NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
お気に入りに追加150件超ありがとうございます。私も何とか続けていこうと思っておりますので、引き続き本作に触れていただけると幸いです。それでは。
人類に栄光あれ。
ウオトリー村での一件はこうして片付いた。壊れた家屋の修繕と怪我人の手当てはまだ完璧ではないが──とりあえず、村の状況は一段落ついたように思える。
戦いの報酬と言うべきだろうか、なんと特殊素材の「フロドラのウロコ」が手に入った。それも割と沢山。一般人には目視できない精龍様から取れるウロコは当たり前だが大変貴重な素材で、なんでも薬の効果を増幅させる力を持つという。これのおかげでパーヤの傷の手当はすんなりと進み、まだ数日しか経ってないにもかかわらずもう普通に動かせるくらいには回復している。高圧の電流で腐敗した皮膚をここまで再生できるだなんて...本当にとんでもない素材である。
そしてこのウロコ、なんと私にも使えるっぽい。
今回の旅の目的である「海姫しずか」、どうやら主成分がこのウロコと一致するらしい。これはプルアの仮説だが、海に落ちたウロコの養分が海水に染み渡り、それを水オクタが自身の体に蓄えることで条件が満たされていたのではないか、とのこと。実際ウロコ入れた水に姫しずかを生けてやると、数刻もしない内に海姫しずかの色へと変化した。これのおかげで宛のないオクタ狩りを続けなくて良さそうだ。
まあここまで来ると流石に気になる「そもそも何故こんなにも沢山の希少素材が手に入ったか」問題だが──なんでもパーヤがフロドラに話しかけられたとか何だとか。そんな前例は聞いたこともないとプルアが興奮気味に事情聴取をしていたが、彼女は願いごとをした事実だけを認め、それ以外は黙秘権の行使に至った。酷く赤面している辺り、割と恥ずかしいことなのかもしれない。
そんなこんなで、今日はウオトリー村滞在最終日。パーヤと私はリハビリも兼ねて、ウオトリー村から少し離れた目的地に散歩中である。随分と無かった二人きりの時間に、お互い少しばかり気分が高揚しているのが分かる。
「──そうだったのですね...ポポルさんには、また一つ借りができてしまいました。」
「まあ、アイツもお前がいなれば村を救えなかったって言ってたから...貸し借りは無しってことでいいんじゃないか?」
「うーん...確かにそれはそうかもしれませんが──あ、見えてきましたね。」
「へぇ、あれがヤシノ遺跡か。」
ヤシノ遺跡。ポポル消息を絶つ直前、置き土産のように私に言い残した場所。なんでも100年前の忘れ物があるだとか言っていたが...正直なんのことかさっぱり分からない。罠の可能性もあるが...何故だろう、彼女の発言が嘘であると、どうも私には考えられなかった。
遺跡には二つの台座のようなものが設置されており、その間には石版の破片、奥には祠が顔を覗かせている。
「お?こんなところに人が来るだなんて、珍しいわいさ~」
どこからか声が聞こえてきたと思うと、一人の男が石版の裏からひょっこりと顔を出した。
「お、男のひと...」
パーヤが私の服の袖を掴んでこそこそと後ろに隠れる。
「人見知りかいさ~?オレはリガニーさ。お姉さん方もコレが気になるモノ好きさ?」
「いや...まあそんなとこになるか。私はA2。この遺跡でその...なんだ。なんか気になるものは無いか探している。」
「気になるものさ~?う~ん...それなら丁度今見ていたこの石版の裏側が怪しいさ~」
「裏側?」
「そうさ~。この前リンクっていう人が来た時は表に書かれたこと通りにしたらあの祠が出てきたさ。でもこの石版、実は裏側にもなにか書かれているさ~」
「...でもそれ、欠けてるように見えるが...」
「そうなのさ。前はリンクに残りの石版を探してもらって、その絵を見せてもらって繋げたさ~。リンクの絵はホンモノみたいに上手かったさ~!」
「なるほどな。それじゃあ残りの石版を持ってくればいいわけだ。場所は分かるか?」
「ああ、それならリンクが言ってたから分かるさ...ただ、石版は腰が抜けるほど重いさ?お姉さん方が持ってこれるとは思わないさ~」
「まあ任せてくれ。これでも力には自信があるんでな。」
──────
「...あんまり無理しないでくださいね?」
「分かってる。たかが石だろう?そんなに重たいものでもない。」
そう言いながら、A2は1枚目の破片をひょいと持ち上げる。言葉通り本当に重そうな素振りは見せないあたり、人智を超えた存在なのだとパーヤは改めて認識させられる。
「本当だ...確かに裏にも何か書いてありますね。そういえば...二号さんは古代文字とか読めたりするんですか?」
「いや、さっぱり。2Bから押し付けられたおしゃべり箱が全部読んでくれた。口うるさくてたまったもんじゃなかったが...便利ではあったな。」
「また2Bさん...よくお話に出てきますけど、その方は、二号さんとどういう関係だったのですか?人物紹介程度にはお聞きしましたが...」
心做しか、パーヤの頬が膨らんでいるように見える。
「ははっ、なんだヤキモチか?」
「そ、そんなんじゃないです!ただ...ただちょっと、気になっただけで。」
