NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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大変長らくおまたせ致しました。11000UA、お気に入り80件超、本当に感謝しております。ゼルダの伝説の方は最新作Tears of the Kingdomが発売されましたが、こちらの作品はとりあえずBotWの世界観で最後まで書き続けよう思っておりますので、そちらの方ご了承ください。それでは。
人類に栄光あれ。


人形同士の再会

「なんの真似だ、デボル、ポポル。」

目の前には、旧知の友。かつての世界で9Sを助けるために戦い、そして散っていった二人。

死んだと思っていた二人との再会は、この手枷がなければさぞかし感動的なものだったのだろう。

「そうカッカしないでくれ。君の義体には傷ひとつ付けていないさ。」

前に聞いたのと寸分違わない調子で喋るデボル。生きていたのは嬉しいが、この状況は全く喜ばしくない。

両腕に力を入れて、無理やり枷を外そうとする。しかし、それは壊れるどころかむしろ私のエネルギーを吸い上げ、より強固なものとなった。

「面白いでしょう?ハイラルには私たちの世界では到底理解できない超自然的なエネルギーが存在しているようなの。とっても便利よね。」

そう言いながら、ポポルはカギのようなものを私の前にぷらぷらと振ってみせる。

「...要求はなんだ。」

「要求?違う違う!私たちはお前を勧誘しに来たんだよ。騒ぎを起こせば、来るのはお前だろう?勇者サマはナボリス解放で忙しいんだから。」

「勧誘だと?」

「そう。私達に協力して欲しいの。そしたらその枷は直ぐに解くわ。」

「...随分と物騒な勧誘だな。断られる前提ってか?」

「万が一ってところだよ。実際メドーは壊れちゃった訳だしさ。」

にこにこと笑いながら、デボルは楽しそうに私に近づく。

 

「なあA2。私たちと一緒に『本当の人類』を造らないか?」

 

...本当の...人類?

「確かにこの世界に『人類』は存在する。でも、彼は本当に『私たちの人類』と同じかしら?」

コイツら...何を言っているんだ。

「思考ルーチン、行動パターン、感情の振れ幅。内面的性質において、彼らは私たちの創造主たる人類に匹敵、或いは同質のものを持っている。」

「けれども、彼らの『容姿』や『思想』、『生態』は私たちの人類とは違うわ。わかりやすい話、私たちにとっての人類はあんなにも耳が長くないもの。」

「それに鳥人間でも、岩人間でもない。魚類みたいにエラなんか着いていないし、男は100年待たなくても毎年誕生する。」

「「それが、『人類』。彼らのソレは、魂を除いて異質。」」

...まさか。

「だから、新しく『造る』の。彼らの魂の器となる『レプリカント』をね。」

「...!」

『ゲシュタルト計画』。はるか昔、人類が白塩化症候群によって絶滅の危機に瀕した際に用いられた最後の手段。人間を魂──ゲシュタルト──と器──レプリカント──のふたつに分け、致死率100%のこの脅威への有効な打開策が確立されるまで、「人類」という種を永久保存するといったものだ。そしてこの器たるレプリカントの管理を任されていたアンドロイドこそが──

 

「...デボル、ポポル。」

 

「なんだい?」

「誰の入れ知恵だ。」

問題はそこである。ゲシュタルト計画については人類会議の最重要機密として管理されている為、その全貌を知るものは限られている。私は塔のアーカイブや9Sからの情報で知っているが、特にデボル、ポポル型モデルは過去にその計画を頓挫させた同種の機体の責任を負い、罪の意識のみを植え付けられたまま過去の記憶を全て消去させられているはずだ。そもそも『レプリカント』なんていう言葉さえ、本来は知る由もないのである。

「あら、あなたも知っているのね。」

「誰、か。まあ人じゃないんだけど、名前を言うとするなら──」

 

「ターミナル。そう名乗っていたわ。」

 

背筋に寒気が走る。まさか。そんな、ことが。

「奴は言った。『増えすぎた種族はやがて争いを起こし、そして自ら死へと向かう』ってね。」

「奴は言った。『人類は増えすぎた。増えすぎたからこそ、滅ぶべき運命にあった。』ってな。」

「奴は言った。『ならば話は簡単だ』」

 

『少数の都合のいい人類を造り、それ以外を排除すればいい。』

 

...なるほどな。ルーダニアで闘った時、ターミナルが言っていたことが分かった。前の世界では満たされなかった「人類」への飽くなき探究心。そしてこの世界には、定義上限りなく前世に近しい「人類」が存在する。ならば、後は「ホンモノ」に造り変えてしまえばいい。いかにも統合思念体らしい、冷酷な思想。極端なまでの全体主義。「人類」を観察できるのであればそこに「個人」の有無は一切問わない。

「ねぇA2。私たちに協力してくれない?あなたにとっても悪い話じゃないはずよ。アンドロイドは人類に奉仕する為に生み出された存在。そんな私たちにとって、人類の復元は大願でしょう?」

ポポルはそう言って、私に手を差し伸べる。

「さあ手を取って。私たちなら、きっとできるわ。」

屈託のない、彼女の笑顔。

沈黙。

 

