NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
人類に栄光あれ。
「二号さん!!」
村に戻って来ると直ぐに、パーヤが血相を変えて飛んできた。
「大丈夫でしたか?!どういう訳か急に雷雲が立ち込めて来て──...って、お前...!」
額に青筋を立てて震えるパーヤの肩に手を置き、私は努めて冷静に諭す。
「パーヤ、今回だけはコイツと協力関係だ。事実私はこの通り無傷──ではないが...まあとにかく安心してくれ。」
「...そういうことよ。詳しい話は後にして。今は人命救助が優先だわ。」
「.......」
納得はいってなさそうではあったが、パーヤも現状が分からぬほど馬鹿ではない。煮えたぎる怒りを大きな深呼吸で抑えて、彼女も努めて冷静に応えた。
「.....分かりました。まだ家の中に取り残されている村人達を、ミファー様やリーバル様とともに避難所まで連れて行ってあげてください。特に子どもは気づかれていないことが多いので...落雷に気をつけながら入念に捜索をお願いします。」
「避難所はどこにあるの?」
ポポルの質問に、パーヤは手短に答える。
「プルア様が用意した簡易避難施設があります。耐久力、耐熱性にも優れていて、天変地異程度であれば一週間は持つそうです。」
なんでそんなえらいモン持ってきてて雨風凌ぐ傘は持ってなかったんだと心の中でツッコミを入れながら、私も作戦会議に参加した。
「分かった。お前とポポルで行け。」
「え?!コイツとですか?!」
「コイツ呼ばわりするな。一応かなり歳上だぞ。」
「A2、貴方は?」
気にする素振りもなく、ポポルは私に聞く。
「私はアレを相手する。」
どす黒い雲を指さし、私は二人と足の向きを変えた。
黒雲の中にきらきらと光る雷の鱗。空を舞うその姿は荘厳で威圧的で、そしてどこか神聖な雰囲気を感じる。
「アレって...?」
「それなら私が行くわ。貴方はパーヤさんと救助活動を。」
どうやらポポルも私と同じように、元凶を潰そうとしているらしい。
「バカ言うな、お前の義体だと感電するぞ。旧型とヨルハじゃワケが違うんだ。」
「な、何かいるんですか?ちょっと──」
「──貴方だってそのボロボロの義体で行くつもり?応急処置しかしてないんでしょう?」
「そんくらい今まで何とか──」
「──ちょっと待ってくださいってば!」
パーヤの怒声で、私たちの問答は強制的に断ち切られた。
「...なんだ。」
「なんだじゃないですよ!先程からあなた方の話に全くついて行けません!何か知っているのですか?あの黒雲の中に何かいるのですか?!」
何言ってんだコイツ。
「何かいるって...そりゃあ見ればわかるだろ。ほら、あの黄色い蛇みたいなやつ。」
「黄色い...蛇?」
「ああ、そういえば精龍って貴方達一般人には見えないのよね。それにA2、あれは蛇じゃなくて立派なドラゴンよ。」
「ど、ドラゴン...?」
「雷の精龍フロドラ。この地域では神として祀られていることも少なくないわ。」
その名を聞いたパーヤがぽかんと口を開けたまま動かなくなり、暫くして額からだらだらと冷や汗を流し始める。
「そ、そんな...フロドラって、御伽噺に出てくる...」
「ええ、その龍で間違いないわ。そしてその御伽噺もだいたい実話。かの偉大なる精霊は実在しているの。と言っても、その姿を見ることができる存在は限られているのだけれどね。」
ポポルの話を聞いて、パーヤは再びフリーズ状態に陥る。
「まあよく分からないが...なんにせよあの傍迷惑なドラゴンをブッ叩きゃあこの雷雨も止むってことだ。」
自信満々に最善策を提案したつもりだったが、ポポルは呆れた様子で首を振った。
「全く、これだから二号モデルは...そう簡単にも行かないわ。貴方が言う通り、私のような旧型アンドロイドにあの高電圧を耐える耐久力は無いし、それに貴方自身も今は瀕死の状態...現状一番元気なパーヤさんもフロドラの存在が認知できないのよ。」
私の危機を幾度となく救ってきた究極の作戦が、ポポルによって木端微塵にされる。
クソッ。こういう時、何もできない自分にイライラする。
「...提案、いいですか。」
「なんだ?」
パーヤがおずおずと、いや、自身の何か大きな感情を我慢しながら手を挙げている。
「現状を鑑みるに、私がフロドラを止めに行くのが一番最善だと考えます。」
「でも貴方にはあの実体が見えていないのでしょう?」
「...だからアンタと協力してやるって言ってるんですよ私は。」
人前で恥辱の限りを尽くされたかのような、苦虫を噛み潰したような顔で、パーヤは言い捨てる。
「詳しく教えてくれ。」
「...A2さんは村の人々の救助をお願いします。フロドラという強大な存在相手に、現状戦力として最も有効な私とコイt...ポポルさんをぶつけない手はありません。私には見えなくても、ポポルさんにはフロドラの存在が認知できています。だから私に指示を出して、上手く使ってみてください。」
なるほど。この作戦は自身の身の安全をほぼ全て、宿敵であるポポルに預けるようなもの。屈辱的な表情をするのも伺える。
「...分かった。アレはお前たちに任せる。」
「貴方への連絡手段は?さすがにあれだけの上空へ登ってしまえば、私の声も届かないわよ。」
「プルア様から貰った簡易トランシーバがあります。これを一つ渡すので、地上から指示をください。あ、絶対に壊さないでくださいね。」
そう言ってパーヤは小さな機材を一つ渡す。プルアの野郎、次からはこんなモノ用意してないで普通の傘を持って来やがれ。
「時間がありません。何か言っておきたいことは?」
トランシーバをセットしエレキ薬を飲み終えたパーヤが、私とポポルに目を向ける。
「...指示だけならA2にもできるはずよ。どうして私を選んだのかしら?」
ポポルの疑問に対して、パーヤはさも当然だと言うようなきょとんとした表情を浮かべる。
「当たり前じゃないですか。落雷に当たって死ぬべきなのは二号さんじゃなくて貴方でしょう?」
「まあ、よくできた策だこと。」
...本当にこの二人に任せて良かったのだろうか。
TotKはDLCが来ないというお話を聞きましてかなり落ち込んでおります。まだ希望はあると信じて...待つしかありませんね。