NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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ご無沙汰しております。約25000ものUA数を突破しており、自身としても驚きをかくせていません。とにかく、本当にありがとうございます。引き続き本作をご愛読いただけると幸いです。それでは。
人類に栄光あれ。


人形と雷の神獣

~英傑ウルボザ~

夜。ゲルド砂漠。聳え立つは雷の神獣ヴァ・ナボリス。

背中のコブに見立てられた建造物の外縁にはゲルド人の女と、その肩に寄りかかって眠る姫の姿があった。

その歳の差の塩梅が良いからだろうか。種族の違いさえなければ、二人の様子はさながら母娘のようである。

ゲルドの女はしばらくの間姫君の顔を慈しむように眺めていたが、背後から近づいてくる洗練された隙のない足音に、待っていたと声をかける。

「ああ。呼び立てて済まなかったね.....でも早かったじゃないか。流石、御ひい様付の騎士だ。」

ぐっすりと眠る姫君を起こさないためだろうか、騎士と呼ばれた青年が喋り出す様子は無い。

「.....今日の調査も張り切ってたからね。疲れが出たんだろうさ.....」

そう慈悲深い目を姫に向けていたゲルドの女は、不意に試すように、それでいてからかうように青年に問いかける。

「で、どうだい?この子とは仲良く出来てんのかい?」

痛いところを突かれたのか青年が身動ぎをすると、女はからからと笑ってこたえた。

「そうかい.....でも、勘弁してやりなよ。」

そう笑いながら言葉を繋ぐと、女の瞳は再び姫君へと移る。

「御ひい様はあんたの背にある剣を見たび、落ち込んじまうのさ。『自分はハイラル王家の出来損ない』.....だって。」

少しの静寂。

「それは、あんたのせいじゃないんだけどね。.....この子はさ、ずっと頑張ってきたんだよ。」

青年は黙って女の話を聞いている。

「封印の力を得る為に小さい頃から毎日毎日、祈りの修行.....冷たい泉で無理するもんだから、熱出したり倒れたり.....それでも力は得られなくて.....せめて自分に出来る事をって、遺物の研究まで始めて───」

女はそっと、まるで子守唄を歌う母親のように、姫君の頭を優しく撫で上げた。

「───本当に、いい子なんだ。」

静寂。

「だからさ、守ってやるんだよ。...あんたがね!」

決意を託すような目で、女は青年のことを見つめる。青年はやはり何も喋らなかったが、その顔には今しがた確かに女から受け取った決意が滲んでいるように見えた。

「.....冷えて来たね。そろそろ起こした方が良いな。」

そう言って女は姫君の目を覚まそうとするが、そこで何かを思いついたように遠くを見つめ、いたずらな笑みを浮かべる。

ぱちん。

ズドンと響き渡る、大きな落雷の音。

「うわぁああ?!」

突然の爆発音に叩き起されて、姫君は慌てふためいている。

「ウ、ウルボザ?!何ですか今の.....?」

そこでようやく気配に気がついたのか、姫は恐る恐ると言うように視線を背後に向ける。

「な...あ、貴方どうしてここにっ?」

青年を寝顔を見られたことを恥ずかしがる姫君とは反対に、ウルボザと呼ばれた女はげらげらと大笑いをしていた。

「あっはははは!」

「えぇ?」

張り詰めた毎日の中の、たった一時の平和な時間。

 

これは在りし日の彼の記憶───

 

──────

 

{おや、これまた懐かしい顔だねぇ。}

記憶とともに、ナボリスから声が私に届く。

「その声...あんたがウルボザか。」

{他に誰がいるってんだい?まあでもその返事を聞く限り...あんたも覚えていないみたいだね...。}

「何の話だ?」

{そんなことよりA2、今はナボリスのメイン制御装置へ向かってくれ。リンクが善戦しているが...正直あんなバケモノ相手に耐えていることだけでも褒めたいぐらいだよ。}

ウルボザの声のトーンを聞く限り、状況は芳しくないようだ。にしても今、私の名前を初めから知っていたような...

...どん。

そんな考えを無理やり中断させるように、ナボリスの中から大きな爆発音がする。雑念を振り払い意識を神獣に向けると、私は空中をもう一足蹴飛ばして中へ侵入した。

 

──────

 

ゲルドの街、王室内。

「はァッ!」

屈強なゲルドの騎士が、図体に見合わない瞬足で巻き毛のアンドロイドの間合いに入り込み、その頭上から大剣を振り下ろす。

「見え見えだね!」

その巨躯から繰り出される豪快な一撃をひらりと交わし、デボルは床に突き刺さった大剣を足でがしりと踏み固めた。

「これで剣は使えないよ。終わりだ!」

「ビューラ!危ない!」

身動きが取れなくなったビューラを、デボルのギザ刃の片手剣が襲う。

ルージュの悲痛な叫び声が室内をこだまし、その刃先がビューラの首筋を断ち切らんとするその刹那───彼女はニヤリと口角を上げると、大剣を握る手をぱっと手放した。

「な───」

そのまま後ろに身体を捻り、回し蹴りを一閃。不意をつかれたデボルは両腕で受け止めはしたものの、その威力を抑えきれず、後方へ勢いよく吹き飛ばされた。

「おお...!ビューラ!!」

どごんと嫌な音が部屋中に響き渡り、デボルは壁に突き飛ばされる。

「剣が無ければ戦えないだなんて、私がいつ言ったのだ?」

地面に突き刺さった大剣を片手で拾い上げながら、ビューラは瓦礫の煙幕に向けて話しかける。

「───いやぁ、油断してたよ。あんた人間のくせに、なかなかやるじゃないか。」

煙の中から人影が見えたかと思うと、先程の強烈な一撃など意に返さないといった様子でデボルが歩いてくる。その身体の周りには薄紅色の結界のようなものが張られており、それが魔法による防御陣であることは一目瞭然であった。

