NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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お気に入り追加や評価をして下さる方が多くなってきていてとても嬉しいです。今後も引き続き精進して参りますので何卒。
今回から第五章に突入致します。季節感もあって前々から書きたいと思っていた海回でございますね。独自解釈等ふんだんに含まれますがどうかご容赦ください。それでは。
人類に栄光あれ。


五章/ウオトリー村
人形と海


ウオトリー村、海岸。

 

──海だー!──

「海だネー!」

穏やかな音と共に打ちよせる、美しい波。太陽の光を眩しく跳ね返す純白の砂浜。

駆け抜けるはゾーラの英傑とシーカー族の少女。

「元気ですねぇ...」

「...ああ、私はもう今すぐにでも帰りたいくらいだよ。」

〈それについては珍しくキミと意見が合いそうだ。〉

その姿を遠巻きから眺める、同じくシーカー族の娘と長身のアンドロイド。面倒くさそうに腕組みをしているのはリトの英傑である。

「私のコアの構造が訳あって植物細胞に酷似しているのは知っていたが...まさかこっちの世界では海洋植物に該当するとはな...──」

暑さに文句を言いたくなって、ため息混じりに私はぼやく。そう。今回こうしてウオトリー村を訪れているのは、単に海水浴をしにきた訳ではない。先の戦いで損壊した私の義体の修理が目的である。なんでも義体だけではなくブラックボックスにもダメージが入っていたらしく、解明途中ではあるが、とりあえず先に素材を集めに来たのだ。

...何でヨルハのブラックボックスが植物細胞なんかに似ているのかってのは...まあ人道的配慮って奴だ。最終的な全滅を持って全ての計画が完了したことになる「ヨルハ計画」にとって、抹消されるべきヨルハ部隊は「バケモノ」である方が都合がいい。だから敵である機械生命体のコアを流用した。ただ、それだけの事だ。

 

...これの何処が人道的なんだろうか。「塔」は私に全てを見せたが、私には創造主たる人類の感情がより分からなくなるだけだった。

 

...辛気臭い話はやめにしよう。

とりあえず、現状の私は大まかな処置だけが済まされており、胸元に空いた大穴は人工皮膚で表面は埋めてある。戦闘行為等の激しい運用は勿論出来ないが、人間的生活を送る上では特に支障はない。

「──ええ、それもかなり希少なものでして、養殖にも未だ成功していないんだとか...」

私のぼやきにパーヤが反応する。

〈らしいけどねぇ...ただあの遊び様だと、それも怪しく聞こえてくるね。〉

「...同感だ。そもそも素材集めだけなら私が一人で行くのに──」

「──二人で、でしょう?」

...間違えた。

「...すまん。まだ、慣れてなくて。」

「あ、謝らないでください。自己犠牲の思考回路が焼き付いてしまっているのは私だって同じです。それに──」

「それに?」

私の疑問符に少しもじもじとしながら、彼女はこう続けた。

「──それに、実は私、海、初めてなのです。だからその...恥ずかしながら...私、ちょっとばかり興奮してしまいまして。だって二号さんと一緒に海に行けるだなんて思ってもいなかったから...」

照れながらも隠さずに真っ直ぐ気持ちを伝えてくれる。...これはかわいい。あまり見ない表情だからだろうか、それとも海が作り上げる爽やかな雰囲気のせいだろうか...とにかく私は、彼女に対する愛情で思考回路を埋め尽くされそうになった。

少しばかりからかってみたくなって、顔を隠す彼女の耳元で吐息混じりに囁いてみた。

 

「次は二人きりで、な。」

 

...パーヤが無事撃沈したためリーバルに断りを入れて、私は一足先に宿に入ることにした。

 

 

「は?ツインじゃなくてダブルベッドで予約されてるだって?」

勿論、心優しいプルア上司の粋な計らいである。

──────

〈...まったく、何が熱中症の手当だよ。ただのお持ち帰りの口実じゃないか。昼間っからベタベタしやがって...〉

ぶつぶつと文句を言いながら、リーバルは純白の砂浜を歩く。

元々来る予定じゃなかったがために、彼のイライラはいつにも増して酷いものだった。そもそも氷点下の雪山でも生活できるよう羽毛の深いリト族は熱い場所を好まないし、何より泳がない。空こそ飛ぶものの、水の中はゾーラの領分だろう。羽が濡れて重くなるったらありゃしない。だが、それも生前までの話。魂だけのこの姿なら外的要因を一切気にしなくて良いし、何よりプルアから「男手がいないとアタシたちカワイイからナンパされちゃうでショ?」と意味不明なことを言われ、まあ行かないで責任とらされるのも癪だからと仕方なく来ているのである。