「ひとつ、聞いていいか。」

「ああ。なんでも聞いてくれ。」

 

「お前たちにとって、この世界の人々はなんだ?」

一瞬、きょとんとした表情を浮かべた二人だったが、直ぐに笑顔を取り戻す。

「何って、そりゃあ簡単な話さ。」

当たり前だと言わんばかりに、二人はけらけらと笑う。

 

 

「出来損ない。それ以外になんて表現するっていうの?」

 

 

...そうか。わかった。

「なら答えはひとつだ。私はお前たちを殺す。」

 

耳が痛くなるほどの、無音。

 

「...交渉決裂だな。」

「そのようね。」

彼女たちは、とても悲しそうな顔をする。

一呼吸置いて、彼女たちは口を開いた。

「お前には助けられたよ。罪を犯した私たちに、お前は分け隔てなく接してくれた。」

「いけないとは、分かっていたわ。あくまで私たちは罪人。幸福なんて望んじゃいけない。」

「でも、嬉しかったんだ。砂漠みたいに枯れちまったアタシたちの心にとってお前たちヨルハの存在は、朝露のように柔らかな存在だった。だから──」

「だから、こんなこと、したくなかったわ。」

二人がゆっくりと近づいてくる。

「計画のためには、優秀な手足が必要だ。」

「私たちだけじゃ、サンプルはそう沢山手に入らない。」

ポポルが私の両腕を片手で掴んでひょいと持ち上げる。

凄まじい力。コイツらこんなにも──

「だからお前には、人形になってもらう。」

デボルの柔らかな手が、身動きの取れない私の頬をさらりと撫でる。

「安心して。貴方の感情は、データとしてデボルの体内で生き続けるわ。」

拘束具が青白く光り、全身から力が抜け落ちる。

クソッ。ダメだ。何もできない...

「じゃあなA2。これからは私とずっと一緒だ。」

頬をくすぐっていた手のひらが、私の胸にとんとあてられる。

「...ぐ、ぁ...」

視界がぐにゃりとまがり、私は立つこともままならなくなった。

「...お?なんだ、防御プロトコルも持っていたのか。」

これは、かつて9Sが所持していたもの。私を追って殺そうとした数多の彼らから奪い取った、対ハッキング用の閉鎖型プロトコルである。

「...そう簡単に...食われてたまるか...」

世界が箱のようにぱたぱたと折りたたまれ、私の中に入ってきたデボルを押し潰そうとする。

「...めんどくさいな。」

そう言いながら、デボルは人差し指を顔の前に出してとんとつつく。何も無いはずの空間にぴちゃりと波紋が広がり、私の防壁は一瞬で崩れ去った。

「塔の防壁くらい頑丈にしないと、時間稼ぎにもならないね。」

電脳空間を制圧され、私の中枢、ブラックボックスが彼女の手に落ちる。

「...やめ...ろ!」

「返して欲しいかい?なら協力してくれよ。」

正方形のブラックボックスの角に人差し指に当て、彼女はそれをオモチャのボールのようにくるくると回す。

「まあそう言っても無理だろうな。」

揺らぐこと無く回転する黒い箱をぱしりと握ると、デボルは服をぐいと引っ張って胸元をさらけ出し、それを自身の胸に押し付けた。

ずぶずぶと私の心臓が、彼女の体内へと押し込まれていく。

抵抗できない。もがこうにも、私の身体は指ひとつ動かない。

「ああそうだ。メドーの繰り手の英傑も、もうアタシが食っちまったよ。魂の分際で偉く抵抗してきてまだ完全にデータ化できてないからさ、精々私のナカで仲良くしてやってくれよな!」

離れていく。私の心が、私の中から無理やり引き剥がされていく。

動け、動けよ...!決めただろ!生きて帰って...今度こそ...今度こそ彼女に──

「さようなら、A2。アタシの中で、永遠に。」

 

どぷん。

視界が真っ暗になる。

私の意識は、完全に彼女に取り込まれた。

 

.......

 

何も見えない。

 

何も感じない。

 

寒い。ただ寒い。

 

いやだ。

 

助けて。

 

一人にしないで。

 

私を...一人にしないで──

 

こんな声、届かないって、分かってる。

でも、それでも私は、叫ばずにはいられなかった。

 

沈黙。

 

ぴしり。

亀裂が走る。

ぴしり。

またひとつ。

「...だ...!おま...!」

動揺する双子の声が聞こえる。

真っ暗な世界に、亀裂が広がり、そして──

ばりん。

漆黒が割れ、私の精神は義体へと引き戻された。

 

「...ぶはっ!」

体力の限界を迎えながらも、私の意識は無理やり電脳空間から突き放される。

何がなんだか分からない。

視界がぼやけている。何も見えない。

意識が途切れる最後に聞いた声は──

 

「二号さん!」

 

懐かしい人の声だった。




というわけで、TotKメインストーリー完クリしてから、一度止めていた筆を再び動かし始めてるので偉く時間がかかってしまいました。許して。
丸々1週間毎日早朝までやりこんでしまうほど面白かったです。ストーリーの重厚さに、今作もまた胸打たれてしまいました...。
祠、地底全攻略に向けて引き続き頑張ります。
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