NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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大変お待たせしました。前から少し空いてしまいましたが私は元気です。
夏も終わり、秋になって参りましたね。と、言うわけでウオトリー村編もそろそろ終盤戦です。最後までどうぞお楽しみください。それでは。
人類に栄光あれ。


戦いの果てに、人形達は

「上!避けて!そのまま九時の方向!」

「...ッ、数が多い...!」

「もう少しよ!そこを真っ直ぐ進んで!」

ポポルの的確な指示の元、パーヤは雷電球を避けながらフロドラの身体へ近づいていた。気流を読みながら風の力を上手く操り、まるで踊りのように軽々と空を舞う。

「あれは...!」

視線の先に見えるのは、ばりばりと電流を放出している謎の一点。

ポポルにはフロドラの腹から電流が放出されているようにみえているのだが、パーヤの瞳には何も無い所に突如、電気溜りが発生したように見える。

「それよ!もう少し近づいて...そう、そこで左手を伸ばしてみて。」

「左手...?」

言われた通りに手を伸ばすと、何かひんやりと冷たいものが指先に触れる。

「これってもしかして...」

途端、先程までの嵐のような攻撃が嘘のようになりを潜めた。

「ええ。それが精龍様の御神体よ。...動きに沿って伝ってみて。」

不思議な感覚だった。見えないのに、ちゃんと触れている。冷たさの中にほんの少しの生命の温もりを感じて、確かに生物がそこにいることを改めて自覚する。

手に触れている感覚を頼りに、パーヤは何とか電気溜りの目の前までたどり着いた。

「何かありそうかしら?」

「ええと...はい。何かが浮遊──付着しています。これは...発信機でしょうか?」

「発信機?何か人工的な部品ってことかしら?」

「はい...しかもこれ、古代シーカー族の技術じゃないような...どちらかというと『貴方たち』の世界の...」

「私たちのテクノロジーが...?どう、て...フロ.....の.....に...」

突然、トランシーバがザーザーと不調を訴え、地上との連絡がつかなくなる。

「ポポルさん?聞こえますか?ポポルさん!」

遂に何も喋らなくなったカラクリに舌打ちをして、パーヤは再び目の前の装置に目を向ける。

恐らくフロドラが暴れている原因はこれだ。自分の目には宙に黒い装置がふよふよと浮いているようにしか見えないが、ばちばちと半円状の漏電痕が見える辺り、フロドラの身体にしっかりと取り付けられている様子。よく見ると鉤爪のような形の杭が何本も取り付けられており、それが精龍の身体を蝕んでいることは間違いなさそうであった。

「とにかく、外さないと...痛ッ!」

手を伸ばし、触れようとする。だが漏れている電気の火力が凄まじく、指が近づくだけでばりばりと強烈な痛みを与えてくる。だが、装置を外すにはこれしかない。

「...これくらいの痛み、フロドラ様が感じているものに比べれば...!」

歯と歯の間に布切れを挟み、思い切り食いしばる。これから自身を襲うであろう壮絶な痛みの準備の為に大きな深呼吸を一つして、パーヤは漏れ出す電気の中に両腕を突っ込んだ。

「ぐぅ...ぁああ...!」

痛い。痺れる。焦げる。だが、手だけは止めなかった。

右手で装置を鷲掴みにし、左手に持ったクナイを精龍との間に突き刺す。

「ぐぁ...もう、少し...!」

再び暴風と雷鳴が鳴り響き、フロドラが痛みにもがいていることを明確に伝えてくる。精龍からすれば、傷口に塩どころか刃物を突き立てられているのだ。痛くないはずがない。

しがみついていた「無」がぐらぐらと揺れ、パーヤを身体ごと振り落とそうとする。

「暴れないで...!もう少し...ですから!」

クナイをぐりぐりと突き立て、装置の鉤爪に引っ掛ける。そのままテコの容量で、パーヤはクナイに全体重をかけた。

ギリギリと音を立てて、装置が「無」から剥がれていく。生温かで無色透明な液体が手を伝い、ぼたぼた頬に落ちる。それがフロドラの血液であることを理解するほど、パーヤに余裕はなかった。

嵐が吹き荒れ、雷が轟く。それでも諦める訳にはいかない。この手は、この手だけは、絶対に離さない。

 

「いい加減...剥がれろ!」

 

リーバルの猛りの出力を最大にし、パーヤはクナイを思い切り引っ張る。

その勢いにとうとう敗北を認めたのか、装置はばちばちと嫌な音を立てて精龍の体から抜け落ち、そのままパーヤの手の中に収まった。

 

ぶわり。

 

