NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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大変長らくおまたせ致しました。更新速度亀ペースで申し訳ないです。
たくさんの方々にお気に入り追加していただけてとても嬉しいです。私も頑張って更新していくので今後もどうぞよろしくお願い致します。それでは。
人類に栄光あれ。


人形と息吹の勇者

~訪わぬ力~

 

力の泉。しんと冷えた夜の水にその華奢な体を晒し、祈りを捧げる姫君と、そしてそれを見守る護衛の青年。

「王家の姫が代々受け継ぎし厄災を封印する力.....」

瞳を開き顔を上げ、姫は太古から語り継がれし女神の像をもの寂しげに見つめる。

「それは祈りに依って目覚める聖なるもの.....そう聞かされて育ちました。」

重たいため息が、彼女の周りを漂う。

「けれど.....」

彼女の瞳は女神像から離れ、その無力感に溢れた手元へと向かう。

「母が言っていた身体を満たす霊力も、祖母が耳にしたという精霊の声も...」

青年は見つめることしかできない。

「何一つ.....私には感じられない.....」

祈るようにその手を握りしめ、自嘲するように彼女は淡々と語り続ける。

「父には何度も叱られました。『それはお前が学者の真似事ばかりやっているからだ』と.....」

姫君の声が揺らぐ。

「でも.....」

その華奢な腕が水面に叩きつけられ、ぱしゃりと音を立ててか弱い波紋を作る。

「幼い頃からどんなに頑張って祈っても.....!古代の神ゆかりの.....この地に縋ってすら.....」

どうにならない感情が姫君の中で入り乱れ、苦しそうにその唇からこぼれ落ちる。

「聖なる力が私を訪う事は無かった.....」

静かすぎる夜の帳が、痛いくらい耳に突き刺さる。

「.....教えて下さい。私には.....何が足りないのですか.....?」

青年はただ、見つめることしかできなかった。

 

これは在りし日の彼の記憶──

 

──────

 

「これが...剣に選ばれしハイラルの『勇者』...」

そう形容する他に、言葉が見当たらなかった。

世界に勇者なんて輝かしい人間など存在しない。そんな子供騙しが通用するような倫理観など、朽ち果てた地球から来たA2は当然持ち合わせていなかった。

だが、目の前にいるのは確かに勇者なのである。その圧倒的な強さと卓越した技術。騎士のように敵の攻撃を弾き返したかと思えば、蛮族のように大剣を叩きつける。強烈な雷撃を食らっても、ミファーの祈りと不屈の闘志で立ち上がる。死角を突かれても、ダルケルの護りが弾き返す。上空へと逃げられても、リーバルの猛りで追いかけ、その正確無比な弓さばきで異形の目を確実に捉える。何度も、何度も、何度でも。

 

だが敵もまた、強力である。雷のカースガノンの制御をターミナルが完全に掌握しており、その異形は最早この世で最も邪悪な存在と化していた。

 

それでも、リンクは絶対に倒れない。どんなに絶望的な状況に陥っても、どれだけ攻撃を受けても必ず立ち上がる。戦う。戦い続ける。

...コイツ、本当に人間なのか?

メイン制御装置のある伽藍堂のナボリス体内に侵入したA2ではあったが、もはや狂気すら感じ取れる、そのある意味で奇怪な戦闘風景に戦慄していた。

{A2!ボケっとしてるんじゃないよ!}

ウルボザの掛け声で我に返ると、吹き飛ばされてきたリンクが丁度私の元転がり込み、すっぽりと私の腕の中に収まる。

▶ ︎...誰?

初めて聞く、青年の声。その姿は間近で見てもやはり夢で見たものと寸分の狂いもなく、彼がかの姫付の騎士であることは疑いようもない。...というかコイツ、喋るんだ。

そして軽い。当たり前だ。まだ青年なのだから。それでいてあの剣技と度胸。感服という他あるまい。

▶ ︎あの

「あ、ああ。済まない。お前がリンクだな?私はA2。訳あってお前を助けに来た。」

お姫様抱っこの様相を成していた姿勢を戻し、彼をすとんと床に立たせる。

▶ ︎じゃあ、ようやく役者は揃ったわけだ

「役者?」

▶ ︎どうやらアイツは俺じゃなくて、キミのことを待っていたみたい

 

『久しぶりだな。ヨルハ機体A2。』

 

聞き馴れた、不快な声。

『随分と早かったな。貴様が来る前にそこの小僧を始末する予定ではあったが...全く、使えん双子だ。』

そう悪態をつきながら、ターミナルの声をしたカースガノンがゆっくりと降りてくる。

「そう言ってやるな。上司がこんだけ無能だと、部下の負担は大きくなるてもんさ。」

『フン。まあいい...貴様がここに辿り着いた時点で、目的は達成されている。ハイラルの勇者と、影の英傑が同時に存在する...この状況が出来上がった時点でな。』

▶ ︎影の英傑?

「どういうことだ。」

「ハハハ。ここで言ってしまっては面白くないだろう?なぜなら───」

無機質な笑い声が、ナボリスの中にこだまする。文字通り、笑えない話だ。

『──A2!聞こえる?!A2!大変ヨ!』

その時、彼の台詞を遮るように、不安定な回線の緊急通信がA2の人工鼓膜に突き刺さる。

「なっ───」

▶ ︎何?

 

「───その顔が見られなくなってしまうからなぁ。」

 

──────

 

ゲルドの街。デボルとポポルの動きが、不意に止まる。

「...始まったか。」

「ええ、そうみたいね。」

寂しそうな瞳で、二人は遠くを見つめる。

「...?好機───!」

「───伝令!伝令!ルージュ様!」

ビューラが切りかかろうとしたその時、息を切らしたゲルド兵が王室へと駆け込んできた。

「どうした?!」

 

「ガーディアンが...停止していたガーディアン達が再び、動き始めました!!」

 

──────

 

「ガーディアンが...動きだした...?!」

 

「ハハハハハ!いい顔だ、いい声だヨルハ機体A2!どうだい?私からの素敵なサプライズは!」

無機質な声の中に、抑えきれない感情の昂りを感じる。

その愉悦を噛み締めるようにターミナルは一頻り高笑いを続けると、ナボリスの壁面に大量の映像を展開した。

逃げ惑う旅人。破壊される家屋。立ち向かう各地の村の戦士達に、残酷にも浴びせられる熱線...

 

それは地獄。この世界に再びやってきた、百年前の再来であった。

 

▶ ︎手短に済ませた方が良さそうだ

リンクが背中に手を回し、青白く光る剣を手に取る。

強い意志。...本気だ。

「ああ。もとよりそのつもりさ。」

私も大剣に手をかける。視線の先は二人とも同じ。

 

「楽しませてくれよ?ハイラルの守護者達よ。」

 

カースガノンが振りかざす強烈な落雷とともに、戦いの火蓋が再び切って落とされた。




最近もまたちょいと忙しさが増してきまして...生きておりますのでご安心を。
TotKのサントラが出るというお話を聞きました。DLCはなさそうということか...それでもサントラが手に入るのは嬉しいですね。因みに私は安直ではありますがフリザゲイラ戦が大好きです。さすがに良すぎました。
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