NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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お気に入り追加120超、本当にありがとうございます。私のモチベーションが維持されているのも皆様が読んでくださるおかげです。本当に感謝しております。ウオトリー編も、段々と盛り上がって行く頃合ですのでお楽しみに。それでは。


人形と嵐の前の静けさ

「...いいなぁ...私も少しくらい観光したいのに...」

──あはは...まぁ今回は私たちが全面的に悪いから...──

「ゴホッ...ゴホッ、ホントよ全く...こうなりたくないから止めたのに...」

額に氷嚢を乗せたプルアが、力ない声でねちねちと悪態をついてくる。

見ての通りの風邪っぴき状態の彼女だが、理由は勿論、先日のビーチバレー。

その白熱のビーチバレーだが、結果から言ってしまうとA2リーバルペアの勝利となった。

勝因は、リーバルの懸命な努力もあるがA2が常に冷静を保っていたことが大きいだろう。

豪雨によって活力を得たミファーの猛攻は凄まじいものだった。水の中、つまり雨の中を自在に移動するミファーにとって、もはやカバーできないエリアなど存在しない。そんな完全無欠の存在のように見える彼女であったが、あくまでそれは1対1での話である。そこに落とし穴があったのだ。二人組での連携が求められるからこその、盲点。

 

──えい!──

弾丸のような一撃が、土砂降りの雨を切り裂いて飛んでくる。

〈チィ!〉

リト族の動体視力と反射神経で何とか追いついたリーバルがギリギリ拾い上げ、A2の元へ。

〈...任せたよ!〉

「ああ。分かっている。」

彼女が狙うのは力を使い果たして疲れているパーヤ...ではなく、その少し手前。

的確に狙い済まされた一撃は、ミファーとパーヤの両方が触ることの出来る中途半端な位置へと飛んでいく。

「いきます!」──私とるよ!──

──「あっ」──

そして思惑通り、繰り返される高速の撃ち合いの中で、二人はこれを互いに譲り合ってしまったのである。

この一点が勝敗を分けたと言っても過言ではないだろう。

20-16

マッチポイントを握られたミファーのレーザーのようなサーブが二人に襲いかかる。しかしその球威に順応してきたリーバルが綺麗に拾い上げ、既に打ち込みの姿勢で空を舞うA2に渡る。連続得点を許していたのは、球速とクセを見抜くためでもあったのだ。完璧なレシーブに本能で危機を察知したミファーとパーヤがA2視線を読んで先に移動を開始するが、彼女はニヤリと笑い、ぶんと思いきり空振りをする。

痛恨のミスにも思える渾身の空振りだったが、彼女はその勢いを使ってぐるんと宙で一回転。重力と遠心力がどっしりとのしかかったヒールで、強烈なかかと落とし一閃。

完全にコースを逸らされた技ありの一撃が、ミファーパーヤペアのコートに突き刺さった。

21-16

無駄にハイテクなネットに「GAME SET」の文字が無機質と表示され、試合終了の合図が告げられた。

──────

というわけで、一時的とはいえ強力な積乱雲も真下でゲームが行われていたものだから案の定プルアは風邪をひき、敗者の罰ゲーム?としてパーヤとミファーは彼女の看病をしているのであった。

「そういえば二号さんたちは?」

「...A2なら少し歩いたところの店に行ったわヨ。まったく...機械なのにえらくグルメになっちゃって...」

──リーバルも近場の散策をしているみたい。やっぱり百年も経つと違うものやら知らないものやら沢山あるからね。興味が尽きないのもわかるな...──

「いいですねぇ...あ、そうだ。プルア様、わたくしも買い出しをしなければならないのでちょっとの間だけお暇しま──」

「──それならA2に頼んであるワ。そんなことよりお水チョーダイ。喉が痛いったらありゃしない...」

「...ッ」

「あっ、今舌打ちした?!舌打ちしたよネ?メチャクチャ小さい音だったけどアタシ聞こえたからネ?!全くほんと誰のせいだと思って──」

「わー!わー!してないですしてないです!ごめんなさいってば!本当に謝るので暴れないでくださーい!」

──あはは...これなら明日には治りそうだね...──

快晴のビーチを目の前にして、自分がいけないと分かっていながらもつい誘惑に負けてしまうパーヤなのであった。

──────

からんからん。

客の入りを知らせる小さな鈴の音が、店の中に明るく響き渡る。らっしゃいと快活な声が店の奥から聞こえてきて、白服の大将が顔を見せた。

「あーっと...おすすめってあるか?」

「姉ちゃん見ない顔だねぇ。そうだなあ...麺自体は良く食うのかい?」

「いや、実を言うとこれが初めてだ。」

「ほぉ、そいつは嬉しいね!それならウチは醤油が売りだよ。初めての人でもクセなく食えるってのがね。」

「それはありがたい。ならそいつをひとつお願いしようかな。」

あいよと声をあげて麺を茹でる大将との会話を終わりにし、私はカウンターに座る。今日は気分が良い。バレー勝負に気持ちよく勝ったというのもあるが、久しぶりに何も無い自由な時間を手に入れたのだ。昔は飽きるくらい手に入った暇ではあるが...ハイラルに来てからというものの、慌ただしくて休暇を満喫するほどの纏まった時間は手に入らなかった。そう考えれば、少しくらい心躍るのも無理はないだろう。

店を満たす匂いも心地よいものだった。噂に聞いていた「ラーメン」を食べることが出来る喜びも相まって、全てが良いものに感じられる。そんな一時の幸せに充実感を覚え、この短い待ち時間を存分に堪能する。

 

からんからん。

再び鳴り響く入店の鈴。

らっしゃいの声が厨房から響き、その客は慣れた様子で注文をした。

 

「醤油ひとつ。麺は硬めだと嬉しいわ。」

 

どくん。

無いはずの心臓が、私の中で重苦しく音を立てる。

 

額に冷や汗が滲む。聞き覚えのある声。つかの間の幸せとはまさにこの事で、私の本能が最大音量で警笛を鳴らす。

ゆっくりと義体を後ろに向けると、私の想像する最悪の人物がそこにいた。

「...ポポル。」

 

「あら、奇遇ねA2。私もこのお店が好きなのよ。」

 

嵐がやってくる音がする。




麺、いいですよね。最近色々なラーメン屋を回っております。店によってしっかり個性があるのがたまらんのです。
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