NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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30000UA、感謝いたします。今後も本作をながい目でみまもって頂けると幸いです。
今回はナボリスではなくゲルド街サイドの話。盛り上がってまいります。それでは。
人類に栄光あれ。


人形の心

ゲルドの街は、まさに絵に書いた様な地獄そのものであった。迫り来るガーディアンとそれを迎え撃つゲルド兵。その間を縫って地下壕へ避難する売り子の女性と、その子ども。阿鼻叫喚の街へ向かって無機質に放たれる光線を、先人より受け継がれしゲルドの盾でなんとか防ぎながら、兵達は命無き厄災の尖兵をすんでのところで押しとどめていた。

 

王宮、玉座の間。

「.............」

...おかしい。

パーヤは長期化しつつある戦闘の中で、違和感を感じていた。

明らかにポポルの手数が増えている。押し寄せる球状の攻撃と、未知の魔術を伴う身体強化。しかしその翠色の瞳はどこか虚ろで、淡い桃色をした美しい唇からは陰湿な譫言をブツブツと垂れ流していた。

「...ポポル?」

「余所見厳禁!」

「...チィッ!」

流石のデボルも、妹の変化に気がついている様子。だが歴戦の猛者を相手に、気を遣う余裕などない。

「...............」

言葉はその手数と並行して、次第に増えていく。彼女は何かを見ている。いや、「思い出している」のかもしれない。戦闘の中、死と隣り合わせの極限状態が、彼女をそのようにさせているのだろうか。

「...仕掛けますか。」

どの道このまま長引いてもジリ貧だ。さっさとケリをつけて、二号さんを助けなければ。

光明は見えていた。手数は増しているものの、同時に攻撃に荒さが目立つようになってきている。夢を見ているのかなんだか知らないが、とにかく目の前の攻撃に集中できていないのだ。

勝機は、今。

私はポポルの猛攻を凌ぎながら、細い死角を縫うようにクナイを投げる。彼女はまるで全てが見えているように得物を捉えると、くるりと鮮やかに回転してそれを躱す。

ポポルが私から視線を切った一瞬、私はその隙を逃さず懐に急接近した。

しかし、予定していたように彼女は刀を持ち直し、私の顔を目掛けて横なぎに振り払う。だが私も負けていない。すんでのところで上半身を捻ると、頬を掠めたその刃が壁に深く突き刺さった。一瞬の出来事。だが、急所を突くには十分すぎる時間。

私はその姿勢のまま、左手に隠し持った短刀を構えた。回転の遠心力と風の力で腕をしならせる。

狙うは彼女の心臓。

光のように速い投擲を、ポポルへ至近距離から放つ。しかし、それも予知していると言わんばかりに、事前に展開されていた防御壁がばりばりと音を立てて刀を遠ざけた。そして。

そして、このタイミングを待っていた。

 

「ぐっ...」

 

その背後に丁度重なったデボルの背中に、受け流された短刀がぶすりと突き刺さる。

 

「デボル...?デボル...ッ!」

傷口から人工血液が滴り、白い衣服が赤く滲む。

「...大丈夫だポポル...急所はずらした。これくらい──」

深く刺さった短刀を乱暴に引き抜くと、デボルはこの戦闘で初めて床に膝をついた。

 

「──デボル...!...死んではダメ...あ、ああ、ああああ...」

「ポポル?」

気丈に振る舞うデボルを他所に、滴る血液を見たポポルは明らかに取り乱していた。それこそ彼女には、別の光景が見えているような。

 

「...いや...っ!デボル、置いていかないで...!わたしを一人にしないでッ。いやだっ!いやあああああああっ!」

 

頭を抱えてその場に蹲る。何千という時を懺悔し続けたその身体からは、計り知れない哀しみと憎しみが溢れ出していた。

「何言ってるんだポポル...?大丈夫だアタシは!だから──」

 

「...やめよう?やめよう?...やめようって?」

もはや守るべき姉の声すらも、彼女には届いていない。

 

「デボルを殺しておきながら.....ヨクモそんな...」

 

呪いのようにブツブツと呟きながら立ち上がるその姿はまるで、壊れてしまった人形のようであった。

「どういうことだよ...お前には何が『視えている』んだよ...!おい!」

 

「...みんな殺す!コロしてやる!!アアアアアアア!!」

 

「...?!」

凄まじい衝撃波が、全てを破壊する。それは姉であるはずのデボルごと私たち吹き飛ばし、部屋には一瞬の静寂が訪れた。

「ゲホッ、ゲホ...これは一体...?」

 

「ぁあア...ッ...アハハハハハハ!!」

土煙の中から見えたその姿は、もう私たちの知るポポルではなかった。瞳孔は見開かれ、身体中から瘴気が溢れ出ている。

「...厄...災?」

ビューラが戦慄する。いや、その場にいる誰もが、その禍々しい姿に恐れ戦いていた。

「まずい...暴走している...!」

妹の元へ駆け寄ろうとするデボルの表情には、嘗て無いほどの焦りが伺えた。

「おい!まだ決着はついて──」

「──馬鹿野郎!一旦休戦だ!このままだと...」

言いかけて、デボルはハッとした表情をする。ポポルの暴走。硬直した戦況を打開するにはあまりに大きすぎる一手。このまま彼女を野放しにすれば、自身の任務は容易に達成できるだろう。...しかし。

 

しかし彼女の心は、それを許しはしなかった。

 

「...このままだと、この場にいる全員が死ぬぞ!!」

 

「な...?!」

製造されてからずっと、苦楽を共にしてきた愛すべき妹。並々ならぬ感情がそこにはあった。それだけではない。彼女は思い出していた。メドーで自分の行った残虐な行為を。彼女は後悔していた。自らが血塗られた道を進むことを、後悔してしまう心があった。

 

「頼む、協力してくれ!私のことはその後で殺せばいい。だが...だが今だけは...ッ!お願いだ...ポポルが...みんなが危ないんだ...!」

 

彼女は──デボルはどこまでも、心の優しいアンドロイドであった。




トラウマ再熱でございます。デボポポ戦は曲の良さを語ると止まれないレベルなのもありますが、あの報われない感じがたまらないですね。曲もいいし。あと曲もいいです。...思い出すオリンピック開会式。もう4年前なの信じられませんね。
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