NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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またもながらくお待たせいたしました。毎度毎度こんなペースですがぼちぼち更新だけは続けて行きたいと思っております。蒸発予定はありません...!恐らく!
一通りのカタが着いたみたいで、思い出しも含めてナボリス編はこれがラストです。それでは。
人類に栄光あれ。


人形とウツシエ

全てが忙しなく過ぎ去ったせいで、あの日の事はあまり深く振り返るタイミングを逃し続けていた。ただ記憶野に残る情報を今更になってかき集めてみると、得たものと失ったものを天秤にかけて後者の勘定が勝るような、そんな旅の中身にならざるを得ない。

...まずは良いことから話そう。

各地の暴走ガーディアンは一斉に機能停止した。動力源となるナボリスが制圧された以上、これ以上の殺戮は望めない。死傷者こそ出たが、百年前に比べたらその規模は擦り傷程度のものだと後から聞いた。

で、そのナボリスでの事だが、ウルボザはリンクに雷の力を託し、街の守護者となることを選んだ。ミファーのように旅に出ないかと誘ってはみたものの、そういうのは柄じゃないと軽くあしらわれてしまった。

にしてもあの技...強烈な雷を叩き込む『ウルボザの怒り』──どこか懐かしく感じるのは、気のせいだろうか。...まあそんなことは些細な話である。

...ターミナルは、再び姿を消した。次が最後だと言っていたが、言葉の真意は分からない。

それに「らしくない」ようにも感じる。あの尋常ではない殺気──奴の肩を持つ気などさらさらないが...あの場にいた者全員を殺せる余裕くらいは、確かにあったはずなのだ。

...明らかに「合理的」ではない。何故殺さなかった?「目的」とはなんだ?...分からない。私の初期装備であるポンコツ思考回路では、敵の腹の中など到底読めもしないのだ。

まあとにかく皆生還できたというだけで、十二分に良い結果と言えるのかもしれない。

 

...で、ここからが悪い話。ゲルドの街の惨劇だ。

私たちが駆けつけた頃には、全てが終わった後だった。

機能停止したポポルとそれを虚ろな瞳で抱えるデボル、肌を焼かれ重症を負ったビューラと、そして──左腕を失った、パーヤ。

正確には「まだ」失っていない。肘から下こそ完全な黒色に呑まれ、見る影もないが、それ以外の目立った外傷は見当たらない。

だが依然として容態は深刻なようで...また訳の分からん管まみれになって、現在もプルアの治療室で寝かされている。

話を聞く限り、黒色の左腕はちぎれ飛んだということだったが...デボルの超常的な力で癒着するまでには至ったらしい。ビューラも重症を負って街で治療を受けているもんだから、闘いの内容ははその容態から推察することしかできない。そもそも何故デボルが力を貸す展開になったのかは不明だが...一息つく余裕くらいはできたと見てもいいだろう。

 

.......いくら強くなったとは言え、人間であることに変わりはない。

 

人間は脆い。自分が壊れることには慣れているが、やはり大切な人の傷つく姿というものは、言うべくもなく見るに堪えないものだ。

 

また、お前の目覚めを待たされる身にもなって欲しい。

 

...それで、話にもあがったデボルのことだが...こちらもやはり、どこか様子のおかしなものだった。衛兵の拘束も拒否することなく、連行には寧ろ協力的ですらあった。

会話も通じるし、洒落を言うくらいの余裕もあったというのに...見つめている視線はどこか定まらず、そして腕の中のポポルを決して離そうとしない。結果的に両手を塞ぐことが出来ているので、無理に引き剥がすことは行われなかった。

何があったのかを聞いてみても、ただ「思い出した」とだけ。

...望みは達成されたはずなのに、こちらにも伝わる程の深い虚無が彼女の周囲には渦巻いていた。

いや、虚無と言うべきか、「違和感」と言うべきか。

だが同時に、

「まだやるべき事がある」

とも。...彼女たちの戦いも、まだ終わってはいないのだろう。

詳細を尋問する必要があるため、双子のアンドロイドは最終的にシーカー族が引き取ることとなった。

 

...かなりの長話になってしまったが、これでも自体の全容を知るにはまだまだ情報不足なくらいで──

 

「──で、二人の話に戻すケド、よろしいカシラ?」

ぼけっとしてる私の頬をむいむいと抓り、プルアが私の視線を安定させる。

「あ、ああ、すまない。何の話だったっけか。」

「はァ~...アンタが見てた『夢』の話でショ?!せっかく登場人物本人がいるんだから、確認しようって言ったのはアンタじゃナイ...」

やれやれと肩を竦め、ぶつぶつと文句をいうプルア。それでも普段の調子で叱りつけて来ないあたり、長旅明けの私たちを気遣ってくれているのだろう。

▶ ︎話を聞く限り、ウツシエの記憶と一致していると思う

ごたついた場の空気を整理するように、リンクが口を開く。

「ああ...そうだったな。それでこんな辺鄙なところに来てるんだった。」

私とリンク、そしてプルアの三人が今いるのは、ハテノ砦から数キロ向かった平原地帯。タモ沼と呼ばれる小さな沼地である。

なんでもその「ウツシエの記憶」ってのについて知ってるらしいインパのばあさんが、後生大事に屋敷の壁に掛けていた絵の場所なんだとか。

「ンで、話によればココが最後の記憶の眠る場所ってことよネ。まあなんで妹がそんなこと知ってるのか分からないケド、わざわざウソをつくような内容でも無さそうだし。」

▶ ︎他人に見られてたとは思わなかった

「勝手に覗き見して悪かったな。私もできることなら見たくなったさ。」

ゲルドの街の戦いで見た、12個目の記憶──厄災の目覚めと、逃げ惑う姫君、そしてハイリア人の青年──リンク。自身の無力さに打ちひしがれながら、ただ祖国の滅亡を眺めることしかできない哀れな小娘と、王国一の剣士となり感情を押し殺してきたが故に、姫君心を救えない不器用な青年。