「...チッ。お仲間さんの魔法か。面倒だな。」

「いやでも流石に応えたぜ?向こうは向こうでパーヤちゃんとやり合ってんだ。事前に付けてもらった防御魔法も次が最後さ。」

首をコキコキと鳴らしながら、デボル再び構え直す。

「隊長!やはり我々も加勢を───」

「───ならん!この者の実力は訓練の比では無い。お前たちが入っては寧ろ足でまといになる!」

「で、ですが───」

「それよりお前たちはルージュ様をお守りしろ!私がコイツの相手をする以上、その仕事はお前たちにしかできないのだぞ!」

「...ッ!!わらわの心配はよい!集中しろビュー...───」

その一瞬の意識の逸れを見逃さず、デボルはビューラの懐に入り込む。

「チィッ!」

「...ゥラア!」

大剣を素早く盾代わりにし身を守るビューラだったが、デボルはその剣に強引に自身の片手剣を打ち付けると、そのまま力ずくでビューラごと吹き飛ばした。

「よそ見だなんていい度胸じゃないか、人間。貴様らにとっては瞬き一つも命取りなはずだぞ?」

自身の何倍もある巨体を小石のように弾き飛ばし、今度はデボルが煙幕の中に話しかける。

「...なんの。お前の方こそ、注意力が散漫なんじゃないか?」

煙の中で巨体がむくりと起き上がり、デボルに向かって言葉を返す。

「何を言って...あらら?」

デボルを覆っていた紅色の魔法陣が、バリバリと音を立てて割れる。

「殴っていい奴は、殴られる覚悟のある奴だけさ。」

吹き飛ばされる寸前、ビューラは大剣でその力をいなしながら、デボルの死角から強烈なストレートをお見舞していた。威力をそこに受け流した分、本人へのダメージも少ない。まさに、達人の技である。

「...やっぱ凄いよお前。アタシに認められたんだ、誇りに思いな。」

「雑魚に認められても、その称号に意味など無いだろう。かかってこい。捻り潰してやる。」

 

「いいね。楽しくなってきた!」

 

──────

 

「この間はありがとうございました。改めて礼を言わせて頂きます。」

風を蹴り、さながら舞のようにパーヤが畳み掛ける。

「...礼を言う人の態度じゃないと思うけれど?」

それを軽々といなし、赤と黒の球体をばらまいてポポルが反撃。

「.....貴女達のこと、二号さんから全て聞きました。」

魔法の攻撃を風のようにサラリとかわして、パーヤはポポルの死角からクナイを投擲する。

「そう。憐れみの感情を抱くなら、それは違うわよ。私達は、自分で選んでこの道を進んでいるの。」

防御魔法で攻撃を弾くと、ポポルは自身のステータスを向上させる舞を始める。

「では何故...何故貴女たちはあんな奴の元に着くのですか!多くの民を抹殺し、このハイラルを支配しようとする極悪人に...!」

その舞を崩すようにパーヤが肉薄し、二人の刀がぶつかり合う。

「それが一番の近道だからよ。ようやく...ようやく手に入るかもしれないの...私たちへの救済が。私たちの犯した罪の、私たちを呼ぶ声の真相が...それを得るためにはもう、後戻りなんてできない...」

ポポルが切り返し、二人の間合いは振り出しに戻る。

沈黙。

 

「...そうですか。それが、貴女の選んだ答えなんですね。」

 

「...そうよ。その為なら、どんな犠牲でも払うつもりだわ。...たとえ奴が、多くの民を傷つけようとも。」

 

ポポルの表情は暗い。

互いに動かない。しばらくの間、デボルとビューラが闘う音だけが、この空間を支配していた。

「私たちは、手を取り合えないのでしょうか。」

「そんな結末も、あったかもしれないわね。」

「それなら...ッ!...」

パーヤは一瞬何かを言いかけたが、直ぐにきっと口を結ぶ。

 

「...分かりました。」

 

ごうと音を立てて、パーヤの内側から力が溢れ出す。

「...敵である以上、容赦はしません。貴女は二号さんを傷つけた。」

それに対抗するかのように、ポポルも魔力の出力を上げた。

「それで構わないわ。それに貴方だって───」

ポポルの瞳に、狂気の色が滲む。

 

「───貴方だって、デボルを傷つけたのだから。」

 

肌を突き刺す、互いの殺気。この闘いで、どちらかの命が無くなってもおかしくは無い、明確な殺意。

 

「戦う理由なんて、それだけで十分でしょう?」

 

一度こぼれた水は、元に戻ることはない。ただただ、流れてゆくのみである。




ビューラとデボルの戦闘シーン、大剣のやり取りはFateUBWの面影があったりなかったり。...バーサーカーなのはどっちなんでしょうか。
良ければご指摘や感想等頂けると幸いです。
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