もじもじと、少しばかり不機嫌そうな彼女の顔を見て、A2は少し真面目な雰囲気で答える。
「──私が殺した。...ただ、それだけだ。」
意外と素直に口から零れ出た。心の傷は、時間が経てば消えていくものである。
「...そうですか。」
少し、静寂。
「...やっぱり私も持ちます。」
「...お前には重すぎると思うけどな。」
結局パーヤが持とうとしてもびくとも動かなく、三枚ともA2が担いで持ってきたのは言うまでもない。
──────
「ほ、ほんとに全部持ってきてくれたさ~...A2さん、あんた何者さ?」
「力に自信があるだけだよ。そんなことより、コイツにはなんて書いてあるんだ?」
「ちょっと待ってくれさ...フムフム、『空を駆ける人形の戦姫、雷鳴と共にこの地に剣を落とす。戦姫が手をかざす時、扉開かれ、剣を主の元へ返さん。』って書かれているさ。にしてもこの文字の方が読みやすいさね。割と近い時代に書かれているかもしれないさ~」
「...それこそ、100年前、とか?」
「そうさね!大体その辺りの文字だと思うさ~」
やはり100年前。厄災復活と何か関係があるのだろうか。
「人形の戦姫...二号さんのことでしょうか?」
「いや、有り得ない。私がハイラルに来たのは数年前だぞ?勇者サマの顔だって見たこともない。」
「でも物は試しですよ。確か手をかざせって書いてありませんでしたか?」
「...何かあるとは思えんがな。まあかざすというなら...祠か?」
そう言って、A2は半信半疑で祠の台座の上に手を置く。
静寂。
「ほらやっぱり。私のことじゃな──」
─アクセスを認証。おはようございます。ヨルハ機体A2。─
「...ポッド?」
聞き覚えのある声と共に、祠の後ろの崖が轟音と共に崩れ去る。中には鉄でできた扉が設置されており、上部に付いたランプの色が赤から青に変わる。
「な、何が起こってるさ~?!」
「こ、これは一体...」
「...パーヤ、行くぞ。」
気をつけるわいさと心配するリガニーの声を背中で聞きながら、私とパーヤは警戒しながら足を踏み入れた。
──────
「暗いですね...」
「ああ。滑るから気をつけろよ。」
扉はそれなりに広い洞窟に繋がっており、相当入り組んでいる様子だったが、定期的に置かれている人工光源──これもハイラルの技術ではない──を頼りに、なんとか最下層まで辿り着くことができた。
洞窟の湿気なのか海水の影響なのか、足場はかなり不安定である。
カツンと、私のヒールが何かを踏み抜いた音がした。瞬間、なにかの起動音と共に奥からばちんばちんと音を立てて蛍光灯が付く。人工的な光に示された先には、これまた見覚えのある大剣が突き刺さっていた。
「四○式斬機刀...」
そしてその隣に、見覚えのある四角い物体が転がっている。
「ポッド...042。」
拾い上げで軽く叩いてみたが、返事をする様子は無い。随分と埃まみれになっており、機能停止してから相当な年月が経っていることが伺える。
「これが...二号さんの言っていた『おしゃべり箱』さんですか?」
パーヤが興味深そうにポッドを見つめる。ここまでの道中も見たことの無い技術の連続で、好奇心を隠せずにいるのだろう。
「...ああ。だがもう──停止している。」
「そんな...再起動はできないのですか?」
「...分からない。ポッドに使用されている技術はアンドロイドともヨルハとも異なる。私を修理するのとは勝手が違うんだ。」
「そう、ですか...」
友との再会と別れ。同時に押し寄せる感情の変化に、私の処理能力ではついていけなかった。だから、何も喋れなかった。
ただ静寂。
ふと思い立ち、私は隣に刺さった大剣を抜く。
手に馴染む、懐かしい感覚。
──武器の従属化が完了しました。...未確認のデータがあります。──
「データ?」
背中の青白いリングに仕舞おうとした時、普段と違うアナウンスが流れる。
確認してみると、四○式斬機刀には確かに不明な記憶領域が存在していた。
「なんだこれ...ロックされているぞ。5/13?訳が分からん。」
「何かの数でしょうか...二号さんが個人的に収集している何かとか...」
「いや、どんぐりを集めているスキャナーモデルは知っているが...私にコレクターの趣味はない。まあその内わかるだろう。...行くぞ。」
「え?もう、いいのですか?」
「ああ。もう他には何もなさそうだしな。それにもしかしたら...プルアならポッドの修理が可能かもしれない。たとえ不可能であったとしても、少しでも可能性があるのなら、それに縋りたいんだ。」
懐かしむように、思い出を噛み締めるように...A2はもう動かない、かつての相棒を抱き上げる。
「二号さんは...ポッドさんととても仲が良かったのですね。」
パーヤの言葉にA2は虚をつかれたような顔をしたが、それも一瞬。直ぐに、慈愛に満ちた優しい笑顔に様変わりする。
「...ほどほどだよ。」
ああ、この笑顔に...この優しさに私は恋をしたのだと、パーヤは改めて胸の奥に高鳴りを感じるのであった。
ウオトリー編はこれにて終了となります。夏の終わりまで(?)に何とか終わらせることができたのて良かったです。次からはゲルド編の予定です。お楽しみに。