〈ナンパなんか寄ってきても病院送りにするくらいには強いくせによく言うよホント...〉

瘴気でも漏れ出しているんじゃないかと思えるくらい深いため息を吐いていると、ちょうど近くでプルアが息継ぎに顔を上げた。

「あったー!コレコレ!」

──え!どれ?ホントだ!プルアさんすごい!──

ざばんと音を立てて、ミファーがプルアのすぐそばに顔を見せる。

プルアの手には、青白い花のようなものが握られていた。

〈...姫しずか?〉

だが、少し違う。なんというかこう...少し紫がかっているような...

思わず漏れだした声に、プルアが反応する。

「お?リーバル様もコッチに来たんだネ。さしずめあの二人のイチャイチャっぷりに嫌気が差したってとこかナ?」

ざぶざぶと飛沫を上げて、プルアがその小さな身体をフルに動かしてリーバルの元へ走る。

「ふぅ...この身体だとホント身動きが取りにくいったらありゃしないワ...」

──でもプルアさん凄いんだよ、あのね、最初は浮き輪つけてるんだなって思ってたらそれががしゃーんってなってごーって...──

柄にもなく興奮して喋るミファーを見て、彼はやれやれと肩をすくめる。

〈わかった、わかったよミファー、そいつは凄いねホント。で、その植物は一体何なんだい?姫しずかは海中に生える植物じゃない。〉

「よく知ってるネ。確かに姫しずかは海には生息していない。けど、何らかの理由で海中に落っこちちゃうことがあるの。いや、吸い込まれるって言った方が正しいかしらネ。」

指をくるくると回しながら、プルアは得意げに説明する。

──吸い込まれるって、岩オクタ見たいに?──

ミファーが首を傾げながら聞く。

「そう!察しがいいねミファー様!モノを吸い込んで吐き出すのは火山に生息する岩オクタが有名だケド、海にいる水オクタも別にモノを吸い込まないわけじゃないのよネ。食性上間違って他のモノを吸い込んでしまうことがあるのヨ。」

〈それがこの海産姫しずかの正体ってわけね...〉

「ソユコト。元々植生も疎らで人工栽培にも成功していない姫しずかが偶然水オクタに吸い込まれて形態変化した形だから、レア度もとっても高いワケ。幸か不幸か最近のウオトリー村には魔物の発生量も多いから水オクタもいっぱいいるんだケド...それでも最低ノルマ分の二桁は欲しいから...」

〈気が遠くなるような作業だ...まぁボクには関係ない話だけどね。〉

こんな面倒なこと、誰がやるもんかとリーバルは鼻で笑う。

──え?リーバルは手伝ってくれないの?──

〈手伝う?何でこの僕がそんなこと──っ...〉

ミファーのつぶらな瞳がリーバルの心を揺さぶる。

「あ、そっかそっかリーバル様は泳げないもんネ。それじゃ仕方ないよミファーサマ。リーバル様にはこの仕事は荷が重すぎるのヨ。」

〈誰が荷が重いって?〉

プルアの煽りも加わってとうとうリーバルの沸点が限界に達する。

〈この僕が?たかが水オクタ如きに遅れをとるっていうのかい?〉

辺りに強烈な風が吹き荒れ、リーバルは空高く舞い上がる。

彼がその翡翠色の瞳を閉じると、その手に青白い剛弓が現れる。

両の足でがしりと胴を掴み、流れるように洗練された動作で指をかけると、ぎりぎりと音を立てて強烈な力で弦を引く。

ばしん。

轟音と共に放たれた三本の青白い矢は、ウオトリーの青い海に吸い込まれるように消えていった。

着弾。

ピンという狙撃音と共に、リーバルが射止めた三箇所には水オクタの素材がぷかぷかと浮いていた。その中の一つには海姫しずかがまざっている。

〈この程度の作業、この僕リーバルにかかれば三日も要らない安い仕事だね。〉

──すごーい!私もリーバルに負けていられないね!──

「ヨシ!それじゃあ皆で協力しテ素材集め頑張ろー!!」

二人の英傑のやる気を手にしたと言う点において、すっかりプルアの思惑通りに事が運んでいることは考えないことにする。




リーバルくんは挑発こそするけど自分が煽られると本当に耐性なさそう。ちなみにハテノ古代研究所の方はシモンさんがお留守番しております。彼に女性陣の水着は見せられぬ故。
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