょうか...」
不安を隠せない彼女の瞳には、人々の安寧を脅かす魔物への恐怖と、自らの使命に対する焦燥感が、じんわりと滲んでいる。だがその表情もすぐに消え去り、姫君は立ち上がってはたはたと土埃を払った。
「さあ、急ぎましょう。」
彼女の心は強い。
「最悪を想定し、万全の備えを敷いておかねばなりません。」
青年も立ち上がり、歩き出す。
二人の足取りは、しっかりとしたものだった。まるで心の底に潜む不安に、そっと蓋をするかのように。
予兆は確かに、このハイラル全土を深い、底の見えない闇に陥れようとするそれを、しっかりと捉えていた。
その時は、近い。
これは在りし日の彼の記憶──
──────
この一年近い間、私はひとつも『夢』を見なかった。それは、「何も起きなかった」からだと予想している。ターミナルも動きを見せず、厄災の気配が強まることも感じられない。長い眠りから目覚めた勇者も今は力をつけるべく、各地の遺跡を回っているとインパから聞いた。そう、この一年間は互いにとって力を蓄える時期であり、その結果「何も起きなかった」時期なのである。
それが今、確かに破られたのだと、夢は私に語りかけてくるようにも思えた。
ただ、それが確実かどうかは分からない。そもそもリンクの記憶を私が見る理由も分からないし、何より100年前何があったのかを私は実際に目にした訳では無ない。大型の魔獣──ゾーラの人々が『ライネル』と呼んで恐れていたもののに似ていた──を何体も討伐するだなんて人間離れの所業を写したこの夢が、本当にあったことなのかも事実かどうか怪しいものだ。
隣ですうすうと寝息をたてるパーヤから目を離し、私は物思いにふける。
『夢』は、必ず何かが起こる時に見る。今までそうであったように、この夢も恐らく、何かが起きることを暗示している。
それが良いことなのか、それとも悪いことなのか。
...私には分からない。
夢は、ただの夢。
ただ「予兆」だけが、私の目の前に佇んでいる。
一つだけ言えることは「何かが起こる」ということ。
ただ、それだけである。
「A2さん!伝言です!」
そんなつかの間の気休めは、一瞬にして砕け散った。
慌ただしい様子で、シモンが部屋にばたばたと駆け込んできたのである。
「...どうした?」
「そ、それが...『リトの村』に着陸していた『神獣ヴァ・メドー』が再び飛行を開始したとのことで──」
神獣ヴァ・メドー...ルーダニアでの戦いの後、リンクによって厄災の手から解放されたって話の...
「...詳しく、聞かせてくれ。」
世界を動かす大きな歯車は、今日も無慈悲に私を取り囲んで離さないのであった。
アンケートの結果、リトの村に行くことにしました。ご協力ありがとうございました。
アニメNieRとっても良いですね...アネモネのポジションがリリィになっているという形なのでしょうか。考察等ありましたらコメントにてお聞かせください。
余談ですが、私はamazarashiさんのアンチノミーがとっても好きでございます。ほんと最高。