...見ていて気持ちの良いものではない。

「まァとにかく、それがラストピースなんでショ?さっさと終わらせて全部思い出しなさいよ。」

▶ ︎まだ確証はないんだけど...

そう小言を言いかけたリンクの視線が、ある一点に吸い寄せられるように止まる。振り向くと、まさにその場所は、掛け軸の絵と寸分違わぬ景色そのものであった。

時が止まったように、世界に静寂が訪れる。妙に落ち着かない胸騒ぎを感じつつも、私の意識もまた吸い込まれるように彼の記憶と同期していた。

 

これは在りし日の、『最後』の記憶──────

 

~覚醒 ゼルダ~

 

降り注ぐ雨。舞い散る火の粉。国を護り散っていった命の数々と、それを嘲笑うかのように踏み躙る、夥しい数の魔物。

戦況の悪さは、もはや火を見るより明らかだった。どれだけ破壊しても、ガーディアンは次から次へと現れる。最終防衛ラインとして据えられたハテノ砦前では、もはやこの世界の地獄の全てと言っても過言では無い、凄惨な光景がありありと映し出されていた。

だがそれは、既に予見されていたことだった。今更「計画」に変更などない。私はその生き地獄になんの感情を抱くこともなく、ただその「標的」だけを冷徹に見据える。

────...?

数多の切り傷をその身に受け、既にぼろ雑巾のような姿のリンクが、姫君をがばうように前に立つ。だがその腕にはもはや力は入らず、片膝をついて荒く息を立てるばかりであった。

「もう、いいんです.....もう.....」

姫君は、自身を護らんとする彼に声を振り絞る。

「お願いです!貴方だけでも.....逃げて.....!」

その身を顧みぬ懸命な言葉であったとしても、リンクが耳を貸す様子は無い。寧ろその声が、彼の朽ちゆく命に再び火を灯す。

よろよろと起き上がり、その瞳に希望を絶やさんとする若き近衛騎士。

だが、そんな願いを嘲笑うかのように、私は彼に剣を振りかざす。

────『私』...?

「あ、ああ.....」

万策尽きた。最早、助かる術はない。

そう。彼を殺せば、私は────

鈍く光る切っ先が、彼の心の臓を向く。

────私...は...?

世界は終わる。私が終わらせる。何もない。だれも彼らを助け──

 

「──だめーーーッッ!!」

 

 

 

 

 

────エラー。記憶の再生を中断します。────

 

 

 

 

 

▶ ︎────!!

突然、リンクがマスターソードを抜き放ち、迷うことなくA2に切りかかる。

「.....ッ!」

A2はすんでのところで剣撃を避けるが、肩を押えて流血していた。

「え、エ...?」

事態を掴めないプルアはただ、2人の豹変ぶりに戸惑うばかりである。

「プルア離れ──チィッ!」

リンクの攻撃は止まらない、その目には激しい憎悪と、深い後悔のような何かが滲んでいた。

「リンク!...聞いてくれ...!」

退魔の剣と白の契約が、ぎりぎりと音を立ててせめぎ合う。

▶ ︎.......

リンクは何も言わない。感情の全てを押し殺したような鉄面皮の騎士。その瞳に滲む強い憎しみに、A2は気圧される。

「チョ、チョット2人とも落ち着いてってば...!どういうことなのよ...どういうコトなのよ!!」

プルアの制止は最早なんの効力も持たない。激しい剣撃ともみ合いの末、リンクはA2の腹部を荒々しく蹴り飛ばした。

 

▶ ︎思い...出した

「思い出したんだ、全部...」

 

鈍い音を立てて、A2が土埃に埋もれる。義体の芯に響く強烈な痛みを食いしばって耐えながら、迫り来る脅威に対して本能で起き上がる。

 

▶ ︎オマエが...姫様を

「私は...お前たちを...」

 

絶対の間合い。瞬きひとつも許されない。

 

百年の時を経て、二人は再び、この場所で殺し合う。




という訳で、なんとこのペースにも関わらず新章に突入しようとしております。なんでこうなっちゃったんですかね...
また、リンクの口調や雰囲気がどうも納得いかずだったので、登場時からの言葉やセリフ表現を修正いたしました。簡単に説明しますと句点を抜いております。彼のセリフは当初無しで行こうとも考えておりましたが、自身の語彙と表現力ではかなり難易度が高いことが予想されましたので、作中での彼の言葉の選択肢をモチーフとして書かせて頂いてます。そのため句点を抜く必要があったんですね。
長くなりましたが、話の内容が変更されることは無いのでご安心ください。
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