空を覆っていた黒雲がぶわりと開け、数秒前まで息もできなかった程の嵐が嘘のように消える。

よかった。上手くいったのだ。

安堵と共に、猛烈な疲労感がパーヤを襲う。力の制御を身につけたとはいえ、長時間の浮遊には膨大なエネルギーを必要とする。

両腕の感覚も怪しい。見れば指の先まで黒焦げで、鼻を刺激する臭いが灰色の煙と共に空気へと染み出している。

だが、不思議と安心感があった。ただの慢心ではなく、何か強力な力に庇護されているようなそれである。

釣られるように、引き込まれるように、パーヤは宙を仰ぐ。視線の先では巨大で美しく、神聖な生き物がこちらを見下ろしていた。

 

「──精龍...フロドラ...」

 

気高く、恐ろしく、そして神々しい。それが持つ計り知れない「力」に、パーヤはただただ圧倒されていた。

「ごめんなさい...痛かった...ですよね...」

強大な相手を前にしているのに、やはり彼女の心は穏やかだった。自分でも驚くくらいに、暖かな言葉が口からぽろぽろとこぼれ落ちてくる。

「傷...大丈夫、ですか...?...怪我の...手当は...できません...もう、手が...動かなくて...」

フロドラは、黙って彼女を見つめていた。その瞳は恐ろしく、そして神々しかったが、その奥で何かを伝えようとしているように見えた。

 

 

──────望みは?──────

 

 

言葉にすれば、何でも叶えられる。そんな確信めいたものがあった。そしてそれを叶えられる力を持つ者が眼前にいる。自分は今このハイラルで最も強大な力に、最も近づいているのだとパーヤは本能で理解していた。

 

しかし、人の身に余る力というのは、得てして永遠に使えるものではない。

 

意識が遠のいていく。それに従って、フロドラの影も薄くなってきていた。時間がない。なけなしの力を振り絞って、パーヤは思いを声にする。

 

「──────」

 

錯覚かもしれない。でも確かに、パーヤの瞳に映ったフロドラは頷いていた。そして直ぐに、彼女の意識に限界が到来する。糸の切れたた人形のようにがくりと脱力すると、パーヤは重力に従って真っ逆さまに落下して行った。

 

──────

 

「私たちのテクノロジーが...?どうしてフロドラの身体に──パーヤ?」

...返事がない。何度も繰り返し名前を呼んだが、そもそも通信が途絶えていた。直前まで普通に会話をしていたのを考えると、意図的に通信を切断した訳でもなさそうである。...まさか。

ぞわりと背筋が凍る。フロドラ、電気、発信機──

 

『ようやく気づいたようだな、ポポル。』

 

ねっとりとした、深い声。一度聞いたら間違いようのない、恐ろしい声。

「...休暇を取ると伝えたはずよ。ターミナル。」

『そう苛立つな。休日の買い物先で知人とばったり出くわすことくらい、別段珍しい話ではない。』

「『買い物』もした事ないくせに偉く知ったような口ぶりね。それで、要件は?」

『──あの女を殺せ。』

「...それは...パーヤのことを指しているのかしら?」

『他に誰がいる?』

 

殺気。そして静寂。

 

『...奴は今、手負いの筈だ。あれだけの電圧を生身の人間が身体に通して平気な訳がない。』

「やはりアレは貴方が──!」

『──そうだが、何か問題でもあるのか?』

「...ッ!」

こちらの考えは全て見透かされているようだった。何時からかは分からないが、私の行動は今、監視されている。

「残念だけど...あの発信機はパーヤが破壊したわ。今更あの子を殺したところで、何も変わらないわよ。」

『そうでも無い。あの小娘の存在は計画の邪魔になる...殺せるうちに殺しておく方が無難だ。お前にとっても、そうだろう?』

「...別に、今じゃなくてもいつだって──」

『──なんだ、ハイリア人に情でも湧いたのか?ポポル。そんな甘い思考回路では救えるものも救えないぞ。それこそ──奴に四肢をもがれたデボルのようにな。』

 

再び、殺気。それも怒りの混じった、強い殺気。

 

「...........分かったわ。」

トランシーバの電源を切り、そのままばりばりと握り締めて破壊する。

甘えた考えでは、救えるものも救えない。それは確かに奴の言う通りであった。

別に情なんか湧いていない。ウオトリー村で面倒なことが起きたから、一時的な協力関係を結んだだけである。そもそも、情なんて湧くわけがない。

大きく深呼吸をして、ポポルは鋸状の刃を手に取る。

 

──デボルを傷つける奴は誰であろうと、許さない。

 

その怒りだけは誰に何をされようと、絶対的に変わらない。




葬送のフリーレン、アニメ始まりましたね。私が大好きな漫画だったのでアニメ化は嬉しいようなヒヤヒヤするようなでしたが、原作愛に満ち溢れていてとても安心しました。皆様も是非。
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