NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
今後年末になり忙しくなるので更新遅くなるかもですが、引き続きお手に取っていただけると幸いです。それでは。
人類に栄光あれ。
人形と人間の新たな旅路
「族長!ナボリスへの電力供給が途絶しました!」
「何?!一体誰が...?とにかく、これは好機じゃ。直ぐにリンクを呼べ!」
「は!」
──────
夢を見た。それも二つ。今までになかったことだ。ひとつは姫が青年にカエルを食べさせようとする夢──何を言っているのか分からないと思うかもしれないが...本当にそういう夢だったんだ──...お付の騎士も大変だな。んでもうひとつは──嫉妬の夢だ。どうやら姫は自信に宿る女神の力とやらに目覚められず、退魔の剣の持ち主となった青年に少なくない劣等感を覚えているらしい。今まではそのコンプレックスから青年を毛嫌いしていたが──命を救われた一件以降、棘を失ったその想いは気まずさへと変化しているように見える。
「準備はいいか?」
明朝。ハテノ古代研究所。ヒールをしっかりと履き直した私は、上空を浮遊する相棒に声をかける。
「はい。腕の怪我も治りましたので...心身ともにバッチリです。」
頼もしい返事と共に、パーヤがひらひらと空から舞い降りてくる。「リーバルの猛り」もすっかり板につき、クナイを片手に空を舞うその姿はさながら蝶のようである。
「二号さんは?」
「ああ。問題ない。ブラックボックスも無事直ったし、メンテナンスもしたから寧ろ絶好調ってとこだな。」
その辺に転がっていたガーディアンの残骸を片手でひょいと持ち上げ、自身の義体を通常運転できることを彼女に示す。
「アンタ達、いよいよバケモノじみてきたわネ...これじゃあどっちが厄災か分かったモンじゃないワ。」
呆れた様子で皮肉を言うプルアに乾いた笑いを返しながら、私は西の方角へ顔を向ける。
「次の目的地はゲルド砂漠、か...」
「何か思い入れでも?」
砂漠。記録に映るのは、古の時代に造られた生物兵器。彼もまた、誰かを思い浮かべていた。聞こえるはずのない声を聞くような──まるで先日のポポルのような。
「いや、砂地に良い思い出は無かったってだけだ。」
彼を壊したのもまた、私だ。
「それなら好都合ですね。」
「どうして?」
「今回は私もいますから。きっと良い思い出にして見せますよ。」
そう言って、彼女はぱちりと方目を瞑ってみせる。
「ハッ。そういうのは生きて帰ってきてから言うんだな。今回はミファーもリーバルもいない...油断はできないぞ。」
「あはは...間違いないですね。」
私の言葉を受けて、パーヤの大きな瞳は真剣な色になる。次の目的地が目的地だ、リーバルとミファーには念の為自身の神獣の警護をしてもらうことになっている。
「神獣ヴァ・ナボリス──四体目の神獣にして『未だ解放されていない』遺物...」
そう。今回の目的であるナボリスは今までの所謂「後始末」とは違う。ナボリス解放に関してリンクは苦戦を強いられているようで...ようやく光明が見えたからと、つい先日ゲルドの斥候に増援を頼まれた次第である。
「...奴が絡んでいることは間違いなさそうだな。」
「ええ。次こそ全力で叩き潰します。」
彼女の瞳から強い覇気を感じる。明確な意志を持った強い...強い瞳。私はその感情に触れるのが少しだけ恐ろしくて、それでも聞かなければならない気がして...ため息のような声で、ほそぼそと彼女に問いかける。
「...また前みたいになったら、どうする?」
一瞬の静寂。
「また前みたいに...私の義体が乗っ取られるようなことがあったらお前は──」
「──そんなの。決まっています。」
返答は思いの外早かった。
彼女はにっこり笑って私に視線を合わせると、私の腰にするりと腕を回した。
「最後の最後まで、貴方を助ける方法を探します。」
「!」
「そして貴方を助けて──ターミナルをぶっ壊します。」
数年も共に過ごしていればこれくらいは分かる。耳元で紡がれているその言葉は、紛れもない本心だ。
「...ははっ。随分と欲張りな考えだな。」
「人間の一生は短いんです。これぐらいがめつく生きていかないと。」
そう言って彼女は、寂しげな顔で笑う。
なんでだよ。なんでお前がそんな顔を──
「──はいはい人前でイチャイチャしないの!ゲルド砂漠まで長いんだから、ホラさっさと行きなさいヨ!」
「あはは、怒られちゃいました。行きましょうか。二号さん。」
プルアからのお叱りで、私の考え事は回路の奥へと霧散する。
「...そうだな。ああそれとプルア。」
「?」
呼ばれる理由が分からなかったのか、プルアはきょとんとした顔で私を見る。
「ポッドのこと、研究熱心なのはいいが──少しは自分の身体に気を使え。毎晩徹夜されちゃあ気になって仕方がない。」
「あら、バレちゃってたのネ...分かったワ、気をつける。でもキミの大切な友達なのでしょう?」
クマの滲んだ瞳の奥には、私を気遣う感情が見て取れる。
「昔の、な。過去の遺物なんかに構って、お前を酷使する訳にもいくまい。」
これまた想定外だったのか、彼女は眼鏡越しに瞳をぱちくりさせている。
「アハハ...──随分な皮肉ネ。まあ、珍しくキミの言う通りだからそうするワ。」
一言余計なのは気になるが、これで彼女も睡眠を取ってくれるはずだ。
ポッドが護り続けていた大剣を新たに肩にかけ、私は彼女に背を向ける。
「行ってくる。」「行ってきます。」
「ケガは幾らでも治すから、絶対死ぬんじゃないわヨー!」
旅を見送る日の出はいつもよりもずっと静かに、私たちをさらさらと照らし続けていた。
いよいよ最後の神獣ですね。個人的にウルボザはかなり好きなキャラクターなのでこの章はしっかりと書いていきたい...なのに時間が足りない...頑張ります。