何事も無いように海上に魔女が降り立つ、吹き飛ばされた甲冑の武士が彼女に対して跪き何らかの敬意を示した。一目でわかる、魔女だ、だが海上に浮かぶ旅館を考えるとあまりにも予想と違いすぎる。空間系の魔法少女は基本的に事前の準備が無ければ自分の身長以上の海の上に立つこと等出来る筈が無い。ならばアレは?
「フェニキア、クソだ、魔女が手を組みやがった」
「分かって居るさ、ヒナ、面倒な事になったが行けるか?」
行ける。そうと考える他あるまい、背後には紫の焔に包囲されたクソ共がピヨピヨと泣き喚いて居る。今はまだ軍服の男の射撃が自分とクソ共に分けられて居るから何とか対応出来ているがもしヒナが逃げ出そうとしたならヤツは堂々と後ろのクソゴミ新人達を粉々に撃ち砕くだろう。
「何時もよりはマシさ、そうだろ?」
轟々と背中に纏った火焔が火勢を増す、いつも通りだ、クソの塊の様な仕事の中でよりマシなクソを選択していくのだ。
「あぁ、その通りだぞ」
何もかも燃やしてやろう、そう言って高く飛翔しようとしたヒナに眼前の魔女が問い掛けた。
「貴女、恋はなさっている??」
は?
ーーーーーー
ユーリは最高なのだと、改めて自身の価値と言うもの確認する。
「しょうがないですよ、ユーリは最高ですからね」
口にも出した、絶好調である。なにか眼前の魔法少女が自身のマスコットと打ち合わせをしている様だが一体そんなものが何の障害になりえると言うのか、先生に頼まれたのだ、ならばユーリはそれを果たすだけ。真なるいい女と言うものは期待を裏切ったりがしないのだ。
あぁ、だが、聞いておかねばなるまい。
「貴女、恋はなさってる??」
付き合ってられないとでもいう様な表情で眼前の魔法少女がこちらに火焔を撃ちだす、二十三発、舐めている、背後に控えた1番が一刀でその半数を、返す刀で残りを両断しかき消す。先生と一緒に選んだお気に入りの怨霊達だ、現代の魔法に迫ったその各種の技量、ただの斬撃ですら必殺や超常と呼ぶに相応しいクオリティに仕上がっている。
「そう、恋、しておられないのね」
ならばユーリが負ける道理はどこにも無い、ユーリは最高で、先生の自慢の魔女で。
「だったら負けないわ、ユーリ、恋してますから」
恋をしているのだ。あんな妙に草臥れた女に負けるはずが無い。
「フザケてんなよクソ害虫魔女がよぉ、なに妄言垂れてんだ?カス」
口の悪さはそのまま、どこまでも冷めた表情の魔法少女が生み出した波状の焔が押し寄せる、それをユーリの前に出た1番が海面を震脚で爆発させ霧散させた。
「貴女、目の下のクマが酷いわよ?あと口が匂うのだけど胃の調子大丈夫?」
「テメぇこの野郎ッ、焼き加減今の内に選んどけよぉっっ!!!!!それがテメぇの」
挑発に乗った不死鳥の魔法少女の顔面に新たに呼び出した17番からの矢が殺到する。
「先生?55番まで開放する必要本当にあったのかしら?コレ」
どうあれ、先生が魔女との交渉に及ぶ時間は確保出来そうだ。背後で別の形の戦いを続けて居るであろう先生にユーリは思いを馳せる。なんとも、つまらない時間になりそうであった。