NieR : Breath of the Automata   作:たまごの文字書き

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どんなに優しい心の子でも、影を落とすことはあると思うのです。
そしてそれを、利用しない手はないと思うのです。
人類に栄光あれ。


人形と少女と怨念

神獣内に入ると直ぐに広い部屋が目に入った。中には巨大な心臓のようなものが青色に光っており、その近くに魂のような淡い光がぼうっと立っている。

「...あんたがミファーか。」

近づいてみると、その光はゾーラ族の少女の形を模した。夢で見た姿と同じ、小柄で美しい女の子だった。

───そうだよ。そして貴方が...A2さんだよね。───

ミファーは胸に手を当てながら、少し緊張した様子で私に訊ねた。

「そうだ。あんたの事はなんでか知らないが私の記憶にある。」

───うん。私が送ったの。貴方...不思議な神獣だったから...───

「私が...神獣?」

───ちがうの?でも、神獣と繋がりを持てるのは繰り手と他の神獣だけだよ?───

おいおいどういうことだ。私はいつの間にかハイラルの守り神になっちまったのか?

「...よく分からないな。私もこの世界に来てからまだ数日なんだ。」

───そう...なら、ここまで来るのは大変だったでしょう?魔物も多いし...───

「...誰かさんのせいで地震と豪雨もあったしな。」

皮肉たっぷりにミファーに言い放つと、彼女は俯いて座り込んだ。

───ごめんなさい...でも、聞いて欲しいの...私、100年間ずっとひとりぼっちで、それで...それでやっと解放されて...───

 

─────────

 

小さい頃の貴方は...リンクは、無邪気でわんぱくで...それでいて勇敢だった。私はそんな彼のことが好きだった。でも、リンクはハイリア人だから...いつの間にか大きくなって、私より大人になってしまった。ちょっと寂しかったけど、それでも、私にとって大切な人。私の...想い人...。

 

大人になったリンクには、もう子供の頃のような無邪気さはなかった。むしろ仮面のように表情を変えない...無口で、ぶっきらぼうな人になってしまった。でもそれはお仕事をしている時だけで...私と私用で話す時は、昔みたいにはいかないけれど...ときどき笑顔を見せてくれた。私は...リンクの笑顔が好きだった。リンクは変わってしまって...私はまだ小さいままだったけれど...それでも、この想いは本物だってわかった。

 

リンクはどんどん強くなって、そして...そしてとうとう、姫様のお付きの騎士に任命された。リンクはそれを私に嬉しそうに語ってくれた。リンクの笑顔が見れて私は嬉しかったけど...けど、何故か心が...少しだけ、きりきりと痛くなった。

 

リンクはまだまだ強くなった。雷獣山のライネルも、一人で簡単に倒してしまうくらいに。そして、とうとう私に対してもあまり笑顔を見せなくなってしまった。彼が笑う時はただ一つ。私に...姫様のお話をしてくれる時だけ。私はちょっとだけ気づいていた。リンクはとっても変わってしまって...私だけなんにも変わっていなくて...リンクの心は...私じゃなくて...

 

それでも。それでも私は...

 

リンクにゾーラの鎧を送ることを決めた数日後、厄災ガノンが復活した。私はただリンクを護りたい一心で神獣に向かった。でも...私はそこで、ガノンの放った刺客に...胸を突き刺されて死んでしまった。

 

私の魂は完全に怨念に取り込まれた。辛くて、苦しくて、ひとりぼっちで...このまま、誰も助けてくれないまま、ずっと一人でいるんだ...ってそう思ってた。

 

でも、それは違った。100年間の苦しみの後...彼が、リンクが私を助けてくれた!リンクはカースガノンと懸命に闘って、ボロボロになりながらも私を解放してくれた...嬉しかった。やっぱり私にとってリンクは...

 

100年経ったあとのリンクは、また変わっていた。顔色一つ変えない石のようなリンクではなくて、無邪気でわんぱくで、勇敢なリンクだった。リンクは記憶を無くしてそうなっちゃったみたいだけど...私は嬉しかった。だってそれは...私が...1番好きなリンクだったから...

 

でも、もう、私には身体はない。魂だけの存在。もう、リンクとは...一緒にはいられない...

 

それでも良かった。リンクがいてくれれば、彼の笑顔が見られるのならば。私はそれだけで...

 

良くなかった。

 

彼の心にはまだ、姫様がいた。

 

100年もの時を超えても、記憶を無くしても...リンクは姫様のことを想っていた。

 

私は心が黒くなっていくのを感じた。姫様の事は大好きだ。でも、でも...

 

開放された魂に、再び怨念が染み込んでいくのを感じていた。

 

もう、それが心地よかった。この怨念は、私の願いを叶えてくれる。自分の思うままに、感情に身を任せて...

 

私の...私の大好きなリンクは...私だけのモノなのに───

 

─────────

 

ミファーの魂に、怨念が染み込んでいく。赤と黒と緑が気味悪く混ざり合い、大きく、大きくなってゆく。

───私はネ、嬉しカッたんだヨ?デも...───

私は得物に手を添える。

───リンクの心に、私ハもウいなかった!───

咆哮をあげ、怨念を纏ったミファーはその姿を完成させる。

厄災の力で強引に受肉したその器は巨大化し、天井にも届きそうな勢いである。

「随分と歪んだ愛情だな。見たことあるような気もするが。」

白の約定を抜き放ち、私は身構える。

するとミファーは悪戯な笑みを浮かべ、右手を掲げる。

───貴方モ...私と同じ気持チになれバ...キットわかるワ...───

巨大なミファーの片手に青白い光が集まり、それは人の形を成してゆく。

「...!パーヤ!」

パーヤは目を閉じたまま動かない。

───フフフッ。このヒト、A2さンの大切ナヒトだよネ?だかラ───

ミファーはゆっくりとその手を、その美しい口元に寄せる。

「っ!ミファー!やめろ!」

んあ...と口を開き、艶やかな舌が顔をのぞかせる。

───ダカラ、ちょうだイ?───

パーヤの身体が、ミファーの手からするりと滑り落ちて、口の中へと消える。

「パーヤ!!!!」

 

ごくん。

 

パーヤの身体が舌の上を通り、喉を通り抜けていく音が、私の聴覚センサーに響いた。

ミファーはほぅ...と吐息を漏らし、恍惚とした表情で小さく身震いする。そして、幼い子どものように無邪気に笑った。

───アハハ!食べチャった!これデA2さんモ、一緒だね!───

静かな怒りを、私は自らの中に灯す。

「...待ってろパーヤ。今すぐこのデカブツの腹を切り裂いて出してやるからな。」

白の約定を握り直すと、私は怨念の元へと駆け出した。




神獣同士って繋がってると思うんですよね、何となく。
パーヤはミファーの体内で絶賛怨念漬けなうです。A2頑張れ。
誤字脱字、解釈不足等ありましたらコメントにてお知らせいただけると幸いです。
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