NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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7900UAありがとうございます。時間が空き次第どしどし更新していきたいと思っています。
今回ややグロです。
人類に栄光あれ。


狂える人形

パーヤのもとを離れてから、二週間は経っただろうか。旅の景色はいつの間にか山や森から雪原へと様変わりしていた。

色褪せた世界を、私は駆け抜けていく。私を支配しようとする無機質な感情から、逃れるために。あの頃に、戻らないように。私は走った。あの夜に戻るために、私は走った。けれども色褪せた世界は、私を縛り付けて離そうとしなかった。それでも私は、駆け抜けた。抜け出したかった。考えないようにした。そのために走って、魔物と闘って、走って、闘って、殺して、闘って、殺して、殺して、殺して。

 

殺し続けた。

 

ある日はボコブリンの群れだった。

大量の魔物の素材が、きらきらと光って私を取り囲む。私を優しく包んで、離さないでいてくれる。とても心地よかった。だから、沢山殺した。きらきらはもっと増えた。殺して、殺して、殺して────

 

ある日はリザルフォスの群れだった。

奴らの舌を切り落とし、首を跳ね、殺した。きらきらも沢山手に入った。もっと心地よくなった。だから、沢山殺した。殺して、殺して、殺して──

 

ある日はイーガ団の襲撃だった。

奴らの得物を奪い、腕を切り落とした。奴らは殺さなくても、勝手にきらきらを置いて逃げていった。だから、余計殺したくなった。でも、奴らの逃げ足は速かった。私は嫌な気持ちになった。きらきらは手に入ったのに、私は嫌な気持ちになった。だから、最後の団員は、逃がさなかった。

右腕を引きちぎった。これで印は結べなくなった。左足を釘刺しにした。これで遠くへは逃げられなくなった。ソイツは、呻いていた。その声は、聞いたことがあるような気がした。無性に顔が見たくなった。私はイモムシのように動くソイツを仰向けにひっくり返し、仮面を剥いだ。女の顔だった。大きな瞳。艶やかな唇。額には青く彫られた紋様。

見たことのある顔。私の好きな顔。

「...に、ごう...さん...?」

聞いたことのある声。私の好きな声。

「...パーヤ?」

鳥肌が立ち、全身を悪寒が貫いた。私は何をしてしまった?

...違う。行動に恐怖したのではない。感情を恐れたのだ。こんな感情、今まで抱いたこともなかった。自分のものではない。そうだ。9Sから論理ウイルスを取り除いた時に恐らく──本当に?本当に彼の影響か?実は私の本心なのではないか?私は何を考えた?腕と足を失い、死が近づくその女に対して、私は何を思った?

 

〇〇したい。

 

私は恐怖した。私の奥底に眠る、人類へのおぞましい程の愛に、恐怖した。

そして、逃れられなかった。いや、私は、逃げようとしていなかった。

その感情はとても心地よくて、それでいて...とても綺麗だった。

これが、私の感情。私の、タカラモノ。

 

私は懐から、残心の小刀を取り出す。

パーヤは何も言わない。ただその大きな大きな瞳から、しとしとと涙を零すだけで。

私はその刀身を、彼女のその豊満な両房の間に立てる。軽く力を入れれば刀はその肢体へするすると入り込んでいき、心ノ臓を易々と貫いた。

赤く、きらきらしたものが、私の手を伝って滴る。私は今までで一番心地よい気持ちになった。私は彼女に口づけをした。パーヤも嬉しいだろう。私のことが好きなのだから。私は刀を抜き、再び突き立てた。真っ赤な体液が、勢いよく溢れ出る。私は口づけをした。とても満たされた気分になった。だからまた、刺した。きらきらが出てきた。興奮した。だから、また口づけをした。鉄の味がした。

そうやって、何度も、何度も。

 

私は彼女を〇〇した。

 

もう、きらきらしなくなってしまった。私は、その見開かれた瞳を覗いた。動かない。ただ虚空を見つめて、彼女の瞳は動かなかった。

彼女の口元を見た。ぽかんと開け放たれたその唇は、私が貪った痕が酷く滲んでいた。

彼女の身体を見た。

 

死んでいた。

 

死んでいた。死んでいた。シンデイタ。シンデイタ。シンデシンデシンデシンデシンデシンデシンデシンデ────

「うわああああああああああああああ!」

がばりと起き上がる。何だ、今のは。なんだったんだ。夢?あれが私の本心?私の奥底に眠る、私にとっての愛なのか?

冷静さを取り戻すべく、自分が何をしていたのか思い出す。悪夢にうなされることくらい、いくらでもあっただろう。そうだ。私はタバンタ大雪原で吹雪に見舞われて...運良く見つけた洞穴で小休憩をしていて...

そして私は、異変に気づいた。

寒い。寒さを感じないはずなのに。私は自身の義体を両腕で抱きしめた。

怖い。何もかもが。恐ろしい。この世界も、自分自身も。負の感情に、恐怖に呑み込まれそうになる。視界が赤くなる。どうなっている。世界が赤い。大地から瘴気が溢れ出し、魔物たちは歓喜の声を上げている。そして、目の前に浮かんでいるのは────

 

真っ赤な、月。

 

怖い。怖い。怖い。助けて。嫌だ。やめろ。やめて!誰か!怖いよ!助けて!タスケテ!私は、ワタシは、ワタシハ!

 

思考回路がオーバーヒートし、義体が強制的にシャットダウンされる。今度こそ私の意識はそぷつりと途切れ、消えた。

 

──────

 

壊れかけの人形のそばに、影がひとつ。

その外見は、鳥とも人間とも取れる。

ただ彼の身体は他の仲間とは異なり、ひとまわりもふたまわりもも大きかった。

「おや?先客がいらっしゃるようですね。ですが...」

見た目ににつかわない穏やかな声で、彼は人形に話しかける。

「大丈夫でしょうか?良ければ近辺の村まで案内しますよ?」

彼の声かけに、人形が答える様子はない。

「...仕方がありません。どうやら眠ってしまっているようなので、背負って行きましょう。楽器がある分、かなり背負いにくいですが...こんな場所にずっと居たら、それこそ本当に死んでしまいます。」

羽にも見える大きな両腕で、彼は人形をだき抱える。

「...!お、重い...!女性の方にこのようなことを言うのは失礼かもしれませんが、これはなかなか...!」

ひいひいと声を上げながらも、彼は人形を洞穴の外へと連れ出す。

 

吹雪はとっくに止んでいて、空にはいつも通りの大きな月が、静かに雪原を照らしていた。




鬱展開が続いておりますが私は元気です。
赤い月って、ゲームに登場する数倍は恐ろしいものだと思うんですよね。というか普通に初見はめちゃくちゃ怖かったですし。
アンドロイドの感情が崩壊し、壊れていく様子を自分なりに何とか描けたのではないかと。
こんな感情、抱いたはずがないけど、彼女にだって、そんな狂った一面があったっていいじゃないかと。
じわじわと闇堕ちしていく9Sくんももちろん好きです。
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