魔法少女と騎士の関係と言うものは、詰まるところ相思相愛の関係であると、そこに終始する。
本来魔法少女のみに与えられる筈の魔法の力を愛の力でもって共有し、本来の力の一端なれど無関係のパートナーすらその力を使える様になる。何度聞いてもふざけて居るとしか思えないがそれが正式に言われている騎士の選定と言われているもので、なんとも、不思議な事であるが一度魔法少女の騎士となったものと相棒である魔法少女とは自然と生涯を添い遂げるのだと。これに関しては統計上結果が出ているらしい。
あぁ、もうダメだ、現実逃避だ。
そうして愛し合っている筈の僕と先輩が全く戦場にかかわる事すら出来ないでいる。自信、そうだ、自信があった。親友と呼べる四人と共に師匠の下で多くを学び学園にて運命の魔法少女と出会って。
「君!!集中!!来るよっ!!」
「ハイッ!百合華さん!!」
大繩跳びの様な状況が続く、何百メートルか前の旅館、その屋根の上で膝を着いた男から銃弾が撃ちだされる、顔面の中心に胴体の中心、油断した瞬間を見透かしたように大腿部への一射。射撃自体は大した威力では無い。魔法で防げばなんて事は無く凌げる。だが、少しでも足を止めれば僕達を包囲している紫の焔の向こう、何度か見た事のある神主の様な格好した男がこちらにすかさず火焔弾を撃ち込んでくる。
結果、僕たちは転げまわる様に自分達で作った足場の上を動き回る他無い、海中はどうか?いっそ魔法を解除して海の中に逃げれば、そう思って海中に目をやれば四人目の存在、海底近く辛うじて見える距離で長い髪が水流に乱れるのを任せた白装束の女がこちらを見ている。
最悪だ、目が合った。
さぁ、どうする、どうするんだ僕は。
焔の向こう側、引率の魔法少女にふわりと浮き上がった少女が抱き着くのが見えた。この戦場では見覚えがない、何処から現れた?何故だ、抱きつかれたりなどして、油断か?避けられただろう。そう思うと同時に少女が爆発しあんなにも憎らしく、自分は無敵だと全身で周囲を威圧していた人が海面に墜落していく。
そこまでの高さは無い、だが、頭から海に叩きつけられそのまま海中に沈んで行って、彼女は無事で居られるのだろうか?
ジーナスには願う事がある、努力すれば叶う様な願いとも、ささやかな願いとも決して言えない願いがある。
命には生きて居て欲しい、それがどんなに苦しくて無茶なお願いでも、きっと何時か手を貸してくれる人が現れる筈だから、きっと何時か静かで穏やかに生きられる日が来る筈だから、どれだけ身勝手だと分かって居ても命には生きて居て欲しい。
多くを切り捨て一点に集中してジーナスは駆けだした、学園で得た多くのモノとは別に、師匠から仕込まれた教えが、呪いが発動する。
『アンタ達、いい男になるよぉ?』
何故だか師匠の声が聞こえた気がして、ジーナスは苦笑を浮かべる。師匠、いい男って一体何なんですか?全然分かんないですよ。
愛する相棒をただ呼ぶ、多くの指示は出さなかった。
「百合華さんッッ!!足場をッ!!」
戦場の均衡は崩れた、故に全てがジーナスに集中している、故に全てはシンプルになる。全ての攻撃を凌ぎ、ただ墜ちた不死鳥を助ける。迷いは無い、迷える程の器は自分には無い。
紫の火焔を突き破る様に大きな氷山が海面から突き出す、それを足場に飛びながら不死鳥の魔法少女に向かってジーナスは飛び込む。紫の火焔弾を作り出した氷の盾で打ち払う、身体に降りかかった火の粉がじゅうじゅうと音を立てて肉の腐る匂いがするが無視する。銃弾が右腿に左肩、バランスを崩した後に体幹に沿う様に二発撃ちこまれるがすべての出血を氷結させて止める。
跳ぶ、ただ全力で、跳ぶ。
間に合った。
呼吸のまだある事を確認するが酷い有り様だ、全身に人間の骨の破片が突き刺さり、爆発を直接受けたであろう腹部は大きく抉れているが辛うじて彼女のマスコットが抱き着くように火焔を発生させて致命に至るのを食い止めている。不死鳥の魔法少女と言えば火焔以上にその再生能力で有名である、恐らくこの傷でも適切に処置を行えば致命傷には至るまい。そう思いジーナスは眼前の黒一色を身にまとった魔女へと向き合った。
「あぁ、どうしましょう?殺しちゃったかしら?」
参ったわ、先生、怒るかしら?そう言って彼女は何と言う事も無いように左手を上げ、それに合わせて彼女の遠く後ろに控えていた二列の弓兵たちが矢をジーナスに向かって放つ。ジーナスは不死鳥の魔法少女を氷のドームを発生させて守ると自身は矢が到達するよりも早く騎士としての姿に換装を果たす。おとぎ話の竜を模した西洋甲冑、力に溺れた悪竜が恋を知り善行を行う絵本、憧れたその似姿でただランスを眼前の魔女に構えた。
「貴方、変身速度とか諸々、変態ですの?」
ジーナスは答えなかった、ただ突撃する。全ての命は救えない、ならば選ぶのみ。
眼前の魔女は敵だ。
行けそうなんで今日はもういっちょ