私が幾つかのズルによって協力を取り付けた七星重工社長所有のプライベートジェットの中、私はひたすらに沈んだ気持ちで目の前の少女と向き合っていた。
私の復讐心が魔法少女スターゲイザーに届きうる唯一の可能性、ファンのほぼ全員からイマイチか、もっと言えば公式から出版されたその事実すらを非難されていたスピンオフ小説のラスボスに相当する少女。星重ユーリ。
「ユーリちゃん、良いかい?よく聞いて欲しい」
本来の彼女は世界の全てに拒絶され、スピンオフ小説内の主人公を道ずれに地球の地殻付近まで沈み行き星の一部となって死んでいく。私はその運命に付け込もうとしている。
「君の両親は死んでしまった、君が覚えているかは分からないが、新設された工場の視察の途中に軍閥の内乱に巻き込まれて死んでしまったんだ、これは僕の言葉だけじゃなく日本に戻れば報道記録や公的機関の書類なんかで間違いない事実だと確認出来る」
分厚く、暖かな毛布に包まれた少女のぎょろりとした瞳にどんどんと涙が溜まっていく。分かって居る、私は今自分の都合の為だけに無駄に少女の心の傷を出来るだけ大きく抉り広げ私と言う存在が彼女の心の中に居座れるよう自分勝手に邪悪な振舞いをしている。
分かって居るからなんだと言うのだろう、私はこの瞬間から致命的に人間を辞めてしまうのだ、ここが私と言う存在の致命的な境界線なのだ。
「どっ、どつう、どうして?」
彼女が削られ続ける日々の中、僅かに残った何かで私に問いかける。なんの問い掛けかも分からない私はただ、残酷に正直に全てを答えるしかない。
「本当なら君は日本にいる誰からも忘れられ君自身と言える全てが失われただの怒りの化身となるまで救われる事も終わる事も出来ない筈だった、違うな、これじゃあ答えになって居ないか」
「僕は僕の目的の為に君を助けた、ごめんね、ユーリちゃん。僕は大人の癖して残酷な事を残酷なまま伝えるよ。自分勝手な僕以外誰も君の存在を生きているとは思って居なかったし生きて居て欲しいとも願っては居なかった、探そうともしなかったし君が生きていることで得をする人間すら君が生きていればいいのにと探そうとはしなかった」
「ユーリちゃん。君の問い掛けが何か僕には良く分からないけど、どうして君や君の両親がこうまで理不尽で残酷な目に合わなければならないのかって、そう言う問い掛けならね」
「理由なんて無いのさ、空に星が輝くように、太陽が変わらず輝き続ける様に、命が身勝手に成長を続ける様に、それに理由なんて無いんだ、僕たちに降りかかった大雑把な不幸なんて括りのアクシデントは極端な言葉を選べば僕達で無くてもよかった様な無責任なものでしかないんだ」
「ユーリちゃん。君の不幸と君の両親の死に理由なんかありはしないんだ」
言葉に合わせ、泣きながら獣の様に唸り私の肩に噛みつく彼女の頭を右手で撫でながら私は今の今まで黙ってこちらを眺めていたネムリさんに目配せをする。
「今はただお休み、ユーリちゃん」
そんな私の誤魔化しでしかない言葉にネムリさんは気まずそうに目を逸らしながらユーリちゃんの頭に触れ、ユーリちゃんは気を失う様にフッと眠りにつく。
気まずい沈黙、先に話し出したのはネムリさんだった。
「先生、今の話、全部本心ですか?」
「あぁ、半分と言うと言いすぎだけど、少しぐらいは君にも語り掛けるつもりで話した」
「…最低、最低、最っ低」
「わかってるさ、分かってる、分かったうえで私が支払えるものなら全て渡すから、これからも君には力を貸して欲しい」
スンスンと、膝を抱き鼻をすする様に泣きだしたネムリさんを抱きしめる。最初は暴れていた彼女にわき腹や肋骨、殴打された内臓が悲鳴を上げるが黙って抱きしめ続ける内徐々にネムリさんは抵抗しなくなり、私は大人しくなった彼女が寝息を立てるまでただじっと抱きしめ続けていた。