NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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ほんとに長い間おまたせしました。忙しさに拍車がかかっておりますので、タイミングを見計らってかける時にだーっと書いていこうと思います。
8900UA、お気に入り追加60件超本当にありがとうございます。読んでくださる皆様のお陰で、モチベーションが維持できております。それでは。
人類に栄光あれ。


人形と風の民

...再起動。

斜めから差し込む直射日光が、私の視界を明瞭にする。その眩しい光線は木製の外枠をくぐり抜けて私の視覚センサーにとどき、自らの置かれた状況を理解させようとする。身体には布団がかけられており、脇を見ればそこには得物が丁寧に置いてあった。

...この世界に初めて来た時も、こんな感じだったか。

そんなことを考えながら、私は自身に掛けられた布を退かし、丁寧に折りたたむ。...再起動前の記憶が曖昧だ。ハテノ村で喧嘩別れしたことは鮮明に覚えているが、森林の塔を超えたあたりからここまでどうやって自分が辿り着いたのかが一切分からない。何か酷く悪い夢を見た気もするが、どんなものだったかは記憶領域には残っていなかった。...自分で消したのだろうか。

何を見たのかは気になるが、同時にそれを知ってしまったらもう二度と戻って来れなそうな気もした。...やめよう。今することは現状確認だ。

外気を直に感じると、この場所がかなり寒い地域であることがわかった。空気は透き通っていて、付近にいくつも聳え立つ山々にはずっしりと雪が積もっている。相変わらず色褪せて見えるが。

「おや?お目覚めでしょうか。」

柔らかい声が、私の耳に届く。振り返れば、ヒトの身体に鳥の骨格と羽を持つ「鳥人」が、食事を手に私を見つめていた。

「...リト族か。にしてはかなりガタイがいいな。」

彼らの姿を、私は馬宿で何度か目にしたことがある。初めこそ驚いたが、言葉が通じると知ってしまえば「人類」とは変わらない。言語を話し、感情を持つ。何ら違いはない。

「ええよく言われます。おかげで楽器を持ち運ぶのにも全然苦労しないのですよ。」

「楽器?」

想定していない言葉が返ってきた。歴戦の武人かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。

「はい。演奏をしながら各地で詩を探していまして...っと、申し遅れました。私はカッシーワ。吟遊詩人をしている者です。」

柔らかな物腰でそう言って、彼は私に握手を求める。差し出された手を握り返し、私も名前を伝える。

「A2だ。恥ずかしい話、どうやってここに来たのかあまり記憶がないのだが...私を介抱してくれたのはお前か?」

「ええ。吹雪を凌ぐために雪原の洞穴に入ったら偶然貴方を見つけまして...どれだけ揺さぶっても全く返事がないのでこのリト村までお連れした次第です。」

勝手に連れ込んでしまったお詫びにと彼は言い、私に持ってきた食事をすすめた。

「いや、むしろ私が礼を言わせて欲しい。そのまま放置されていたら、雪の中で石になっていたかもしれん。」

外部からの接触に気が付かなかったということは、強制的にシャットダウン状態に陥っていたのだろう。そんなに義体に負担がかかるほど、私は過度な戦闘を繰り返していたということだ。何故そんなことを...いや、そんなこと、考えなくてもわかる。

 

失って初めて、私は気がついたのだ。

 

...あれから、どれくらいの時間が過ぎただろうか。パーヤの身体はもう、しっかりと治ったのだろうか。無理はしていないだろうか。彼女は今、何をしているのだろうか。彼女は今、何を考えているのだろうか。もう、新しい相手を見つけているのだろうか───

「何やら悩み事があるみたいですね。」

カッシーワの柔らかな声。どこか抱擁感のある暖かなその声のおかげだろうか、私はいつの間にか、彼に対してそれほど警戒心を抱かなくなっていた。

「...ああ。だがもう、どうしようもない話だ。」

ぼそぼそと、呟く。こんな弱々しい声が自分の口から出てきたことに驚いた。

カッシーワはじっと私を見つめ、そして少し考えてから、私に言った。

 

「朝食にしましょう。きっと元気がでますよ。」

 

─────────

包みを開けると、見た事のある品が、そこにはあった。

「おにぎり...」

懐かしい。パーヤと共に旅をしていた頃は、よく食べていた。食事は必要ないと言って聞かない私に、アイツが無理やり食わせてきたっけ。

...いつの間にか、当たり前のように食べていたな。

 

一つ手に取って、口に含む。...美味い。ハイラル米の優しい甘さの中に、優しくもしっかりとした味わいの鮭が絶妙なバランスで共存している。

パーヤが作るものより比較的甘め。同じ見た目、同じ素材のにぎり飯のはずなのに、食べたことのない新しい美味みをしていた。

「妻が作ったものです。美味しいでしょう?」

どこか誇らしげな笑顔で、カッシーワが言う。...なるほど。パーヤもよく鮭のにぎり飯を作っていたが、作り手が違うとこんなにも味に変化が生まれるのか。

───また今度、二号さんも一緒に作って見ませんか?───

いつの日か、彼女はそう言っていた。

───...気が向いたらな。───

素っ気なく返したけれど、本当は...私もお前と一緒に、一度料理をしてみたかった。

込み上げてくる何かを呑み込みながら、私はもうひとつのおにぎりを口に含む。

「...!これは...」

「上ケモノ肉おにぎりです。私はこれが大好物でして...」

肉の入ったにぎり飯は初めて食べた。箸を使わずに一口で米と肉の両方の味を楽しめるのはなかなか便利で面白い発想だ。スパイスの効いた刺激的な味付けもまた米とマッチしていてたまらない。レシピを聞いてまた今度パーヤに...あっ。

 

彼女はもう、私の隣にはいない。

自分で、切り離したはずなのに。

 

にぎり飯一つにも思い出が溢れ出る。何をしていても、彼女への想いが私の心にしっかりと残っている。逢いたい。謝りたい。

 

また一緒に、旅をしたい。

 

「...お口に合いませんでしたか?」

「え?」

気がついたら、私の瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。

袖でぐいと拭っても、またすぐにぼろぼろと溢れ出る。

「いや、違うんだ。ははっ...なんでだろうな...アンドロイドに...涙なんて...必要ない...のになあ...」

想いが止まらない。蓋なんてできない。逢いたい。ごめん。ごめんなさい。私は、私には───

「...泣きたい時に、泣く。ハイリア人も、リト族も、そうでなくても...皆同じです。」

暖かい声が、私を包み込む。

「泣いて、いいんですよ。」

「うぁ、あ、あああ...うああああ...」

初めてこの世界に来た日のように、あの朝に戻ってきたように...雄大で美しく、そしてどこか悲しげなこの息吹の大地で...私は赤子のように声を上げて泣いた。




アニメNieRにA2さんが出たのでもう興奮がハンパないことになっております。ほんと美人。ガチ美人ですハイほんとに(語彙力消失)
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