NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
実はまだ生きておりました。また暇があれば続きを書いていきたいと思っております。それでは。
人類に栄光あれ。
──ラネール山から下山する姫と、そして付人騎士の青年。姫のその明るくない表情から、修行の成果とやらがどんな塩梅であったかを想像するのは難しくなかった。
奇妙な感覚だ。私は今、戦闘と『夢』を並行して処理している。まるでふたつの監視カメラの映像をひとつの部屋で同時に見ているような、不思議な感覚。
──落ち込む姫君を宥める英傑たち。結実しない努力。彼女には、女神の才は与えられなかったのだろうか。誰もが疑心と懸念に顔を歪める中、ふと、ゾーラの姫が何か閃いた表情をする。
──姫様...あの...上手く言えないんだけど...──
彼女が何かを言いかけた、その時だった。
私は眼前の雷撃を、少ない重心の移動でさらりと躱す。別に集中力を欠いている訳ではないのだ。むしろ驚く程にその死線ははっきりと見えているし、私の本能は死の匂いを敏感に嗅ぎ分け攻撃を回避している。
──巨大な地震。地のうねり。ハイラルに終焉を告げる高らかな雄叫び。焦燥滲むリト族長の鋭い瞳には、怨念の紫煙に呑み込まれたハイラル城が戦禍に燃える様子をありありと映されていた。
厄災復活。
こうなってしまった以上、やることは一つ。
英傑達は各自配置へと向かった。その先に、恐ろしい運命が待つことも知らずに。
誰もが今、その時できる最善を尽くそうとしていた。
...これほどまでに呆気なく、そして衝撃的なものだったとは。英傑たちの迅速な判断から当時のひりついた雰囲気が伺えるが、百年後を生きる私から見れば、その後どうなるのかを想像するのは野暮というものである。
おぞましさに戦慄しながらも、どこか見覚えのある気がするその一枚の『夢』を見終えた時、その惨劇が今の現状と大差無いものであることに、A2は内心焦りを抱えていた。
「...チィ!」
▶ ︎速い...
ヤツの目的は当然「時間稼ぎ」である。各地で暴走している汚染ガーディアンによる被害を最大限発揮させるため、A2とリンクを同じ場所に集結させたのだ。だが敵の親玉が目の前にいる以上、こちらも戦場を退却して各地の援護に向かう訳にはいかない。
焦っているのはリンクも同様であった。見知らぬ強面女の加勢を受けてはいるものの、劣勢が五分五分に戻った程度。A2と名乗る彼女の実力はかなりのものだが、それほどまでに、このバケモノはバケモノであるということだ。
『ははは。英傑たちよ。分かる。その気持ち、手に取るように分かる。だがどうすることも出来まい。この世界の最高戦力である貴様らを持ってしても、この「身体」に触れることすら叶わない。』
無機質な笑い声を響かせながら、ターミナルを宿したカースガノンが稲妻の如く移動する。そう、この高速移動こそが、二人をこれ程までに苦戦させている悩みの種なのだ。
{...なんとかしてヤツの動きを止められはしないのかい...?}
ウルボザの声に、歯がゆさが滲んでいる。彼女もまた、この光速の凶刃に倒れし者なのだ。
クソッ。カースガノン単体ならまだしも、ターミナルとの複合体を制圧するのは現状の戦力では流石に骨が折れる。何とかして奴を分離させられれば────
...分離?
そうか、その手があった。
『夢』を見る度に、どこ懐かしさを感じていた。まるで何か失ったものを、取り戻しているかのように。そんな感情でいたからだろうか。今の私の思考回路は、あまりにも鮮明だった。
「プルア!聞こえるか!」
──な、なにヨ?!急に大きな声出さないでよネ!──
乱暴に回線を再接続された彼女が、ズレたメガネを直しながら返答する。
「悪いが、私の機体に『ハッキング』能力をダウンロードしてくれ!」
──『ハッキング』...?ソレってもしかして、お友達のポッドくんの──
「いいからはやく!」
悪いが時間が無い。説明は後回しだ。
──...まったく、人遣いが荒いわネ...少し手間かかるけど、できるワ!それまで時間を稼ぎなさい!──
今度はプルアの方から乱暴に通信が切られ、私は眼前の化け物を見据える。...ありがとう、プルア。色々察しが良くて助かる。
ここまで来れば自明かもしれないが、私が目指すはそう、ナボリスのメイン制御装置である。奴は所詮、データ上の存在。制御装置を経由して、カースガノンを操っているにすぎない。ならば話は簡単。データ世界にいるターミナルを、私が直接叩けばいいのである。
「リンク!」
▶ ︎わかってる
会話を聞いていたのだろうか。リンクは二つ返事で了承し、時間を稼ぐべくカースガノンの視線を誘導しに動いた。
データ世界への転送。ルーダニアいおいて一度経験がある。だが今回の転送はそれとは違う。アレは私たちを誘き寄せるワナで、メイン制御装置へのアクセスポートが開けられた状態だった。だが今は戦闘の真っ只中。私の魂胆が見透かされている事を前提とすれば、当然厳重に固められているはずだ。
そこでコイツである。
──『ハッキング』データ、送ったわヨ!ポッド君の中に、一括りにされてたワ。まるで渡すことが前提かのように...──
『データを受信しました。ダウンロードを開始します。』
眼前に青い文字列が並び、私の中にポッドのプログラムが流れて込む。それはただのデータでしか無かったが、どこか暖かく喧しい、お節介焼きの匂いがした。
「プルア、感謝する。」
そんな私の思案も束の間、誰かに「否定:」される間もなく、カースガノンの雷が降り注ぐ。リンクは十分に時間を稼いでくれた。
あとは任せろ。
私は泥沼の戦況を打破するべく、ナボリス中央、メイン制御装置へと駆け上がった。
奴もそれに気がつかない筈がない。雷光を伴い、私の眼前に神速の一太刀を振るう。
『死ね。』
速い。
あまりに速すぎる。
避けられない。
その刹那、一筋の矢がカースガノンの不気味な眼球めがけて放たれる。
リンクだ。
...一人では勝てない。でも今の私には、仲間がいる。
踵を地面に突き刺し、急停止。勢いをそのまま屈伸運動へと変換し、跳躍。
奴が矢を弾き姿勢を崩したその一瞬のこと。カースガノンの頭上をふわりと舞い、私はそのままメイン制御装置へ手をかざした。
「ハッキング!」
──了解。──
落とし所への懸念と忙しさによってモチベを確保出来ていなかったんですが、何とか先が見えてきたので。成人用の方もかけたら書きたい。