NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
人類に栄光あれ。
「これが...雷の精龍に付けられていた枢というわけか。」
焼け焦げた機械の部品を、ルージュはくるくると手の上で踊らせる。
「ああ。パーヤが腕を焼かれたが...何とか外すことに成功した。時期と場所を見る限り、ナボリスに電力を供給していたのはその装置で間違いないだろう。」
もう完治しましたと両手をひらひら動かしているパーヤをとは反対に、ルージュは未だに信じられないといった驚嘆の表情を浮かべていた。
「そもそも存在自体が都市伝説の域を出ないフロドラだが...まさかナボリスと本当に繋がっていたとはな。にわかには信じがたい話だが、ここまでの証拠が出揃っている以上信じざるを得まい。」
焦げた破片を器用に手の中に収めると、ルージュはゆっくりと顔を上げた。
「だが、本当に問題なのはそこでは無い。」
一瞬の静寂。
「...一体誰が、これを仕組んだのか。」
パーヤが顎に手を当てて言う。そう。肝心なのはこの一連の事件の首謀者だ。
「お前たちの言っていることが本当なら、主犯はハイラルの人間でないことは確実だろう。事実こんなモノ、わらわも見た事がないしな。」
「...シーカー族の古代技術のどれとも合致していませんでした。...この世界のものではないことは明らかです。となるとやはり...」
「ああ。奴で間違いないだろう。」
私の静かな声が、妙に部屋をこだまする。
ターミナル。デスマウンテンでの一件から、それなりの時間が経つ。...動き出していてもおかしくは無い。
ルージュにもあの腹黒幼女の話は一通りついているようで、その考えたくない事実を暗黙のうちに共有した三人の空気は、ジメジメと湿気った牢獄のそれよりもはるかに濁って見えた。
「...黒幕はわかっているのだ、今更考えをこねくり回しても仕方あるまい。今は手に入れた情報を元に行動を起こすべきじゃ。」
ルージュは幾らか不安そうに眉をひそめながらも、族長として的確な判断を下す。
「...そうですね。リンク様がナボリスに突入したのは私たちがフロドラを鎮めてから数週間後...現在もターミナルと交戦中と考えると、相当の体力を消耗している可能性は高いです。二号さん、急ぎましょう。」
「ああ。あのバケモノとカースガノンとやらを相手して戦っているとなると2対1ではあまりに分が悪い。...それにしても勇者なだけあって、リンクってのはかなり腕がたつみたいだな。ナボリスの動きを見る限り、敗北してはいないようだ。」
「ああ!リンクはすごい奴じゃ。雷鳴の兜から神獣解放まで...彼奴といると、どんな不可能でもあっという間に覆してしまえそうな気持ちになる。...ほんと、頼もしい奴じゃ。」
ルージュの顔に少女のような笑みが浮かぶ。いや、少女のような、というのはおかしい。幼くして母を亡くし、長の役目を継いでいるとはいえ...彼女は未だ幼子もいい所。彼女にとってのリンクは頼りになる憧れの存在であり、そして本人は無意識ではあるものの...さながら初恋に近い特別な感情を抱いているのだろう。
「...なら尚更、死なせる訳にはいかないな。時間が惜しい。今すぐにでも突入したいんだが、行けるか?」
「ああ。手筈は整っている。あとは雷の神獣監視所へ向かえば──」
「──おっと。そう簡単には行かせられないね。」
突如、玉座の裏から聞き覚えのある声が現れる。
「ッ!!ルージュ様!!」
ビューラにも気配を感じ取らせぬ、完璧な奇襲。
声の主は背後からルージュを抱き寄せるように腕を回すと、片手に握り締める鋭い剣先を彼女の喉元に当てた。
「よう。久しぶりだな、二人とも。」
赤色の巻き毛が特徴的な双子の姉は、人質の首に刃を当てながら気さくに話しかけてきた。
「デボル...!」
パーヤの表情が険しくなる。
「ルージュ様を...離せ!」
ビューラが大剣を握りしめ、デボルに向かう。
「おっと。近づこうだなんてバカな真似はしないでくれよ?アタシだって子どもを殺したくはないんだ。」
「...チィ!」
デボルの片手剣がルージュの皮にくい込み、表皮から鮮血がつうと漏れ出す。これ以上ビューラが間合いを詰めれば、少女の首がたちまち宙を舞うだろうことは最早明白だった。
「...パーヤ。行けるか?」
「はい。ここはお任せ下さい。二号さんはナボリスへ。」
「わかった。気をつけろよ。」
「当たり前でございます。」
パーヤとの会話を端的に済ませる。これだけの戦場を乗り越えてきた。言葉は多くは要らない。
「おいおい。こんなか弱い少女を置いて神獣へ向かうのか?全くヨルハってのは血も涙もないな。」
「何を勘違いしている?ルージュの安全は確保した。それだけだ。」
「何を言って──」
一瞬。パーヤの影が消える。
...かと思えば、次のコマの中ではルージュを抱えてビューラの隣にいた。
「...へぇ。やるじゃないか。」
「だから言ったでしょうデボル。彼女たちも強くなっているのよ。」
今度は出口の方から声がしたかと思うと、双子の片割れが道を塞ぐように佇んでいた。
「...面倒だな。」
「A2!ここはわらわとビューラで何とかする。そなたはナボリスへ!」
「そういう訳にはいかない。コイツらはアンドロイドだ。多少腕がたつ程度で何とかなる程の──」
「──私もここに残ります。二号さんは、リンク様を。」
パーヤがポポルに接近し、交戦する。デボルの方はビューラがその大剣を構え、じりじりとした睨み合いが続いていた。
「...わかった。死ぬんじゃないぞ。」
「ああ!ここで死んだら、リンクに会えなくなってしまうからな!」
私の足止めは難しいと判断したのだろうか、ポポルがデボルの隣に現れる。...地面に沈むように消え、そしてぬるりと再び地面から現れた。私も知らない能力。ヤツらもまた、力をつけているのか...それとも「思い出した」のか。
狂気と苦しみが見え隠れする双子の顔に、昔のように柔らかくな笑顔を浮かべる余裕など何処にも無さそうだった。贖罪。己の使命。そして記憶の呼声。彼女たちもまた、運命の歯車を狂わされた被害者なのかもしれない。それだけじゃない。2Bも9Sも...ヨルハや、散っていったレジスタンス達も皆───...やめだ。感傷に浸っているヒマはない。
中腰の姿勢を取り、脚部の出力を上昇させる。そのまま軽く地面を蹴飛ばせば、ゲルドの町ははるか後方であった。
今はただ、戦うだけだ。
更新頻度が大幅に低下してしまい申し訳ない...またちょいと色々忙しい時期に差し掛かってきてしまったのです。...頑張りますので何卒よろしくお願い致しますm(_ _)m